事業とか何か始めたいと思っている方へ(起業・副業・複業など)
自らの意思とは無関係に起業支援(起業講座運営・起業相談)に関わるようになって6年、さらに最近ではキャリア支援(就活生・社会人/副業・複業)も行うようになって、自分なりに起業とか副業とか事業をスタートするということに関して一定の基準が見えてきた気がします。ということで、今回まとめてみることにしました。
なお、いわゆる億の規模の起業とかエンジェル投資とか、そういったスケールの起業は守備範囲としていません。また、私自身は中小企業診断士や行政書士などの有資格者でもありません。予めご了承ください。
個人が自己実現するために、主体的に働くために
スケールの大きな起業について語りませんと書きましたが、その理由は私自身その起業支援経験が無いからです。大手企業の勤務経験もないし、そもそも営利企業の勤務経験も少なめ。単にそういう理由です。企業の規模が大きくなるということは、社会への影響力も大きくなるということ。事業規模を大きくしながら、雇用を継続しながら、社会に影響力を及ぼすことができるって、本当にすごいことだと思います。
一方で、私といえば、基本的には個人事業主であり、これまでの経歴では非営利組織での経験が多め。6年前に個人事業主になりましたが、法人設立を目指して独立したというより、自分らしい働き方や暮らし方をしたくてフリーになったという方です。ただ、根っからの社会をよくしたい系の人間であることは間違いありません。
今回この記事を書こうと思ったのも、私のように何か始めることで、自分の労働や生き方の主導権を握りたいと思っている人に何かお伝えできることがあるのではと思ったから。何か始めたい人とは、自分らしい働き方を模索する人、主体的に動きたいと思っている人。こんな人たちが社会に増えることは良いことしかない。
180度世界が変わった
雇用される側から会社設立でも個人事業主でもとにかく事業を作り出す側に回るとパラダイムシフトが起きると感じます。少なくとも雇われることにすっかり染まりきっていた私にはかなりインパクトのある出来事でした。
当たり前のようですが、毎月決まった日に給料が振り込まれることがいかにすごいことか!毎月毎日売上は変動するのに、それでも決まった額を毎月従業員に欠けることなく払えるという奇跡。ありがたさが身に沁みます。個人で事業を行っていると、休んだらお金が入ってこないし、企画を打てばお金が入ってくるというのを肌で実感することができます。経営者の視点を初めて得たのはそれ以降でした(勤めているときは文句ばっかりだった…)。
また、何より不確定要素満載でもとりあえず始めてみる!みたいなスタンスが身につきました。私自身は元々めちゃくちゃ慎重派なんですが、現状維持も嫌いなので結局やってみるタイプ。組織において考え抜いた挙句、取り止めるみたいなのが苦手でした。だから、雇われのスタンスが染み付いていたとはいえ、徐々に不確定要素の多い中でも動けるようになったのかもしれません。これは、誰にでもできることでもないと理解しつつ、でもやっぱり意思決定に時間がかかったり、結局やりたいことは実現できないみたいな環境で燻っている人は、自分で何かを始めてみるのもありだと思います。
事業を始めることは社会に目を向けること
さらっとタイトルに「起業・副業・複業など」と書いてしまったのですが、それぞれのスタンスは結構違います。とはいえ、まずは自分でサービス提供をする側になるという意味で一括りにしています。
サービスって基本的に「自分のやりたいこと」だけでは成立しません。買い手のこと抜きにはサービス内容も決まりません。時に自分のほしいものを作ったら売れたなんて事例もありますが、それは開発者と同じように「こんなのあったらいいな」という人が他にも一定数いて、その人たちのニーズにダイレクトに刺さった結果です。
荒っぽい言い方になりますが、転職は自分のキャリアを見つめることなので社会に対して目を向ける必要はないともいえます。副業も収入を増やしたいとか○○分野で経験を積みたいとかを目的にするのであれば、自分のことを主に置けばよいと思いますし、多くの人がこれに該当するはずです。
そのような中、わざわざ自分で事業を始める意味とは何なのか?そこが実は重要です。副業・複業であれば、本業ではやりたいことに取り組めないなど、自分を主にした理由も入るでしょう。でも、起業は社会に目を向けることは必須。そんな堅苦しい考え方は面倒臭いと敬遠する方もいると思いますが、結局誰のためにそのサービスを提供したいのか、誰の何の課題を解決したいのか、多かれ少なかれその観点は必要です。起業しようがしまいが、仕事って本来そういうもののはずなのですが、雇用されていると感じにくい気がします。大手にお勤めの方は尚更規模が大きくてそれを実感しづらいかもしれませんが、そもそもはやはり目の前の誰かのためにその事業は始まったはずなんです。人によっては、生活者とかユーザーに目を向けることを無意識で行うことが案外難しいのかもしれません。練習練習。
そして何より重要なのは、「どうして自分がその事業を行うのか」という視点。マーケティングをやってきたから、コンサル会社に勤めていたから、だとどうも弱いと感じます。それが副業・複業ならいいと思います。でも、わざわざ事業を行おうとする場合は説得力に欠く。もっと自分を突き動かす源泉が何かしらあるはず。もちろんブルーオーシャンだから!勝機がある!というケースもあるでしょうが、そういった方はどちらかというとスケールすることを意識されると思います。一方で、スケールすることよりも、起業してみたい、何か活動を初めてみたいといったタイプの方こそ、身近にそのサービスを必要としている人をイメージして事業を作っていくことをお勧めします。どうしてもそれが見つからない場合は、起業して自分の居場所を作りたいケースかもしれませんね。でもそれも良し。自分の城を作ってマイペースに働くのもあり。結局正解なんてないので。
ちなみに、起業の際は競合分析はマストです。起業相談の際に競合の有無を伺うと「ない」とおっしゃる方が一定数いらっしゃいますが、ほぼ間違いなく「あります」。探し方の解像度がまだ上がっていないせいで見つからないようです。残念ながら、この世に存在しないものを思いつく確率は限りなく低いです(スティーブ・ジョブズがiPodを発明するくらいのイメージ)。でもそれは落胆することではなくて、他社サービスを知ることで自分のサービスの優位性を知り差別化を図っていくことにもつながるんです。自分がサービスを届けたい相手のことがもっと具体的に見えてくるという効用もあります。
自分の実力は慎重に測った方がいい
「環境」というものは良くも悪くも個人に影響します。その環境にいると自分もその気になるし、そのお陰で軽々と出来ることってあるはずです。例えば、大学進学が当たり前の高校にいれば「自分は大学に行けるのかな?」なんて心配はしないし、むしろ「大学行って何しよう?」くらいナチュラルに受け入れていたりします。芸能人の子どもは一般人の子どもよりは当たり前のように芸能人になるかどうかを将来の選択肢に入れているはず。
同様に、働く環境がその人のスタンスを作ります。例えば、新卒で大手企業に入れば大手企業の基準で自分を評価し、NPOに入ればNPOの基準で自分を評価する。私の感覚だと、非営利の現場では皆仕事に関する自己評価があまり高くありません。私すごいでしょ!こんな実績出してます!と言っている人はあまり見ない。社会的目的のために活動をしているとそんなものだと思います(自己肯定感低めの人がNPOや福祉の現場に吸い込まれがちなのはまた別として)。一方で、営利企業にいると自分がどれだけの結果と成果を出したのかに注目せざるを得ない。でも、それが落とし穴になることがあるので注意が必要です。
自分の真の実力なんて絶対的な示し方はないし、結局定量的に示さないと伝わらないんだけど、過去の実績は会社の看板であったりチームのサポートあってこその実績であることを前提に、それでも自分が出した成果とは何なのか見極めておきたいところです。別に大きな数字を持ち出す必要なんてないと私は思います。数値は大きくなくても、自分が素直に成果だと思えるものを堂々と提示すればいいと思います。人は全員違うキャリアを歩んでいるので比べようがないですから。
リーダーは多動気味
これから何か始めてみようという場合、自分の資質とも向き合うことになります。偉そうなことを言っている私はといえば、全くリーダー資質はなくて、副会長か書記が向いている方です(笑)だから組織を作ることにも関心が薄いし、個人でゆるゆるいろいろな組織のサポートに回っている方が性に合っています。
一方で、活動団体を設立したりする人は、先程の不確定要素の話と通ずるけど、とにかく行動力が半端ない。残念ながら行動力がない人は独立したり会社を設立しても開店休業になるはずです。ちなみに、余りある行動力のため、周囲としては「えっ?」って思っているうちにいろんなことが進んでたり決まってたりするので、時に腹も立ちます(笑)「そんなの事前に聞いてないし!」とか「周りに相談もなく決めちゃったんですか?」みたいなのはザラだったりします。もちろんそういう人ばかりではなく、ちゃんと他のメンバーに配慮できる代表もいますよ。ただ、持ち前の行動力でぶんぶん周りを振り回しても許される人っています。周りに感謝できる人です。時に腰が低くて、めちゃくちゃ部下に謝ってたりします(笑)一緒に働いてくれる人のことを思って大切にできるリーダーなら、多少の振り回しも皆が「仕方ないなぁ」と言いながらついていくもんです。
なお、当たり前といえば当たり前だけど、行動力はその人の行動に現れます。別に起業でなくても、日々の中で垣間見られます。やるやる言って結局やらない人、います。それも言ってしまえば個性なんですが、行動力がないと自覚のある方は多少起業には慎重になった方がいいかもしれません。
結局は自分次第
上記の通りいろいろ書きましたが、私自身はこれらを頭に入れた上で、起業したいという方の背中を押したり押さなかったり日々迷いながら相談対応をしています。これは副業を始めたいという方の場合も同じ。副業の場合は、起業ほどリスクがないので怪我をしづらいこともあり、やってみたいならやってみるべしと思っています。それでも中には、明らかに現実逃避であり、本業との並行はキャパオーバーになりそうだなと感じる方もいます。そういう時は背中を押すかどうか迷います。起業だって、無茶な計画でも借金せずに自己資金のみでやるなら(退職金投入はお勧めできない)、まずはやってみたい気持ちを成就?成仏?させるのもあり。結局のところ相談された側には決定権がありませんので、最後はご自分次第。
そもそも起業を用意周到に進めていて行動力のある方は相談にはいらっしゃることは稀なんです。あったとしても明確に相談内容が決まっていて、それこそ士業の方のサポート受けるフェーズだったりします。一方で、事業計画は一見しっかり埋められているようで、内容を拝見してお話しを伺うと、人生に迷っているが故に起業という選択肢を検討しているケースも多々あります。本当に人っていろいろです。
いずれにしても「何かを始めたい」「事業を始めたい」と思って一歩を踏み出そうとすることはとても価値あることだと思います。たとえそのプランが実現不可能だとしても、競合他社が多くて入り込む余地がないとしても、その事業を回すには力量不足だとしても、それらに気づくことが超重要。起業スクールでは実際に起業する方の割合は場合によって一桁といわれます。起業を検討したけど結局会社も辞めずにそのままという方もたくさんいるわけですが、その場合もその方の内側では大きな変化が起きています。起業という鏡を通して自分の働き方・生き方を見つめる。たぶんそういうことなのだと思います。
以上、お読みいただきありがとうございました!
「よし!やっぱり起業しよう」と思った皆様、健闘をお祈りします!応援しています。
「まずは副業から始めよう」と思った方は是非スタートしてください!有償無償問わず探してみることをお勧めします。やる人はやる、やらない人はやらない。永遠の真理。
「どうも自分には向いていないかも…」という方も肩を落とさず、誰かのサポートに回ることをご検討ください。すでに世の中には様々な団体や組織があります。組織はリーダーだけでは回りません。凸と凹が合わさることで事業は回っていきます。
すべての方にエールを送ります!一人でも多くの方の働き方や生き方が1ミリでもよくなることを祈って。
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