あらすじで読む『人材開発研究大全』〜第2章:採用面接〜
今回は今城志保氏による第2章「採用面接」です。前回に引き続き組織参入前の人財開発となります。
目次
(1)採用面接の機能
(2)面接研究でわかったこと
(3)人財開発部門に求められること
(1)採用面接の機能
本章では、先行研究レビューの中でGuion(1976)を用いて四つの機能が紹介されています。
①企業の広報活動の一環
採用面接においては、企業の規模や状況にも因りますが、合格よりも不合格の方が多いでしょう。となると、不合格を出さざるを得ない求職者に対して、自社へのイメージを担保し、場合によっては他の求職者に推奨してもらえるようにするかを工夫することが必要です。とりわけSNSの影響力が増していく現状においては、注意するに越したことはありません。
②応募者に関する情報収集
合否を出すためには事実ベースでの情報収集が必要です。もちろん、出自や思想信条といったNG質問は絶対に避けた上で、いかにコンプライアントにヒアリングするかということが問われるわけです。
③面接以外では評価の難しい人物特徴の評価
職務経歴書や履歴書でわかるものをわざわざ尋ねる必要はありませんし、適性検査でわかるものを問うことは無用です。会話のスムーズさや親しみやすさといった時間を共にすることで判断できるものを評価することが面接では求められます。
④合否の意思決定
面接における合否を他の面接官と共にすり合わせ、統一見解を作り、エージェント経由で間接的にフィードバックするか、直接フィードバックをすることが求められます。合否のいずれであっても、判断に至った理由も含めて納得的に伝えることが求められるでしょう。
(2)面接研究でわかったこと
サービス会社を対象に行った面接研究から、私たちが得られる示唆として三つの点が挙げられています。それぞれ見ていきましょう。
①構造化面接が有効である
構造化面接とは、将来の行動予測のために過去における類似場面での行動の様子を尋ねるものや、仮想の状況を設定してインタビューするものです。前者は、過去の状況・言動・結果を三点セットで尋ねることで今後の再現可能性を測るものが挙げられますし、後者は簡単なケーススタディが有効でしょう。
②組織との適合度合いを評価する
人そのものを評価し、特に新卒採用では幅広い異動を前提とする日本企業においては、職務というよりも組織に対する適合度合いを評価することが求められます。①で述べた構造化面接における質問項目の一つとして、自社・自部門への適合度合いを質問することが重要となります。
③対人評価の一般的な傾向を理解すること
外向性が高いほど面接評価が高くなる傾向と、情緒の不安定さが高くなるほど面接評価が低くなる傾向が見られたそうです。どちらもなんとなく理解できるものでしょう。一般的な傾向として、面接官としては認識をしておきたいものですね。
(3)人財開発部門に求められること
ポイントは二つです。第一に、何を採用面接で何を評価しているかについて人財開発部門は関心を持つべきでしょう。通常、新卒採用であれ中途採用であれ、HRBP(部門人事)か採用部門のいずれかが人事として面接対応を行います。その際に、何を評価しているのかについて興味と関心を持つ必要があります。
というのも、前回、第1章を扱った際に述べた通り、採用プロセスによって評価が創り込まれる側面があり、入社者はその評価を持って組織にエントリーします。個々のニーズに応えるためには、組織参入前に得られるこうした有益な情報を活用しない手はないでしょう。
第二に、人財開発部門は採用部門と連携して、面接トレーニングに関与するべきでしょう。人事の面接担当として現場の面接に同席したことがある方ならお分かりかと思いますが、現業部門で面接を担当する管理職は、必ずしも面接に長けていません。むしろ、適切でない質問や言動を取りかねず、ヒヤヒヤした経験をお持ちの方もいるでしょう。
基本的には、部下に対するMBOと同じ要領で状況・言動・結果の三点をヒアリングするだけですので管理職トレーニングとコンセプトは変わりません。MBOのトレーニングと同様に、人財開発部門は注力をする必要がありそうです。
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