おさけ、いっぱーい!!
※ご注意※
お酒は二十歳になってから。
節度とマナーを守って、適量を楽しみましょう。
娘が二十歳の誕生日を迎えた。
二十歳と言えば、成人である。
いよいよ飲酒が可能になったわけだ。
今までは未成年ですからの一言で断ることができた、お酒の席。
今後は「え、もう二十歳越えてるんでしょ!」の一言が出る可能性がある。
最近はずいぶんお酒の席のマナーがよくなったとはいえ、己の常識を振り翳す残念な大人は消えたわけではないのだ。
「君、お酒は飲んでおいた方がいい!飲める体なのか、飲めない体なのか、それを確認するために……飲 み ま す よ ! ! !」
…私は、娘の今後を思って……、ビール、日本酒、チューハイ、カルーアに梅酒、ワインにシャンパンなどなどを取りそろえましてですね!つまみも用意したぞ!から揚げポテトフライ、うずら卵サラダに焼きカニカマ、アジの干物にカナッペ、グリルフランクに明太キュウリ、おにぎりも用意した!!……ぐふふ、今日は飲むぞ!!!
「ちょっと!!こんなにたくさん飲めないよ?!」
「全部飲めとは一言も言ってないじゃん!!一口飲んでみたらいいの、飲めるのと飲めないのを知っておくべきなのです!!」
体質的に飲めないというのであれば、今後は飲めないんですと言えばいい。
飲んでも平気そうなら、節度を守って窘めばいい。
自分の飲酒の限界を知らずに、恥をかくような大人になっては……ならん!!!
「じゃあね、まずはこの3%のやつから飲んでみ?気持ち悪くなったらすぐ言ってね!」
「わかった!!じゃあ、これから飲んでみる!!」
娘が小学生の頃子供会で製作したガラスグラスに…氷とチューハイを注ぎ……おそるおそる、ぐびりと飲み下したぞ……。
さあ、赤くなるのか青くなるのか、それとも変わらずなのか。
ごくり……。
ああ、小学生だった娘も二十歳か、私も年をとるわけだ……。
やけに水割りが胃袋に染みやがる……。
「…うん、普通に美味い!ジュースじゃん、何これ、ウマー!」
「君ね、そのまましばらく様子を見なさい。赤くなってきたらお酒に弱い、青くなってきたらお酒は毒。しばしおつまみをお食べなさい」
私はその間、娘の開けたチューハイの残りを……ぐびぐび!!
うーん、やはり乳酸菌の入ってるやつは爽やかに美味いな!!
「次はどれにする?順番考えといたらどお!!」
「うーん、牛乳好きだからこれ?あと、部長がビールはまずいって言ってたから、先に試しておきたい!!」
どうやら本日のお酒試飲会について会社でいろいろと話をしているようだ。
……フレンドリーな会社でよかったなあ。
「だし巻き卵焼けた」
今日は息子もおつまみを随時提供して下さるらしい。
離乳食を食べていた息子が卵を焼けるようになるとは…私も年をとるわけだ。
「わーい!いただきまーす!!うま、あつ!!」
「ちょ!!全部食べないでよ!!」
「僕も食べよう」
私は日本酒をぐびりと飲みつつ、だし巻玉子に箸を入れる。…くう、うますぎる!!!
「ねーねー、次のもう飲んでいい?気持ち悪くないよ!!」
娘の顔色を窺うと……、普通のみちみちした顔だな。
赤くはない、青くもない。
旦那はアルコールが一切ダメで、一口飲んだだけで分厚い肉に包まれている体が瞬時に青く染まってしまう。旦那にうり二つの娘、体質まで似ているのではないかと心配していたのだが…どうやら、大丈夫そう?
「うーん、じゃあ、次いってみるか、ええとカルーアミルクだね、ちょっと薄めに作ってあとで濃くするか♡カルーアミルクはねえ、かわいい女子を気取るなら絶対飲んでおきたい逸品だね!私のいけてる友達はみんなこれ飲んでたよ!まあ私はジントニックとか飲んでたけどね!」
「ふうん!何これ、コーヒー牛乳じゃん!うまっ!!」
まあねえ、牛乳好きだもんねえ、そりゃあおいしく感じるでしょうよ。私は牛乳が苦手なので、実はあまり得意じゃなかったりするんだけれども。
甘い酒を飲んだので、しょっぱい干物をつまみつつ、ワインを開ける……チーズのおつまみ欲しいなあ。
「はい、もちチーズピザ」
「うおお!!ナイスタイミング!!君いい料理人になるでしかし!!」
「あたしもワイン飲んでみよう……うん、これ嫌い!」
娘はワインがだめらしい。
仕方がないなあ、出した分はすぐさま飲んでおかないと!
ぐびー!!
「じゃあ、ビール飲んでみようかな…うわ!!何これ、まっず!!無理!!」
「何や失敬なやつだな!!こんなにすっきりとしたのどごし、きめ細かな泡、鼻に抜けるホップの恵み、ええい酒の味の分からん奴め!!」
一口、いやひとなめしてビール缶を私に突き出した娘を叱り飛ばして炭酸の抜ける前に美味しく飲ませていただく!!うーん、やはりビールよな、第二、第三のビールもうまいけど、本物のビールはやっぱうまいわ!!最近はクラフトビールも人気でさあ、選びたい放題でいやあいい世の中になったわ!!!ああ、ペールエールまた飲みに行きたいなあ…。
「宅飲みデビューの次は居酒屋デビューだね、葉山さんとこはおっさんくさいアルコールしか置いてないけど、やっぱパリピのぐびぐび系カクテル多く置いてあるお店の方がいいよねえ!」
「うーん、しばらくは宅飲みでいいよ!つぎ日本酒ちょっとなめさせて…うげえ!これやだ!!!」
ぬう?!この人の大吟醸をそのようなしかめっ面で味わうとは何事!!!許しませんよ?!いくらで買ったと思ってるんだ!!ああ、これ加藤さんからもらった奴だった!!!
「梅酒もなんかうえってなるからやだ!シャンパンって甘くないんだね、もういらない!こっちのチューハイ飲みたい!」
「ちょ!!!高い酒をつぎからつぎへと!!!まあいいわ!全部飲んだるでな!!!シャンパンはオサレに飲むにはグラスの柄を摘まむようにして持ってだね!!!」
「ただいまー!!!あ、美味しそうなもん食べてる!!お父さんも食べる!!」
「ちょうど炊き込みピラフができた」
相変わらず旦那は汚い手でおつまみを摘まんでいくな!!作業着を脱げ、手を洗え、そして人のつまみを勝手に食らうんじゃない!!!
「ちょっと!!!手ぐらい洗いなよ!!!それ最後のカニカマ!!おにぎりは締めで食べるんだから食うな!!」
「肉すいできたよ」
「わーい!食べよう食べよう!」
「お姉ちゃんお酒飲んでみたの?顔全然変わらないねえ!!」
娘の顔色は全く変わらない。私の酒飲みの血を引いているのかしらん。いいことだ!今後は娘と楽しく地元の居酒屋巡りもできようて!!ぎゅふふ!!!
「も~!!おにぎり無くなるから食ったろ!!私これで晩御飯お終いでいいや!じゃあ後は皆さんで仲良くご会食ください!ではこのへんで、しーゆー!!」
「ちょっと何言ってるの!!もうお母さん酔っ払いすぎ!!」
「お姉ちゃんはああなっちゃダメだからね!!」
「ひどすぎる」
今日はさあ、ばっちり飲む予定組んで、先にお風呂にも入っといたからあとは歯磨きして寝るだけなんだよね!きょーはお気に入りのブドウ味の歯磨き粉使っちゃうぞ!!ひゃっほー!!
おーやすみーーーー!!
・・・・・・。
・・・・・・。
頭いてえ・・・・・・・・・。
・・・水、水飲みに行こう。
よたよたとキッチンに向かうと、日曜の朝を満喫する、ご家族の皆さんが・・・・・・。
「ちょっともう!!お母さんひどかったよ?!」
「お姉ちゃんのいい勉強になったよ、今後はちゃんぽんなんかしちゃだめだよ?!」
「ひどすぎた」
「も、もうちょっと・・・静かに・・・・・・」
冷たい水を一口と、二日酔いの朝用のドリンクをグビリと飲み干し……、うん、マズい……。
「今日は今からボストコ行くって約束だったよねえ!!あたしクロワッサン買いたい!!」
「フードコートでピザ食べよう!!あとみすじ買お!!今日はステーキだ!!」
「チーズ買いだめしたい」
皆さん、元気でいいですね……。
私は日曜の朝からげっそりなんですけど……。
「じゃあ、今すぐ出かけよう!!」
「私は留守番で……」
「何言ってんの!だめだめ、お母さんお支払い係だから!!」
「…行かないの?」
息子の残念そうな、顔、顔!!
……行かねば、なりませんとも。
「「れっつら☆ゴー!!」」
「いこう!」
「……。」
私は痛む頭を抱えながら…、賑やかすぎる家族と、ドライブに出かけることに、なったという、お話です……。
私が唯一自ら進んでぐびぐび飲んでもいいと思える加工してない牛乳を使った飲み物は、カルアミルクです(牛乳苦手民)