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トンネル

 私がウォーキングで毎日訪れている遊歩道には、トンネルが3箇所ある。

 白い壁のトンネル。
 地元の小学生がカラフルに彩ったトンネル。
 コンクリートがむき出しになっているトンネル。

 デザイン、大きさ、長さ、まるで似ていない…個性的なトンネル。
 けれど、どのトンネルも、独特の【トンネル感】がしっかり存在している。

 圧迫感のある、空間。
 上下左右を囲まれた、空間。
 向こう側が見える、空間。
 風が通り抜ける、空間。

 トンネルを通る度に、少しだけ不思議な感覚を覚える。

 ごく普通の日常が、ほんの少しだけ拘束されたような…。
 ごく普通の瞬間が、ほんの少しだけ包まれるような…。
 ごく普通の景色が、ほんの少しだけ隠されるような…。

 トンネルを通る時の、独特の雰囲気が…わりと好きだ。

 わりと、トンネルというもの自体が好きなのかも、知れない。
 わりと、トンネルという形状が気に入っているのかも、知れない。
 わりと、トンネルという場所に魅入られているのかも、しれない。

 そういえば、子供の頃砂場でトンネルを作るのが好きだった。
 そういえば、地下鉄がわりと好きだ。
 そういえば、高速道路のトンネルの中で光るライトが好きだ。

 トンネルが身近にあるから、頻繁に出向いているのかも、知れない。

 通るたびに響く、足音だとか。
 通るたびに強く吹く、風だとか。
 通るたびに目に入る、壁だとか。

 トンネルが近づくたびに、なんとなく心が騒めく。
 トンネルに入るたびに、なんとなく心がそわそわする。
 トンネルから出るたびに、なんとなく心がほっとする。

 ……トンネルを通るたびに、ふわりと浮ぶ、記憶。

 トンネルで転んだ事、トンネルの天井から水が落ちてきた事、トンネルの音が響いてうるさかった事、トンネルの壁の絵がかわいいと思った事、トンネルの壁でセミが脱皮していた事、トンネルで雨宿りした事、トンネルの電気が点いた瞬間、トンネルの入り口に大きなサギがいた事、トンネルの出口にカメがいた事、トンネルの中でカマキリに襲われた事、トンネルから出る時に蝙蝠と衝突した事……。

 トンネルを通るたびに、こんな事があった、あんな事もあった、そういえばあの時、そうそうここで、あれはいつだったか、あの頃ここは……色んな事を思い出す。

 ……トンネルに入るたびに、やけに落ち着きが無くなるのは、もしかして。
 トンネルと関連のあるエピソードが、わんさかあるからなのでは……?

 これ以上、おかしなエピソードが増えないといいなと思いつつ、今日も私はトンネルをくぐるという、お話……。

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たかさば
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