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あらすじで読む『人材開発研究大全』〜第3章:企業の視点からみた「大学時代の経験の効果」〜

新卒採用での売り手市場は長く続き、少子化が継続する状況を考えれば、日本特有の新規学卒入社という形態は、その是非はともかく今後もしばらくは続くのではないでしょうか。

では、こうした状況に対して、学生時代における学生の学びと、入社後の社会人の学びとをどのように結びつければ良いのでしょうか。学生側にとっても、企業側にとっても切実なこの問いを、本章は扱っています。

目次
(1)大学時代の経験は入社後の行動にポジティヴな影響を与える
(2)採用部門に求められること
(3)人財開発部門に求められること

(1)大学時代の経験は入社後の行動にポジティヴな影響を与える

過去には、大学時代の経験は仕事には活きないとまで、企業の中では言われることがありました。中原先生の以前の論考では、たとえば、以下のような言葉が挙げられています。

「大学時代の勉強など、企業に入ってからは役に立たない。だから企業には白紙で入社してくればいい」(59頁)

本当に、大学時代の勉強は企業で役に立たないのでしょうか。本章には、そうした巷間に流布する内容を都市伝説とするような力強さがあります。一言で言えば、大学時代の経験は企業での行動にポジティヴな影響を与えるのです。

授業外コミュニティの有無参加型授業への参加の影響度の二つが、大学生活充実度を媒介して入社後のプロアクティヴ行動に影響を与えます。

(1−1)授業外コミュニティの有無

企業組織では、自身の部署の中には多様なメンバーがいます。世代も違えば、趣味嗜好も異なり、また文化や国籍の異なる社員も多くなっています。さらには部署を越えれば多様性はさらに増すでしょう。こうした多様な環境の中でプロアクティヴに行動するためには、大学の授業だけにとどまらないコミュニティへの関与がポジティヴに作用するというのはわかりやすいでしょう。

(1−2)参加型授業への参加の影響度

また、参加型の授業へ参画することが、企業における積極的な働き方に繋がるということもわかりやすいのではないでしょうか。反対のケースを考えれば、インプット型の授業を粛々と受けてそつなく単位を取るだけでは、変化の激しい労働環境で適応することが難しいと言えそうです。

(2)採用部門に求められること

まず企業は、内定者に関与しすぎないということが大事です。ここまでみてきた通り、学生時代だからこそできる経験が、入社後のプロアクティヴ行動に肯定的な影響を与えます。これは、学生の本分である学習が大事だから、という言い古された表現とは異なる説得力があるでしょう。したがって、リテンションのために内定者に関与しすぎることを自重することが企業には必要なのではないでしょうか。

では、関与する内容はどうなるのか。内定時代における内定者同士の交流によって多様な相互交渉を促すということが有効と考えます。内定者にも様々なバックグラウンドがありそこでの真剣な対話を促すことは、内定者自身にとってもリテンションという観点でも有効です。

(3)人財開発部門に求められること

こうしたアクションを主導するのは採用部門と思われますが、その際に人財開発部門も関与するべきでしょう。インタラクションを促進したり、内定者が集まる場でのワークショップを企画・実施することでも貢献できます。さらにはそうしたインタラクションの過程を把握しておくことで、入社以降の新卒社員研修とともに部署に引き継ぐ際の人財情報を蓄積することも可能なのではないでしょうか。


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