「ポピュリズム」は差別用語へ
ポピュリズム。日経新聞によれば「大衆からの人気を得ることを第一とする政治思想や活動を指す」とのこと。また、「大衆を扇動するような急進的・非現実的な政策を訴えることが多い。特定の人種など少数者への差別をあおる排外主義と結びつきやすく、対立する勢力に攻撃的になることもある」とも書かれ、「既存の政治に対する不満や現状への閉塞感が高まると、ポピュリズムが台頭しやすくなる」と説明されている。
要するに「無知でバカな大衆がネットに踊らされて極論を吐く奴に扇動されている」ということだ。
今回のトランプ大統領の返り咲きも「ポピュリズム」の現れだと解釈され、マスメディアは溜息でいっぱいである。
しかし、一度ならともかくトランプが大統領になるのは2回目だ。ポピュリズムが「無知な大衆」を「騙す」手法なのだとすれば、返り咲きという現象をどう説明するのだろうか。別に彼の主張は何も変わっていないし、4年間、実際に実行した「実績」もある。その上で再び彼が選ばれた。しかも、前回よりも支持が拡大した。
ポピュリズムの担い手が「無知な大衆」なのだとすれば、今回の結果は「無知な大衆」が懲りもせず再び騙された。あぁなんと嘆かわしい。21世紀に入って人々の知性は低下しまった。という解釈しか導き出されない。「学歴が低い人ほどトランプを支持する傾向がある」と指摘する「識者」も少なくない。
ところが「大衆を扇動するような急進的・非現実的な政策」、「特定の人種など少数者への差別をあおる排外主義」、「対立する勢力に攻撃的になることもある」という傾向を持つ政治家や政党が支持を受けるのはアメリカに限ったことではない。
6月の欧州議会選挙において極右や右派が大きく勢力を拡大し、ベルギー下院選挙では「フラームス・ベラング」が第二党となり、オランダでは「自由党」を含む連立内閣が発足し、9月に行われたドイツの州議会選挙では「ドイツのための選択肢」が第1党となった。フランスやイタリアでも同じような現象が起きている。
これをポピュリズムの一言で片づけしまうと、「世界同時バカ現象」ということになってしまう。そろそろエリートたちもレッテル貼りと思考停止に陥るのではなく、「自分たちにも反省すべき何かがあるのでは」という姿勢に立ち返るべきなのではないだろうか。
ウィーン体制は約30年、ヴェルサイユ体制は約20年で崩壊した。第二次大戦後は国際連合による安全保障、専門機関による国際協力、自由貿易、を軸に展開してきたが、その体制もそろそろ80年を迎える。何らかの制度疲労を起こしていても不思議はない。
アメリカ大統領選においても「若者に人気のあるセレブ」たちの演説はむしろ逆効果だったのではないかという指摘も出てきている。自分たちの声が人々に届かない現実を「ポピュリズム」の一言で片づけるのは、もはや優越感に根差した「差別」なのかもしれない。
1968年の「五月危機」において、ド=ゴールは「こんな現象が同時多発的に起こることはありえない」とし、「何らかの陰謀」の存在を示唆した。今から考えれば「60年代の世界の潮流」を「陰謀論」でしか理解できなかった時点で、かつての英雄ド=ゴールも「老害」になってしまったんだな、と切ない気持ちになる。
さて、そんなことを考えていたら、兵庫で実に興味深い現象が起きている。
これまでも「ネットでは騒いでいるのにメディアが全く扱わない」という現象は何度もあった。しかし、結局は「ネットの騒ぎ」が現実社会にとって代わることはなかった。
しかし、兵庫県民に話を聞くと、駅前などは「とんでもないこと」になっているらしい。先日の衆議院選とは全く違う熱気で溢れているそうだ。Xなどでもそうした動画が確認できるが、彼らの証言によると、どうやら「生成AI」ではないらしい。
ひょっとしたらひょっとするのかも知れない。ネットの世界と既存メディアの世界。どちらが現実を反映し、どちらが虚像に過ぎないのか。もはや勝敗以上に興味があるのが、斉藤知事が勝利した場合のメディアや「識者」による「敗者の弁」である。
①トランプ現象が日本でも起きてしまった!兵庫県はポピュリズムに堕ちたのか…と嘆く
②「意外な結果でしたね~。では次のニュースです。」とスルーする。
③自分たちの在りようを自省して謝罪し、現象を深掘りする。
当然ながら③を期待したいのだが、これまでの彼らのパターンからすると、その確率は0%と言ってもいいだろう。
まぁどうせ②あたりで着地するんだろうな。なんにせよ結果が楽しみだ!