解放される瞬間
私の毎日は、職場と家を往復することだけだった。職場では経理の仕事をしている。ミスがあったら怒られるが、褒められることはない。
その日は年末の残務が片付かず、いつもより遅くなってしまった。それでも通勤の電車は混んでいて、私は人に揉まれながらなんとか最寄りの駅で電車を降りた。
私はその場にへたり込みたいほどの疲労感を感じながらも足を引きずるようにして改札をくぐった。
私の自宅は最寄駅から歩いて10分ほどのところにある。
駅を出る時には数人いた会社通い風の人たちも散り散りになり周りには誰もいなくなった。
家の周りは静かな住宅街で、この時間になると人気もない。
駅から離れてしばらくして、私は尿意を感じた。
体が冷えていたせいかもしれない。次第に強くなる尿意に、私は歩きながら耐えた。
この辺りにはコンビニもない。家の近くに公園がある。そこの公衆トイレまでもつかどうか。
私は次第に平静をよそえなくなってきた。
お腹に力を入れようとしてもうまく入らない。おしっこが膀胱の出口におしよせて、出ようと暴れているような感じがした。
歩き方が次第に内股になり、自然と早足になる。
一刻も早くトイレに着かないと。
私はここで漏らしてしまうかもしれないという焦りと不安に駆られた。
もう少し、というところで、私は一歩も動けなくなった。
あと一歩でも足を前に出したら漏らしてしまう。
でも、なんだか全てがどうでも良くなってしまった。
私は半ばわざと体の力を抜いた。
ずっとお腹の中で暴れていたおしっこが一気に噴き出てきた。
それは私の足をタイツ伝いに濡らし、そして吸いきれなくなったおしっこがバシャバシャとコンクリートに落ちた。
足の太ももの内側から足にあたたかいものが伝っていく感覚。苦しかったものから解放される感覚。
私は惚けて快感に身を委ねた。
その瞬間、私は空っぽになって全部のしがらみから解放された気がした。
我に帰った時には、私のスカートは取り返しがつかないくらい濡れて、足をつたったおしっこはパンプスの中にまで溜まっていた。
私は泣きそうになりながら小走りで家に着いた。
幸運にも、帰り道誰にも会うことはなかった。
家について、玄関で全て脱いで裸になった。
洗面所の鏡で自分の顔や身体を見て、今まで溜まっていたもの全てが体の外に出たような、爽やかな気持ちになった。
それから、私は時々、帰りに道中わざとお漏らしをするようになった。
その瞬間だけ、私は何からも縛られず自由だった。