田端大学の入口・出口戦略の考察 『THE TEAM』 第2章 Boardingの法則を読んで。
こんにちは、清原です。
今回は、田端大学2019年4月度の課題図書
『THE TEAM 5つの法則』(麻野耕司)
第2章 Boarding(人員選定)の法則[戦える仲間を選べ!]
を読んで、簡単に趣旨をまとめた上で、世の中の他の事例や、田端大学でどう使えるかについて考えてみました。
■『THE TEAM』について
『THE TEAM』は、チームを変える仕事をしている著者の麻野さんが、自分のチーム自体をコンサルティングした結果、劇的に良くなったという経験をもとに書いた本で、チームの在り方をABCDEの5つの法則に体系的にまとめた類書のない本です。
「チームには絶対解ではなく、最適解しかない」という考えがこの本の根底に流れています。
一般的に正しいと思われていたり、目指すべきだと思われている状態は、チームのタイプによっては正しくなく、自分のチームに合った適切な状態を見つけるべきだと述べられています。
したがって、チームリーダーは、「チーム」への誤解に気付かされる本であり、チームメンバーも、チームとの付き合いかたを考えさせられる本になっています。
「チーム」という見えないものの「在り方」を、徹底的に可視化した本です。
今回は『5つの法則』の2番目の法則、Boarding(人員選定)の法則を読んで考えたことについてお話ししていきます。
目次
■自分のチームの立ち位置を確認せよ
■退職率が低い企業がいいわけでもないし、多様性のある企業がいいわけでもない
■入口戦略、出口戦略
■田端大学のBoarding戦略設計について
■自分のチームの立ち位置を確認せよ
本書では、チームのタイプは、「環境の変化度合い」×「人材の連携度合い」の4つのタイプに分けることができると述べられています。(下図はTHE TEAMより引用)
本書によると、「環境の変化度合い」とは、相手チームの出方がどれぐらい自分のチームに影響するかです。本書の例のアプリの開発チームは、競合アプリの出方や追加機能によって戦い方を変える必要があるので、環境の変化度合いが高いチームだということができます。
「人材の連携度合い」とは、チームメンバー同士でどれぐらい連携が必要かです。
例えば、オーケストラといった楽器演奏のチームは、他の人とずれて演奏してはいけないので、人材の連携度合いが高いということになります。
まずは、自分の所属しているチームがどこに位置しているか考えてみましょう。
■退職率が低い企業がいいわけでもないし、多様性のある企業がいいわけでもない
本書では、一般的に良いと認識されている「多様性のあるチーム」、「人の辞めないチーム」は、良い状態であるとは限らないということが述べられています。多様性のあるチームが常に正しいとは限らないし、離職率の低いチームが常に良いわけではなく、チームの四分類のどこに位置するかによって変わります。
「環境の変化度合い」が大きいほど、人が入れ替わるチームの方がいいでしょう。環境の変化が大きければ、個々の人材の頑張りでは対応しきれないからです。
「人材の連携度合い」が大きいほど、多様性があるチームがいいでしょう。例えば、メンバーの連携が要求されるサッカーでは、ポジションに応じて、別々の能力が求められます。
したがって、自分のチームの位置から、「多様度合い×流動度合い」の最適な状態を考える必要があります。
ちなみに、離職率の低さへのアンチテーゼとして、離職率100%を目指す企業でさえ存在します。
■入口戦略、出口戦略
いざ自分のチームの「多様度合い×流動度合い」の最適な状態が分かったとして、その状態をどうやって達成すればいいのでしょうか。ここからは私の持論です。
チームメンバーを変えられるのは、メンバーとして採用するときと、メンバーから外すときなので、チームの入口と出口だけです。
しかし、私はここが意外に難しいのではないかと考えています。勝手に求めてる応募者が来てくれるわけではありませんし、勝手に辞めてくれるわけでもありません。なんらかのマーケティングや仕組みでコントロールする必要があります。
本書では、麻野さんが「チームの法則」を、自分のチームに使って、以下の結果を生んだと述べられています。
その結果、私たちのチームはどうなったか。
売り上げは10倍になりました。業績だけでなく、組織状態も劇的に改善され、20~30%だった退職率が2~3%になりました。 (本文ママ)
退職率2~3%になったと述べられていますが、もし環境が変わって流動性を確保したい場合は、麻野さんのチームはどうすればいいのでしょうか。
辞めてほしい人に、辞めてって言えばいいのでしょうか。
本書では、ある程度の人材の流動性があることが、好ましいことがあると述べられていますが、どうやってその流動性を確保すればいいのでしょうか。
この辺は正直かなり難しく、一筋縄でいかないように思います。
私が思うに、流動性確保の上手い仕組みを持っているのがリクルートです。
リクルートは「人材輩出企業」の筆頭として自らをブランディングすることで、社員がいい条件で転職しやすくなるからです。
転職者が増えることで、ポストが空き、若手にチャンスを与えられ成長し、やがて転職する。このようにして、最適な出口設計をしているのです。そして同時に、「人材輩出企業」と就活生に知られているため、たくさんの優秀な学生が志望するため、入口戦略としてもベストでしょう。この正のスパイラルを「人材輩出企業」とブランディングすることで保っているのです。
■田端大学のBoarding戦略設計について
『THE TEAM』は、田端大学という、LINEやZOZOといった名だたる企業で要職を務めている田端さんが運営するオンラインサロンの課題図書でした。
田端大学は、名著をたたき台に、本で述べられていることが、実際のビジネスではどう生きてくるのかなどを双方向的に議論し合う場で、オーナーである田端さんが、メンバーひとりひとりと議論し合うという点で、オンラインサロン界隈の中で異色の存在をはなっています。
そんな田端大学では、サロンの入口・出口戦略が、上手く設計してあります。田端さんのAimが、「短期的な利益は得つつ、優秀な人材を輩出することで長期的に自分の名声を高めること」ならば、いまの設計は良い設計に思われます。
【入口戦略】
入りにくいサロンを演出して注目を集めつつ、倉持さんの下記のnoteを入会可能な月初に引用することで、極端に合わない人材が入らないようにしているように見えます。
【出口戦略】
値段設定が9800円と、人によっては高いと感じられる値段で、得られるものが少ない人が残りにくくなっています。一方で、MVPは学費無料にすることによって、辞めるインセンティブを無くし、そのことによって、ある意味で投資対象として逃げられなくしているように思われます。
このようにかなり上手く設計されているのですが、あえてその設計に突っ込むとしたら以下でしょうか。
ツイッターのフォロワー1万人以上であり、かつ田端さんの審査に通ったら田端大学の特待生になることができるという制度があります。これは、塾生の満足度をあげるのに加えて、中期的に田端大学のプレゼンスを示すための制度だと理解していますが、この制度が上手く機能していないように感じています。
かなり生意気な意見ですが、現状では、特待生がアウトプットをするインセンティブが全くないように思われます。なので、特待生には入塾初月の定例で発表の機会を設けたり、定期的なレポートのようなものを書くというような仕組みづくりが必要なのではないかと考えています。
これは、特待生だけでなく、MVP受賞者(である私)にも同じことが言えるかもしれません。1回MVPを受賞したら、学費が無料なので辞めるインセンティブもないのですが、アウトプットをするインセンティブも無くなってしまいます。
このあたりの仕組みを整えることで、田端大学のプレゼンスを中長期的に示せるチャンスが増えるのではないかなと感じました。
以上、第2章 Boarding(人員選定)の法則[戦える仲間を選べ!]の解説と、それに基づいた田端大学の制度設計の考察でした。
最後までお付き合いくださりありがとうございました。
清原(@Takashi0zo)
こいついい文章書くなって思った人、出版クラファン中なので、プロジェクト覗いていってください!
【本書紹介】
THE TEAM 5つの法則 (NewsPicks Book)
麻野耕司著