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組織社会化の古典といえばこの一択。:Van Maanen & Schein(1979)論文レビュー

学術研究のお作法の一つとして孫引き厳禁というものがあります。十数年前もよく耳にし、先日も授業の中で改めて聞きました。組織社会化を扱おうとする身として、以下の古典中の古典を改めて読まねばと思い、通読し直してみました。

Van Maanen, J. & Schein, E. H. (1979) . Toward a theory of organizational socialization. In B. M. Staw (Ed.), Research in organizational behavior (Vol. 1, pp.209-266). Greenwich, CT: JAI Press.

いやはや、きちんと読み直すと気づきはあるものです。先週のブログで取り上げた福本先生の博論で「Van Maanen & Scheinに立ち戻れ!」とガツンと言われた(と勝手に思っている)のですが、果たしてその通りでした。

本論文では、組織社会化戦術(Socialization Tactic)を六つの次元に分けて提示しています。

すなわち、①集合的(collective)ー個人的(individual)、②公式的(formal)ー非公式的(informal)、③規則的(sequential)ー不規則的(random)、④固定的(fixed)ー変動的(variable)、⑤連続的(serial)ー断続的(disjunctive)、⑥付与的(investiture)ー剥奪的(divestiture)、の六つです。

こうした六つの次元の組み合わせによる施策を新入社員に実施することで組織社会化を促すというわけです。六つの組み合わせのあり方によって新入社員への効果は異なります。具体的には、保守的役割志向(custodial orientation)変革的役割志向(innovative orientation)の二つです。

ここからが面白いのですが、実は、この二つの役割のみの言及に留めたのは、本論文を踏まえて実証研究を行なったJones (1986)です。

Jones, G. R. (1986). Socialization tactics, self-efficacy, and newcomers' adjustments to organizations. Academy of Management journal, 29(2), 262-279.

Van Maanen & Schein (1979)では、変革的役割志向には、与えられた役割の改善を促す内容革新(content innovation)と役割の再定義までを行う役割革新(role innovation)の二つのレベルに分かれることまでが指摘されているのです。

この違いは重要です。というのも六つの次元の組み合わせが以下のように全く異なるからであり、組織における新入社員への期待に応じて変える必要があるからです。

(1)保守的役割志向:
規則的・変動的・連続的・剥奪的
(2−1)変革的役割志向(内容革新):
集合的・公式的・不規則的・固定的・断続的
(2−2)変革的役割志向(役割革新):
個人的・非公式的・不規則的・断続的・付与的

上にまとめたように、同じ変革的役割志向であっても内容革新に影響を与える組織社会化戦術と役割革新を促すものは異なります。この点に対する理解がないと、変革的役割志向という言葉に引きづられて組織としてとる施策にミスリードが起きるかもしれません。もちろん、このVan Maanen & Scheinを批判的に捉えることも意味がありますが、無理解で良いということにはならないでしょう。

というわけで、本日の教訓は「孫引き、カッコ悪い。」ということで。笑

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