見出し画像

変化の時代を生きるための動的プロセス型キャリア開発論入門(3)

花田光世先生の『「働く居場所」の作り方』の第2章を扱います。各論に入る前に、先生のキャリア論のポイント(と思われるもの)を押さえたい方は、以前の投稿をざっとご覧ください。

第2章ではモティベーションがテーマとなっています。一言で先生の主張を要約すれば、モティベーションは他者から与えられるものではなく、自分自身で主体的に創り出すものである、となるでしょうか。

20190920花田キャリア論(2)キャリア自律とモティベーション開発.004

通常、組織や職務に満足することは望ましいこととされます。しかし、何かに満足するということは、何かを変えることを避けることにも繋がるものです。満足することを目指すのではなく、不安や心配があっても、変化を恐れずに小さな一歩を踏み出してみること。結果的にそれが成長実感を得ることになるかもしれませんし、自分の枠を広げることになるのかもしれませんね。

モティベーションに影響を与えるものの一つにキャリア意識があります。私の修士論文でも扱った内容であり、書き始めると終わらないので(笑)、本書をまとめながらポイントだけ述べます。

20190920花田キャリア論(2)キャリア自律とモティベーション開発.006

キャリアがアップしたりダウンするという言い方をする場合、それはキャリアを外的キャリア、つまり報酬、地位、仕事上の役割、部下の数、責任の重さといった客観的なものと見做しています。かつての日本企業においては、年功序列・終身雇用といったしくみによって、先輩社員を見ていれば、自分自身がその年齢になればどのような外的キャリアを得られているかがわかり、キャリアのアップやダウンが明確でした。

しかし、環境変化と求められる職務要件が変化することにより予見性が低い現代においては、外的キャリアを重視することは多くの「普通の人」にとってはしんどいものです。なぜなら、逆算式に将来必要と客観的に思われた知識を習得してもそれが無駄に突然に無価値になることが当たり前になり、低成長時代においては「出世」の目印となる管理職のポストも増えないためです。

そこで内的キャリアと呼ばれる、仕事の意味や価値観といったものが重視される時代になりました。キャリアの捉え方に対する、現実的なパラダイム・シフトが起きたと捉えてみてはいかがでしょうか。

では内的キャリアを重視する現代のキャリア論に基づいて私たちはどのような心構えと行動を取れば良いのでしょうか。目の前の仕事の中で少しの工夫を凝らして試行錯誤してみたり、異なる視点から物事を捉えてみて従来のやり方に固執せず柔軟に対応してみる。こうした自分の幅を拡げて成長をデザインしたり、潜在的な多様な価値観に気づくことがストレッチングです。

20190920花田キャリア論(2)キャリア自律とモティベーション開発.008

主体的なキャリア開発、主体的なモティベーション開発の重要性をここまでまとめてきました。キャリアを主体的にすすめるこうしたありようをキャリア自律と表現し、これは「自分自身で当事者意識を持ち、自己責任でキャリアを開発していくしくみ」です。

特別なプロジェクトやアサインメントをあてにするのではなく、目の前の仕事やお客様に向き合う中で、仕事の幅を拡げて成長実感を得ること。また、従来のやり方にこだわらずに自分の中にある多様な価値観に気づけるように実践と内省を繰り返すこと。こうしたことを意識しながら働くことが、キャリア自律とモティベーション開発をすすめるヒントになりそうです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?