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2012年、東京での気づき~ファッション流通革新10年周期説

日本のファッション流通の市場環境は
欧米を10年後を追随しながら、
10年周期で変わる

僕がこの周期に気づき始めたのは、2012年。
2008年のH&M日本上陸をきっかけに始まった
ファストファッションブームの真っ只中でした。

H&M、ZARA、フォーエバー21、GU・・・
ファッション流通において
トレンドファッションを低価格で販売する
このブームはいつまで続くのだろう?と思ったのがきっかけでした。

日本企業は欧米企業に見習って来た

そもそも、ファッションのデザイントレンドはヨーロッパから始まり、
その後、アメリカでビジネスとして普及した後、
その様子を視察した業界人が日本に紹介するという傾向がありましたし、

長年、日本企業は、ファッション流通に限らず、欧米に見習い、その後追いをしていると思っていたので日本の未来の変化のヒントは欧米先進国にある、と考えました。

欧米でのファストファッションブームの始まりは?

過去のオンラインニュースを調べると、
ヨーロッパのファストファッションブームは1998年。
H&Mがフランスのパリに1号店を出店したところから始まっているようでした。

一方、アメリカについては、2000年。
こちらでも、H&Mがニューヨークのマンハッタン5番街に大型旗艦店出店してアメリカ上陸を果たした時からです。
その後、全米でH&Mと米フォーエバー21の急拡大が始まり、旧態依然としたアパレルチェーンストアは駆逐されて行きました。

それ以来、英文メディアではH&MやZARAやフォーエバー21の話題と共に
”fast fashion”という言葉が頻出するようになりました。

2000年、初めて見たH&Mの衝撃

実は、H&Mがアメリカ進出を果たした2000年、
当時、日本のアパレルチェーンのバイヤーだった僕は
アメリカでの商品買い付け出張時に、上陸後、数か月が経過したH&Mのマンハッタン旗艦店を訪れた時のことを今でも覚えています。

百貨店や高級ブランドの直営店が立ち並ぶマンハッタンの5番街のど真ん中の店舗に、ファッションを愛好する女性たちが吸い込まれ、
あたかも巨大なダンスホールの中で、ABBAの「ダンシング・クイーン」のBGMに踊らされ、
フィッティングルーム前にはたくさんの服を抱えて長蛇の列をつくる様を見て・・・
あぁ、こんな大きな店で、安く、たくさんのファッション好き顧客で賑わうお店が日本にやって来たら、日本のアパレル消費も大きな影響を受けるだろうなと身震いしたものでした。

ファッション流通革新10年周期説

このように、ヨーロッパやアメリカのファッション市場は日本の10年ほど前に既に
トレンドファッションを低価格で販売し、
ファッションの民主化、大衆化を推し進める

H&Mによるファストファッションの洗礼を受け始めていたわけです。

実は、ファストファッションブームの前に日本のアパレル市場を席捲した
ユニクロのSPA(アパレル製造小売業)と呼ばれるビジネスモデルも
アメリカのGAPのビジネスモデルに刺激を受けて、日本流に構築されたものであることはよく知られています。

ユニクロが牽引した、日本におけるSPAというビジネスモデルの時代は
1998年の原宿出店とフリースブームから始まりますが、

ユニクロがそのお手本にしたGAP社がアメリカで自らのビジネスモデルを表す言葉として「SPA宣言」というキーワードを初めて使った、1987年の同社の前年度の決算発表の場でした。
その宣言以降、GAPのアメリカでの快進撃が始まります。

     SPAの時代     ファストファッションの時代
欧米   1987年~by GAP   1998年~by H&M
        ↓          ↓
日本    1998年~by ユニクロ  2008年~by H&M

「SPA(アパレル製造小売業)」と「ファストファッション」という
過去20年の間に欧米と日本のファッション流通市場のパラダイムシフトにつながった2つのファッション流通革新を取り上げるだけでも、
流通革新は10年周期で起こる、また、日本のファッション流通の変化は欧米の10年後を追随しているのではないか?と気づくことができます。

実際、その前の10年、
90年代の郊外ロードサイドにおける専門量販店(カテゴリーキラー)の拡大にしても、
更に10年前の総合スーパー(GMS)の時代も、もっと遡って百貨店という業態にしても・・・

それぞれ、時系列に並べてみるとアメリカの流通市場を視察して刺激を受けた経営者たちが、そのおおよそ10年後に日本で普及を進めた流通革新であったことがわかります。

流通革新と豊かさ

ここで、流通革新とは何かを整理しておきたいと思います。

流通革新とは・・・企業の流通の合理化努力によって

* 今までなかなか手に入らなかったものを手に入るようにする
* 今まで高くて買えなかったものを買いやすい値段で提供する
* 値段が安くても品質がよい商品を提供する
* おしゃれなデザインの商品を安価で提供する

など、それまでの流通業界の常識を覆し、消費者に新しい選択肢を提供し、消費を豊かにすること言います。

決して上質さだけが「豊かさ」ではありません。消費者にとって選択肢が複数あることこそが「豊かさ」と考えます。

詳しくは、拙著「アパレルサバイバル」の25ページから始まるChapter1をお読み頂ければと思います。

新しい革新の芽を探しに海外視察に出かけよう

ちょっと専門的な話にも踏み込みましたが・・・

そうすると、欧米のショッピング環境を視察すると、
日本の近未来の革新や新しい選択肢につながりそうな現象を垣間見たり、
体験したりすることができるのではないか?

そう思った僕は、自らの足で革新的企業たちの新しいチャレンジを体感しながら、
未来予測をする旅=インスピレーショントリップに継続的に出かけることを決めたのでした。

まずは、ヨーロッパから 
欧州ファストファッションの震源地であったフランスのパリ、
H&MのライバルであるZARAのご当地であるスペインの経済都市バルセロナ、そして、
世界一のファッションチェーン激戦区であるロンドンに出かけることにしたのでした。 https://note.com/takasaito/n/nec93f85982af

※ヘッダーの画像はロンドン、リージェントストリートのH&Mです。

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