バージョンアップしたIST社のロケット『MOMO v1』
『インターステクノロジズ』のMOMO7号機「ねじのロケット」の記者会見を北海道大樹町で行った。
立て続けのロケット打ち上げ失敗、前回は点火機に障害が発生し打ち上げがキャンセルとなった。まだ社内体制も整わずなんとか打ち上げていた感じのMOMOだったが、抜本的な改修をしないと成功確率を上げられないとのことで、経営的にはかなり厳しかったが一年間は打ち上げをストップして改修をすることに。
点火機の冗長性や始動条件などを見直す。他にもアビオニクス基板の共通化、部品点数の見直しやユニット化、本当はもっといろいろとやりたかったのだが時間的制約もあり、ある程度のバージョンアップに止まったもののVersion0からVersion1にアップデートしたので「MOMO v1」と呼ぶことにした。今年の夏に打ち上げられる。
まだ、CFT(Captive Firing Test=実機タンクを用いたフル秒時燃焼試験)が控えているので油断はできないが、かなりの確率で成功すると思っている。
特に苦労したのが5号機で発生したエンジンノズルの破損対策だ。大型ロケットでは一般的となっている再生冷却を用いずアブレーション冷却でシンプルな構造にしているMOMOは、エンジンで最も温度が高くなるノズルスロートを含むノズル部にグラファイト=黒鉛を使っている。鉛筆の芯と同じ素材で耐熱性はあるが脆い。ある一定の確率でヒビが入ると破損してしまう。
以前、JAXAのミューシリーズロケットで同様の問題が発生している。JAXAはCCコンポジットという炭素繊維を使った強化型グラファイトを用いることで解決したが、高コストでリードタイムも長いこともあり我々は採用できなかった。
結果としてSFRPというシリカを使った耐熱性の高いFRPとグラファイトのハイブリッドで何度かのテストを行った後、エンジンテストに成功。なんとか設計を成立させることができた。
ここまでのスピーディーな開発ができるのは、やはり技術者の層が厚くなって会社としての体制がしっかりしてきたことに尽きるのではないだろうか。今年の夏はしっかり打ち上げ成功させて、勝利の美酒を味わいたいところだ。
そして開発中の軌道投入機「ZERO」の完成に向けて勢いをつけたい。
今は新型コロナ関連で観客を迎えた打ち上げは控えているが、そんな大樹町でのロケット開発周りのイベントでのボランティアなんかにも参加できるHIUも会員募集中。
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