夏の一大イベント
焼き鳥屋をオープンしたての頃
無休で営業していた両親
働きっぱなしで家族サービスなるモノはなかった。
夏休み、どこかに出かける事もなく
それが当たり前だった幼少期
父がたまに見せる気まぐれで
「明日は海に行くぞ!?早よ起きろよ〜」と告げられ
慌てて兄妹で浮き輪を買いに
お年玉の残りを握りしめ
町唯一の百貨店である寿屋へ行った
海水浴グッズ売り場には沢山の浮き輪が並べられていたが
浮き輪はどれもこれも金額が高く
兄妹それぞれ1つずつ買うなど出来るはずもなかった
悩んだ末お手頃価格のビーチボールを1つ購入した
ビーチボールなら家族皆んなで遊べるし
掴まって浮く事も出来るだろう!
一石二鳥を選ぶ貧乏人
いや、倹約家と言って欲しいところ
夏だ!海だ!ビーチボールだ🎵
嬉しくてワクワクが止まらずなかなか寝付けなかった
そして、夜中仕事を終えた両親が帰宅
「海に行くぞぉー!起きんやつは置いてくぞー」と叩き起こされた
夜中に起こされ眠すぎて海なんてどーでもいいと思ったが
起きなければ2度目はナイと子供ながらに予感し
フラフラと半分眠った状態で車に乗り込んだ
そして母方の実家がある津屋崎へ
我が家は海と言えば津屋崎だった
波の音しか聞こえない真っ暗な海に到着し
そのまま車の中で夜が明けるのを待った
白々と日が明け始め待ちに待った海が目の前に現れる頃
父が「よし!遊んで来い!」とGOサインを出す
そして両親は遊ぶ事なく車の中で仮眠
子供だけで海で遊ばせるのか?と
今では考えられないが…
いや、昔でも考えられないことか?
我が家は特殊で子供だけで遊ぶ時は
6歳離れた兄が親代わりでチビな私達の世話をしてくれていた
兄の先導で海へ向かったが
日の明け始めはなかなかの荒れ具合
ちびりそうなぐらい波が高く
ケチらず浮き輪を買えば良かったと後悔
荒れ狂う海に入る勇気もなく
買ってきたビーチボールで遊ぼうと膨らます事にした
しかし、ビーチボールだと思っていたビニールは
どんなに息を吹き込んでも丸くならず円柱に膨らみ
腰掛け用の椅子になった
椅子って…
空気椅子って…
ビーチボールと並んで売ってたのに…
まぁ〜しかし、ビーチボールとして遊べなくもないだろうと遊んでみたが
やはり円柱はトスし難く
まともに飛ばず2〜3ラリーで諦めた
所詮イスはイスだった
浅瀬でチャプチャプ遊んで
タイムオーバー!
仮眠を終えた父が「ばぁーちゃん家に行くぞぉー」と号令をかけ
私たちは文句も言わず撤収準備をした
我ながら聞き分けのいい子供であった
兄妹揃っているか点呼を済ませると
海からすぐの母の実家へ向かった
しかし、私は毎回久しぶりに会う
ばぁーちゃんや叔父叔母、従兄弟達に
馴染めずにいた
滞在時間数時間で帰るのが通例
毎回初めまして状態
初めましてこんにちはのまま
昼には穏やかになった海を眺めながら帰路へ…。
波は穏やかで海水浴場は海を楽しむ人たちでごった返していた
キラキラの海に後ろ髪引かれながら
楽しかったのか?よくわからない夏休みの一大イベントは幕を閉じた
今考えると
なかなか里帰りすることが出来ない母の為のドタバタ里帰り計画だったのかもしれない
気まぐれの塊で出来たよーな父の
たまに見せる優しさに
母は惚れなおしたことだろう
ちなみにビーチボールだと思って買った椅子は座る事以外で使えそうもなく
暫く子供部屋の椅子として使用された
今でも覚えてるって事は
子供の頃の楽しい思い出だったってことかな?
違うか?(笑)