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【オンライン読書会】『組織開発の探究』哲学的基盤(1)デューイ

5月9日(木)に行なわれた『組織開発の探究』のオンライン読書会に参加いただいたみなさま、どうもありがとうございました。私が担当した第3章について内容を振り返っていきます。リフレクションの大切さを主張するデューイを扱ったので自分自身もリフレクションをしようかと。笑

なお、当日は10分という制約の中で行なったため、本の内容の基礎的な部分を忠実に述べることに留めました。個人的には、オンライン読書会よりも、それに先んじて行なったプレ読書会の方が時間が長かったこともあり、飛躍覚悟の展開で濃密で濃厚な対話となり内容面では充実していたのでそちらを振り返ります。要は、オンライン読書会は要約版で、以下で振り返るプレ読書会はノーカット版と捉えてくださいませ。

第3章では組織開発を支える哲学的基盤がテーマです。ではなぜ哲学が組織開発のおおもとを成すと言えるのでしょうか。以下の図をご覧になってください。

実務で組織開発を扱うとどうしても第3層に位置付けられる独自手法に意識が集中し過ぎてしまうのではないでしょうか。私の場合、U理論を活用した活動を行なっていたため、オットー・シャーマーの一連の著作や『学習する組織』等をよく学んでいました。

独自の手法を学ぶことが誤りであるということを申し上げたいのではありません。実際、読みながら実践し、実践しながら読み直すことで学びを深めながら場に対して貢献できたという側面もありました。

しかし、独自手法だけではどうしてもHOWに偏りがちになるのではないでしょうか。なぜ、Aの場面でBという関与を場に対して行うのかという打ち手の選択が、感覚的あるいは経験則的になりすぎる嫌いがあったように反省しています。そこで組織開発の基盤として哲学が求められるというわけですね。

第3章ではデューイ、フッサール、フロイトが扱われています。三回に分けて振り返ることとし、今回はデューイに触れます。

デューイの思想の本質はプラグマティズムと言われます。これは、効果を出しているもの、すなわち問題解決ができるものこそが正しいものであり、真実であるとみなす思想です。したがって、対象が効果を出しているかを把握・観察・モニタリングしていくことが重要と考えます。つまり、対象の「観察」や「見える化」を通して、科学的手続きが重視されます。

こうした考え方の背景には、上図の下部にまとめている三つの人間観がありました。細かくは説明しませんが、端的に言えば、詰め込み教育という伝統的な人間観に基づく教育観を否定し、人間の環境に対する能動性や自主性を重んじていると言えるでしょう。

そこから発展して、私たちが環境に対して働きかけフィードバックを得る経験を重視することに繋がるのですが、ただ経験すればいいわけではないというのがデューイのすごいところです。

ただ経験するのではなく、経験自体を振り返ることで学びを深める、と言っているのですね。ビジネス書や成功者の回顧録では、修羅場経験やストレッチアサインメントが大事であると言いますが、それらは必要条件の一つにすぎません。むしろ、修羅場経験だけでは辛いだけになりかねません。

振り返りの方法を理解し、振り返りの時間を設けること、また振り返りを支援する存在がいること、これらによって経験を振り返ることで私たちは学べるのです。さらに言えば、経験を振り返りながら学ぶことは楽しいこととも言えるのではないでしょうか。

飛躍を恐れずに言えば、経験を振り返り、学びを他者に開きながら自身で深めていくというアプローチは、『ドラッカーと論語』のポイントの一つとも符合するように私には思えます。『論語』でいうところの温故知新です。洋の東西も異なり、また時代も大きく異なりますが、共通するところが面白いですね。

デューイの経験を振り返ることが学びに繋がるという点をビジネス実務に落とし込むことに寄与したのが、(1)コルブ(2)ショーンの二名であったとされています。

(1)ディヴィッド・コルブ

この経験学習サイクルはビジネス書でも有名でしょう。コルブは、この経験学習サイクルを提示することでデューイの思想を簡潔なモデルにしたと言えます。

経験学習サイクルにおいても、経験するだけでは学びに繋がらないとし、経験至上主義を斥けます。その上で、経験したものを内省的に観察し、抽象化し、他への応用的実践を繰り返すことが提唱されているわけです。

(2)ドナルド・ショーン

ショーンは、省察的実践(reflective practice)という概念を提示したことで有名です。普通の専門家と省察的実践家という二つの存在を対比的に見ながら省察的実践について解説します。

普通の専門家は、スペシャリストとしての自分の知識・スキルに確信をもち不確実な状況でも自分で解決するべきという信念を持っています。他方で省察的実践家は、自分自身の専門性を確信しながらも、自分だけが解決できる唯一な存在ではないと考えています。したがって、過去の自分の知見に囚われず、不確実な状況を新たな学びの機会にすることができます。

専門性はたしかに大事です。しかしながら、専門性を基盤に起きながらオープンな態度で省察することが、不確実な社会においてこそ求められるとショーンは私たちに問いかけています。

【まとめ】

デューイの哲学は、組織開発にどのような思想的基盤を提供したのでしょうか。本書では二つの点が指摘されています。

まず、学習や変化が生まれる起爆剤として経験の重要性が指摘されています。その上で、経験するだけに留めるのではなく、経験を振り返ることで学習や変化に繋げるのです。経験と振り返りということがデューイの思想のポイントと捉えておけば良いでしょう。


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