疲れが取れない
……このところのハードスケジュールが、体を蝕んでいる。
寝ても覚めても、体が重い。
起床時に体が重い。
仕事中も体が重い。
休憩時間も体が重い。
家に帰っても体が重い。
お風呂に浸かっても体が重い。
ベッドに横になっても体が重い。
夢の中でさえ、体重が増えて頭を抱える場面を見る有り様だ。
体がやけに重く感じるというか、実際に体が重くなっているというか、筋肉が減ったというか、回復しないというか……。
こんなに、疲れているのは、初めてだ。
こんなに、疲れが取れないのは、初めてだ。
もしや、なにか、重大な病気にでもかかっているのでは……?
そういえば、いつもより食欲がない。
そういえば、噛む力が弱くなった。
そういえば、いつもより頭がボーッとする。
そういえば、いつまでたっても筋肉痛が治らない。
そういえば、膝が痛い。
そういえば、のどが痛い。
そういえば、胃が痛い。
そういえば、皮膚がぴりぴりする。
そういえば、目が乾いている。
そういえば、体のあちこちが軋んでいる。
馴染みの整形外科に、飛び込んだ。
ずいぶんちゃらんぽらんな先生ではあるが、腐っても医者だ。
この顔色の悪い私をみれば、ある程度の病気の目星はつくと思われる……。
「……最近、すごく調子が悪いの…、なんか、悪い病気なんじゃないかって、心配で。ここ、血液検査、できたよね……?」
「…、なにしたの?」
いつもならば、診察室に入るなり肩が痛いだのシップ多めにくれだの電気流したいだの訴える私が、大人しく椅子に座り込んで床を見つめながらボソボソ呟くのを見て、訝しげな表情をこちらに向ける、先生。
「キャンプに行って…、帰ってきただけだよ?」
「…もっと詳しく。」
最近、記憶力も衰えているから…よく、思い出せない。
ええと、たしか……。
「朝、レンタカーに行って、荷物をつみこんで、サービスエリアの朝食バイキングを食べて、カロリー消費するために山に登って…、さんざん頂上でヤッホーしたあと、麓の流し素麺食べ放題に行って、キャンプ場についたらアスレチックやって、池に落ちてシャワー浴びたのちバーベキューやって、酒飲んでいつの間にかバンガローのフローリングで大の字になって寝てて、飛び起きてシャワー浴びて着替えて寝ておきたら頭が痛くて…、足も浮腫んで、顔もパンパンで…、いつもだったら次の日にはピンシャンしてるのに。」
「あのね、食欲ないのは食べすぎて胃が弱ってるからだし、疲労感が取れないのはあんたが若くないからなんだよ!こんな日に焼けて脂ぎってる重病人がいるわけないでしょ!シップ出しとくから、しばし家でぼんやりしといて!間違っても三時間のウォーキングとか行くなよ?!」
なぬ!!
日課のウォーキングに行けないとなると、日々の摂取カロリーを消費する手段がなくなり、あっという間に増量してしまうのですが?!新陳代謝の落ちまくったこの身、並大抵の運動では脂肪が落ちていかなくてですね!!
「そんな!じゃあどうやってダイエットすんのさ!」
「食う量を減らせば!はい、お大事にね!」
医者の言葉を信じ、ウォーキングに行かず家でのんびりすること1週間。
随分体調も戻ってきて、いくぶん気持ちも向上してきた。
そろそろウォーキングを再開してもよかろうと、アップを始めたのだが。
真夏だというのに梅雨前線が停滞してしまっているらしく、大気の川が盛大になだれ込み、連日の雨模様、天気の急変、ゲリラ豪雨で…一歩も外に出られない!!!
地味にストレスがたまり、うまいもん食べたり作ったり、カロリー過多の日々が続き!
先日の体調不良の時の足のむくみとは明らかに違う、この肉の満ち満ちとした増量感はどうだ!!!
毎日の運動ができないという事が、これほどまでに人を大きく成長させようとは……。
様々な不運が重なり、いろんなことを学んだ私は…、今後は羽目を外して喜ぶような楽しみ方はするまいと誓ったのであった。
中高年のダイエットの難しさときたらもうね……。
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