見出し画像

サワ、サワ、ザワ、ザワ……。


……サワ、サワと。

風が、緑を、くすぐる。

……ザワ、ザワと。

風が、私を、くすぐる。

風は、緑を、揺さぶる。

風は、私を、揺さぶる。

……サワ、サワと。

風を、受け止める、緑。

……ザワ、ザワと。

風に、流される、私。

風は、緑に、溶け込んでいる。

風は、私に、溶け込んでいる。

……サワ、サワと。

風は、空へと、散っていく。

……ザワ、ザワと。

風は、空へと、散ってゆく。

風は地表の砂ぼこりを巻き上げて、空へと渦を巻いた。

風は私の中のよどみを巻き上げて、空へと渦を巻いた。

……くるん、くるん。

薄汚れた砂ぼこりは、青い空の彼方に消えた。

……ぐるん、ぐるん。

薄汚れた私のよどみは、青い空の彼方に消えてはくれない。

……ぐるん、ぐるん。

手放したいよどみは、青い空の上で大きく輪を描き、舞い戻る。

手放せないよどみは、白い雲の下で大きく方向を変え、舞い戻る。

……サワ、サワと。

心地よく、耳に響くのは、風と緑の連弾。

……ザワ、ザワと。

不愉快に、耳に届くのは。

風に吹き飛ばしてもらえない、私のよどみ。

風に吹き飛ばされることのない、私のよどみ。

風に吹き飛ばされるはずのない、私のよどみ。

……ザワ、ザワと。

私の中で、さわいでいるのは、私の心。

……サワ、サワと。

私の外で、さわぐことができないのは、私の心。

……風が、吹いている。

今日も、手放すことが、出来なかった。

明日こそは、手放せるだろうか?

……風が、止んだ。

心地いい、風と緑の連弾は消え。

……ザワ、ザワと。

不愉快な音が、私を包み込む。

……ザワ、ザワと。

不愉快な音を、頭の中に響かせながら。

……ザワ、ザワと。

不愉快な音を、自分の周りに響かせながら。

私は、土ぼこりを上げて、この場所から立ち去った。

……足元に絡みつく、土ぼこりを払おうともせず。

私は、顔を上げることなく、この場所から、立ち去った。

※こちら動画もございます※



ざわ…ざわ……。


いいなと思ったら応援しよう!

たかさば
↓【小説家になろう】で毎日短編小説作品(新作)を投稿しています↓ https://mypage.syosetu.com/874484/ ↓【note】で毎日自作品の紹介を投稿しています↓ https://note.com/takasaba/