あらすじで読む『人材開発研究大全』〜第6章:エンゲージメントを高める大学授業〜
第6章では、大学における授業が学生のエンゲージメントにどのように影響し、就業後の言動にどのように影響を与えるかが明らかにされます。一言で言えば、大学で学びを深めることは、学生が社会人として働く上でポジティヴな影響を与えるのです。
(1)エンゲージメントとは
(2)学校時代に身についた学び習慣は生涯学習を活性化する
(3)エンゲージメントを高める授業から企業が学べること
(1)エンゲージメントとは
企業では、組織や職務に対してポジティヴに取り組むという意味でのエンゲージメントを調査する企業も増えてきました。このエンゲージメントは、企業だけで着目されているものではなく、学校組織においても注目されている概念です。第6章では、「学習への動機づけや、学習の楽しさ等のポジティブな感情を持ちながら、積極的に学習に参加すること」と定義されています。
学習に対してポジティヴに取り組むことは、学生の学習成果にも関連が認められます。実際、先行研究を基にしながら、学生調査におけるエンゲージメントが、学習成果にとって重要であることや、学習成果を予測し得ることが指摘されているのです。
では、学生時代に積極的に学んできた学生は、社会人になった後、どのように学習経験が活きているのでしょうか?第6章では以下のように端的にそのポジティヴな効果がまとめられています。
(2)学校時代に身についた学び習慣は生涯学習を活性化する
学生時代の学習は社会人にとって意味がない、と揶揄されたのは「都市伝説」なのかもしれません。環境変化が少なく、獲得した知識やスキルの陳腐化が遅かった時代においては、社会人になった後に徐々にOJTで先輩社員の背中を追って入れば事足りたのかもしれません。
しかし、予定調和性の高い時代においては客観的に望ましい正解などというものは存在せず、常に試行錯誤で学び続ける生涯学習が求められます。このような時代においては、学生時代において「学び習慣」と呼ばれるような学習し続ける習慣が付いていないと、社会人になってからの学びも深まらないのでしょう。
またこうした学び習慣は、歯を食いしばって学ぶというような苦しいものではなく、ポジティヴな感情を持ちながら学ぶというものです。したがって、苦労してワーカホリックになりながら働くという意味のものではなく、知的発見の楽しさを実感しながら、かつ生活とも一体になりながら充実したライフ・キャリアを実現するものが生涯学習と捉えるべきです。
(3)エンゲージメントを高める授業から企業が学べること
では、エンゲージメントを高める授業とはどのようなものでしょうか。そのポイントとして本章では、最適な学習の設定、学習教材の活用を伴う複雑なタスクの導入、活動の目標の明確化、教員によるモニタリング、フィードバックの実践、が挙げられています。
これらは、2010年代に入って流行してきたアクティブ・ラーニングを構成する要素と符合します。企業組織における集合研修においても、アクティブ・ラーニングの要素は参考になるのではないでしょうか。
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