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嗚呼、憧れの…花がある生活。

 なじみのスーパーの入り口には、切り花のコーナーがある。

 季節の花や仏壇用の花がブーケになって並んでいて、とても華やかで目を惹く場所だ。

 そのラインナップたるや…実に魅力的で、桃や梅の枝、菖蒲にススキ、ほおずき、クリスマスツリーや門松、鉢植えやポット、金魚やメダカなども並ぶことがある。ついつい買いたくなって、目線の高さまで持ち上げて見る事も珍しくない。

 美しい花にきれいな花、派手な花に見たことのない花、かわいい花に面白い花…、ぜひとも部屋に飾りたいと思うのだが、残念ながらうちには花を買う習慣が…ない。

 そもそも前提として、猫がわりとたくさん家にいるので…倒してしまう危険性があり、花瓶の類のものは一つもない。倒さない場所に置いたとしても食べてしまう危険性があるため、花を買おうとは思わないのだ。

 とはいえ、自分の部屋は猫の立ち入りを禁止にしているので…花瓶を置こうと思えば、置くことはできる。もともとおっちょこちょいの注意力散漫タイプの人間という事もあって、食器類ですらプラスチック製のものが多いレベルなのだが…窓辺にそっと置いたりするくらいならば、問題なく飾れるはずだ。

 イライラしながらパソコンに向かってセコセコと作業をするストレスを…作る端からすべての料理を食い尽くされて怒り心頭になる日常の疲労感を、可憐な花に癒してもらいたいなと思う気持ちはある。

 ただただ美しく、可愛らしく、そこで咲いている花を見て気分転換することができれば…、つまらない事に心を囚われてしまい気分転換と称しショート動画を延々見続けたあげく、気がついたら日付が変わっていたというような悲劇に歯止めがかかることはおそらく間違いないはずなのだ。

 花に対する私の憧れは、募る一方だ。

 いつも花売り場を見るたびに、今日こそ買いたい、この花が私の部屋に来てくれたら、この色は朝陽によく映えるだろう…、ワクワクした気持ちがあふれ出す。

 そして、ブーケを手に取り、間近で花の美しさを堪能した後、値段を確認し…そっと売り場に戻すのだ。

 ……そう、花束は、めちゃめちゃ…高いのである!!!

 398円、それだけあれば…食パンが3斤は買える!
 498円、それだけあれば…商品入れ替えで半額になっている日本酒が買える!!
 598円、それだけあれば…ホットケーキミックスにバナナ、クレミーホイップが買える!!!
 698円、それだけあれば…具だくさんの豚汁が鍋いっぱい作れる!!!!
 798円?!
 ただの自分一人が見て喜ぶだけの花に、そんな値段が払えるか!!!
 898円?!
 どうせすぐに枯らしてしまう鉢植えに、そんな値段が払えるか!!!
 998円?!
 あと2円で1,000円とか、草のくせに舐めてんのか!!!

 私は、人様に差し上げるブーケなどは俄然はりきってお金をかけたいタイプの人間ではあるのだが。

 如何せん、自分用に花を買うという習慣がなさ過ぎて…どうにも財布のひもが固すぎるのだ。花を買うくらいならば、大食漢しかいない家族に食わせる食材を買いたくなってしまうのである!!

 ……ああ、いつか裕福になったのならば。
 可愛らしい花を、これでもかと並べて、優雅なひと時を……。

 ………。

 ……うーん、花よりも、うまいもんが食べたい。

 そして今日も、アジサイの見事なブーケに別れを告げ。

 キャベツと豚肉と牛乳とえびせんべいとレトルトカレー三袋入り、とろけるチーズと切りイカとふりかけと小麦粉と卵と新発売のグミに腐りかけのバナナ、菓子パンのお買い得袋に半額のちくわに箱入りアイスとレジ前に置いてあった三色だんご、切り出しカステラその他もろもろを買って、大荷物で帰宅したというお話なんですけれどもね……。

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