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【たからうたストーリー】カラフル

神戸学院大学現代社会学部の岡崎ゼミでは、地域のたからもの、その出会い、語り、想いを音楽にする〈たからうたプロジェクト〉に取り組んでいます。3年生のゼミ生による「カラフル」の楽曲制作プロセスについての記事です。

毎日に何かをプラスしていきたい


私たちのチームは、兵庫県北部但馬地方で農業を営んでいるVeggie de+の小川恭弘さん、小川菜美さん夫妻を訪問し、農業体験をした後、二人に野菜に対する想いを取材した。大学に戻ると、二人の語りを出発点に「カラフル」という楽曲の制作に取り組んだ。

小川さん夫妻は、美味しい野菜をお客様に届けるため、毎朝早く起床し、子育てと両立しながら農業を行っている。但馬地域は、夏はとても暑く、冬は降雪で厳しい寒さにおそわれるので、農業には厳しい環境だ。しかし、小川さん夫妻は、品種改良や、土壌改良を重ね、『環境に負けない農業』に取り組んでいる。

また、野菜販売の手段として、Veggie de +を象徴するオレンジ色のキッチンカーを活用し、野菜を豊富に使ったハンバーガーやタコスの販売を行っている。オレンジ色のキッチンカー、色とりどりの野菜、明るく前向きな小川夫妻の雰囲気や表情から、私たちはこの楽曲に「カラフル」というタイトルをつけることにした。

私たちのチームは、小川夫妻にインタビューした後、印象に残ったフレーズをそれぞれが紙にまとめ、印象に残った点を話し合い、そこからアヤヲさん、山田明義さんの協力を得て、楽曲を完成させた。

歌詞をアレンジしたアヤヲさんによれば、合宿の2日目にVeggie de +班のメンバー全員と意見交換をおこなって、感じたことを話しあえたことが大きかったという。私たちは全員の言いたいことをはっきりさせたうえで、意見をまとめた。この充実した話し合いで歌詞の方向性が明確になったので、アヤヲさんは、いままでよりもずっと早く歌詞をつくることができた。

楽曲は、キッチンカーで様々なところを小川さん夫妻が訪れるのをイメージして作られた。Aメロ、Bメロ、サビの構成にはストーリー性がある。作曲を担当した山田さんは、事業者名Veggie de +の「+(プラス)」を楽曲のキーワードにするというアイデアを提案した。「「+(プラス)」のフレーズは、日々の生活に様々なものをプラスしてゆきたいという小川夫妻の心境を表現している。

重たいキャベツもなんのその

「特に手間がかかる野菜は何ですか」という質問に対し、小川菜美さんは、「キャベツなどの重たい野菜を収穫し、運ぶのが苦手だけど、頑張っている」と話した。「美味しい」だけでなく、「重たい」もリアルな言葉である。そこで、私たちは、歌詞全体を前向きな言葉で埋め尽くすのではなく、大変さや憂いを表す言葉も歌詞に入れたいと思った。ここから生まれたのが「重たいキャベツもなんのその」というフレーズである。菜美さんが明るくキャベツの重さに苦労していると話してくれたので、伝えたいことをシンプルな言葉で表現することができたと思う。

楽曲は私たちが考えたイメージをもとに、山田明義さんたちが制作した。地方や農業というとアコースティックなサウンドを連想しやすいけれども、中田ヤスタカさんの曲みたいに、そういうイメージを裏切るサウンドの方がおもしろいよねという意見が出た。そこで、エレクトリックなサウンドで、小川さん夫妻の明るさや元気良さ、収穫の楽しさ、野菜のいろどりを表現することにした。

楽しい車がやってきた

Veggie de +を未来につなげるために新しいことに挑戦している。「苦労さえ楽しんでいこう」という小川夫妻の前向きな気持ちを表現したいと私たちは考えた。

作詞をまとめたアヤヲさんは「キッチンカーから流れて、『なんか楽しい車がやってきた!』って集まった人たちが楽しい気持ちになるというイメージが浮かんだという。作曲を担当した山田明義さんは、農業体験から感じられたのは「一個一個の野菜に喜んで欲しい」という想いだったという。野菜が運ぶ喜びがつながって、人が集まるイメージが音楽に表現されている。
 
作曲では、大まかな歌詞をアヤヲさんが書いて、山田さんが作曲の際に言葉を付け加えたり、引いたりしている。「〇〇をプラス」という言葉を列挙するパートでは、あと一つプラスするものが見つからなくなった。山田さんは、もう一つ考えて追加してほしいと思って、「トゥルルをプラス」と仮の歌を録音し、歌詞カードには「×××をプラス」と記入した。歌詞カードを見たアヤヲさんは「トゥルルが今っぽいな」と思った。しかし繰り返しデモ音源を聴いているうちに、「あれ?もしかして歌詞足りてなかったから××ついてるんちゃう」と気づいた。でも、結果的には「×××」と書いて「トゥルル」と歌うやり方で良かったと思った。「聞いた人にもっと細かい小さなことをプラスするっていう部分の余白を与えるっていうのは私は好き」とアヤヲさんは語っている。
 
山田さんが作詞作曲をするうえで大切にしていることは「全体をざっくりやる」ということである。全体を適当にざっくり作ってから、少しずつまとめていく。そうしなければ最終的なイメージが見えないからである。おおまかに作って、それから必要なところを変更していくことで完成した曲が姿を現すのだ。

賑やかさを出すためにチームのみんなの声も録音した。
この曲を通じて伝えたいのは小川夫妻の明るさである。カラフルな野菜を楽しくキッチンカーで届ける音楽、それが「カラフル」である。

2023年度岡崎ゼミ3年生
宇賀茜里/山本雄大/南本翔輝/松井聖和/久保美友/大薮航介/藤原魁人

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