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研修転移の先行研究:Weber(2014)論文レビュー

大学院生としての生活は、授業を受けたり、課題に取り組むだけではありません。細々とではありますが、論文執筆に向けた準備もしております。前回の修士時代の反省を活かして、気持ちだけは『MAJOR』(満田拓也著)の茂野吾郎の心意気で、「与えられた宿題こなした程度で…」と意気込んでおります。笑

というわけで今回は先行研究についてです。研修転移を調べているため、Weber(2014)を扱います。
Weber, Emma. (2014) Turning learning into action. Training Journal, p14-17.

この論文の主題は研修後の行動変容にあります。そのために必要なものは何でしょうか。Weberは二つの要素をあげています。

Learning transfer needs to include very strong components of both reflection and accountability. (p15) (太字は筆者)

研修で学んだ内容を内省し、責任感を受講者に持ってもらうための鍵概念として、本論考のタイトルであるTurning Learning into Action (TLA)が重要であると筆者はしています。TLAの定義は以下の通りです。

TLA is an effective approach to implement the learning through a series of short conversations - usually conducted by phone. (p15)

電話はあくまで手段と捉えるべきでしょう。重要なのは、研修後にも研修での学びに関して短い会話を繰り返していくことです。地道に転移を促す働きかけが研修転移には求められるのです。

地道な働きかけのためには、(1)研修時のデザイン、(2)研修後の行動、(3)評価、という三点があげられます。

(1)研修時のデザイン

研修の中において、なぜ行動に移す必要があるのかについて、背景を説明しながら期待を伝えることが重要です。研修時に受講者自身が定める行動計画については、受講者は冷笑的であり本気で捉えないという厳しい現実を本論考では踏まえています。しかし、それでも行動変容への期待を研修の中で伝えきることが研修転移にとって重要だとされています。

(2)研修後の行動

研修後の三ヶ月の間に会話をすることが指摘されます。例えば電話を用いることが典型的なようです。その際には効果的な質問を行うことが有効であるため、半構造化インタビューを行うのが良いのかななどと感じました。

(3)評価

行動変容を観察し、評価する主体は、受講者とその上司です。言い方を変えれば、研修の企画者は、研修後も上司を巻き込む必要があります。これは、受講者の行動変容は、本人の努力だけではなく上司の支援も必要だからでしょう。

結びとして筆者が投げかける言葉には重みがあります。研修の企画者として重たく受け止めたいものですね。

I urge you to consider whether your current learning transfer solutions include a strong element of reflection and accountability. Are you truly facilitating behavioural change? (p17) (太字は筆者)  

【今週の一冊】
『論語』(金谷治訳注、岩波書店、1999年)

新しいことを学び始めたりキャリアを変えたりする際や、特に何もなくとも、年に一度は論語を読み解くようにしています。大学院生活を始める今回もゆっくりと読み進めました。以前読んだ際に線を引いていなかったところに心が動かされたり、考えさせられたりする、そんな贅沢な一冊です。


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