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「つつじ野」執筆

 Kさんがやってきた。元日の紙面に広告を載せないかという、いわば営業のようなかたちでやってきた。年齢は50歳を過ぎているだろうか、きっと僕より年上、そして僕よりもずっと背が高くすらっとしていた。宣伝効果はともかくも、大街道に絞った広告だったこともあり、金額もそんなに大きくはなかったので、出してみますということにした。


すると1週間後くらいだろうか、「文章を書いてみませんか」と、またKさんがやってきた。「25年間記者をやっていたんです」とKさん。何だか営業っぽくない方だなぁと思ったのは、なるほどそういうことだったのか、と合点がいった。そして、とてもうれしかった。自分の書いた文章を、新聞に載せて下さるなんて。


 「つつじ野」執筆にあたり、担当者ということで、F記者がやってきた。今度は僕よりずっと若い。教え子の中にはもう30代を迎えているやつらもいるので、そんな教え子たちと比べてみても、ずっと若く感じた。彼女からは僕と同じ「文系」の香りがした。今の仕事が充実していて、ずんずん前に進んでいる感じがして、純粋に「うらやましい」と感じたし、すてきだなぁとも思った。


 人脈ということばがあまり好きではない。むしろ嫌いと言っていい。ビジネス用語なんて、ろくなもんじゃない。コンピテンシーとかイノベーションとかフィックスとか、そういう言葉を連発されると、みるみるその人への信用ゲージが下がっていく。だから、僕が出会ったお二人には「人脈」という言葉を、あてはめたくはないのだ。


 彼らに会って、僕ももっと頑張らなくっちゃ、と思った。僕が彼らに「出会ってよかった」と感じたように、ほかの誰かから「出会ってよかった」と思っていただけるように。生きた心地のする、毎日を送りたいものだ。
(鈴木 喬)

石巻かほく 2020年2月2日(日)号 つつじ野 より


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