まだかな、まだかな~
まだかな、まだかな~
待ち人が全然来ない
まだかな、まだかな~
約束の時間に誰も来ない
まだかな、まだかな~
いつもならもう来てるはずなのに
まだかな、まだかな~
白い車が見当たらない
まだかな、まだかな~
もしかしたら黒い車で来るかも?
まだかな、まだかな~
もしかしたら道が混んでいるのかも
まだかな、まだかな~
電話をしたほうがいいかも?
まだかな、まだかな~
電話をしたら停車しないといけないよね
まだかな、まだかな~
かけたら遅くなっちゃうよね
まだかな、まだかな~
のどがかわいた
まだかな、まだかな~
トイレに行きたい
まだかな、まだかな~
暑くてクラクラしてきた
まだかな、まだかな~
猛暑の最中の出迎えは覚悟が必要
まだかな、まだかな~
日陰のない場所で父親を待ち続けるのはキツイ
まだかな、まだかな~
待ち合わせ場所変えてもらおうかな?
まだかな、まだかな~
お迎えに行くようにしようかな
まだかな、まだか…あ、帰ってきた
「遅くなりました〜!」
「いえいえ、ありがとうございました!」
「外は暖かくていいなあ、車の中はさむくてさぁ」
送迎される父親も、大変らしい
デイに通うのは父親だけではないから、他の利用者が暑いといえば車内は冷やさねばならない
熱中症になったら大変だもんね
寒いぶんには着ればいいが、暑いなら冷やすしかない
しまい込んだ上着を出さないと、そう決めて歩き出す
父親の背にそっと手を添えたら、ひんやりした
のぼせた熱が少しだけ引いていく
「お前さんの手はずいぶんぬくたいなあ、熱でもあるんじゃないかい?」
「お父さんが冷え切ってるんだよ、さぁ早く帰ってお茶でも飲もうね」
マンションの入り口からエレベーターホールに向かうと、日差しが途切れてホッとした
突き刺すような強烈な熱が失せた、生暖かい空気の中をのんびり歩く
エレベーターに乗り込んだら、少しひんやりした空気が充満していて驚いた
部屋から出て降りたときは、ずいぶん暑いなと思ったのだけれども
よほど私は熱に晒されていたのだろう
「このくらいの温度がええなぁ」
待たされる私も、送られる父親も、ずいぶん体力を消耗してしまうみたい
少し負担は大きくなってしまうけど、父親の送迎は自分でしたほうが良さそうだ
私はデイサービスの事務局に電話をすることを決め、エレベーターを下りた
「今日さあ、囲碁ができる人が来てさあ…」
ニコニコしながら話す父親のほっぺたが、少しだけピンク色になっている
冷えた体が温まってきたらしい
凍えていた口も、温まってきたらしい
玄関を開けても、靴をぬいでも、止まらない報告
気分良く話しているのを邪魔するのも気の毒だ、できる限り聞いてあげたい
だがしかし、私はこのあと町内会の会合に出なければならない
会合の始まる時間まで、あと20分
ここから会合の行われる公民館まで、15分
なかなか終わらない父親の話を聞きながら、私は冷や汗をかいたのだった