経営環境の変化に伴う経営理論の進化

ビジネス書やブログ、ニュース等のメディアに触れていると、新しい経営理論や経営分野に関する研究結果に関する意見を目にする事が多い。

それらの意見は比較的新しい研究やこれまで主流とみなされてきた考え方に反する意見も少なくない。

私はこの現象の理由に外部環境の変化があると考える。経営者にはこれらの変化にいち早く気づき、自社に適用させる必要があるのではないか。

経営とは、戦略の実行・評価を繰り返すために組織を動かしていくメカニズムであり、この過程は単なる企業経営に限らず、様々な組織運営にも同様のことが言える。

組織論という言葉を一つとっても、それが実践されている場所は企業とは限らない。時に、軍隊や国家運営に関する内容にも話が飛躍する事がある。これは、組織運営が私たちの社会にいかに身近な存在であるかを意味する事でもある。

組織にとって、重要なキーワードとして心理的安全性という言葉と耳にする事が多いが、私からするとボトムアップ型組織推奨型の意見に近い印象を受ける。ボトムアップ型に対する評価はさておき、このような考え方を社会が全体的に評価する風潮に驚きや違和感を覚えている40台以降の管理職や経営者も多いのではないだろうか。

というのも、この考え方と相反する考え方がトップダウン型の財務管理の強い管理手法を好む組織であるからだ。全ての企業で同様のことが言えるわけではないが、その相反する考え方をベースに組織運営を行う企業はむしろ多いのではないだろうか。

営業職の強い企業においては、そのような考え方がカルチャーとして根付いている。これは、むしろ多数派で一般的に必要とされてきた。今後もこの考え方は残っていだろうと思うが、その一方で、何故、心理的安全性がここまで注目されるのかという部分においては、企業の経営環境の変化が私は大きいと考えている。

伝統的なトップダウン型組織では、組織に属する全ての人間が絶対的な目標に向かって、同じ価値観の下に行動をする事が正義とされる。結果ももちろん必要であるが、日本企業の場合は結果よりも行動の部分が重要視されるため、上記の目標と価値観を重視した行動が求められる事が特徴だ。

しかしながら、経営環境の変化はそのような常識ともいえる価値観を変えうる潜在的な力を有している。今回の心理的安全性の根幹には、現代の経営においてパフォーマンスを高める上で重要な特徴は何たるかを前提にあり、研究や調査の結果、心理的安全性が現代の経営においては重要であるという結論に至っている。

ここで重要なのは現代の経営において、組織として重要とされるカルチャーや従業員に求められる能力を理解する事である。つまり、この部分が例えば20年、50年前と比較して、異なっているのかどうかということを理解する事が重要ということだ。

最近では、クリエイティビティーやイノベーションという単語が現代経営に求められる要素としてしばしば現れるが、逆にあまり評価されていない部分にも目を向ける必要がある。

これまでの経営理論において、最も必要とされてきている能力として、マネジメント力がある。限定的な意味でのマネジメントとは管理能力であり、管理職以上の人間には必ずと言っていいほど求められる能力である。この能力は現代においても求められている事には違いはないが、マネジメントという言葉が妨げる能力がないかということにも目を向ける必要がある。

よくある話だが、マネジメントでは効率的に業務を遂行するために仕事の成果を管理し、会社の業績を安定的に向上させていく上では重要な力であることは間違いない。

ただし、その能力は会社の成長フェーズの全てにおいて一番必要な能力になるかと言われると疑いを持つ。例えば、多くの日本企業は企業の成長フェーズにおいては成熟期を迎えており、変化の激しい現代の経営環境の中で次の一手を打たなければならないという状況にある。

このタイミングでは、管理能力よりも創造性や革新力といった力がむしろ求められる。管理者個人に加えて、組織としても会社のカルチャーとして必要になる。こうなったときに、財務管理の厳しい組織と心理的安全性が高い企業ではどちらの組織が成果を出しやすいのかという話に繋がっていくのではないかと考えている。

現時点において、心理的安全性が組織論においてのトレンドであることを踏まえて、私たちには次の20年における組織を考えていくことも求められる事を忘れてはならない。

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