見出し画像

狭い世界から抜け出す勇気


こんにちは、産婦人科医の高尾美穂です。

今日も頂いたレターを一つご紹介させてください。 

こちらは質問ではなく、メッセージかと思います。

いつも拝聴させて頂いています。

色んな悩みに暖かい前向きになれる言葉を(高尾先生が)たくさん降らせてくれるので助けられています。

身近な人に相談すると、真剣に私に向けてくれる言葉が重たく感じることがあり、高尾先生の優しい声で、みんなに向けた言葉が、とても受け入れやすいです。

つらかったことを思い出し、泣きながら聞いていることもあります。

私にとって、心が揺れ動く大切な時間になっています。前に娘さんが男性恐怖症かもとのレターで、親には言えないことがあったのかもしれないとの内容が自分と重なりました。

子供で辛いということを人に聞いてもらおう、それで楽になったりするという想像もなく、40歳過ぎた今でも誰にも言えずにいます。

いま子供がその頃の年になり、こんな小さな時に私はいなくなりたいと思うほど悩んでいた。かわいそうだったなと自分で慰めています。

泣いているけど暖かい時間です。

高尾先生の言葉、たくさんリアルボイスに出会えて本当に良かったです。
感謝しています。

ということで以前に、お母さんの立場の方からお嬢さんがなかなか男性とお付き合いをする一歩が踏み出せない。

こういった状況ってどうなんだろうかというご相談を頂いた時に、人に言えない経験をされていることってあるのではないかというお話をさせていただいたことがありました。

これは産婦人科医として、たまにお話を聞かせていただく機会があったり、あとはは知り合いの方でも実際にそういった経験を今まで親にも友達にも誰にも言えずに過ごしてきたという方がいらっしゃっいました。

ですので、そういったことではないといいなと思いますが、もしかすると、今までに怖い経験をしたことがあるのかもしれないというようなことも、社会で考えていかなくてはいけないテーマではないかというお話をさせていただいたかと思います。


狭い世界


私達の社会において例えばですけれども、学校生活、会社勤めなどというような狭い世界。

特に小学校や中学校の頃というのは、自分のいる学校というものが自分の日常の全てだった、そう思う時期があるのではないかと思います。

そして例えばですが、そんな中でいじめにあう、なんとなく仲間はずれにされるなど。

もっとあってはならないことだとは思いますが、先生から嫌がらせをされる。

更にひどいことになると、先生から何らかの性的なアクションを起こされる、というような方が、少なからず(とは言えないかも知れませんが)おられる社会だと思います。

実際には、広い世界が世の中にあるにも関わらず、非常に閉ざされた閉鎖空間、この狭い世界の中で苦しんでおられる方が間違いなくいらっしゃいます。

その典型が、学校だと思います。

学校やクラスというものは、私たち大人から見ると、いわば非常に狭い世界で、その外には全く違う世界が広がっているということを当然のように知っているわけです。

しかしながら、その場にいる生徒さんにとっては、当たり前のように、クラスを好きに変わることはできず、転校することも無理、部活などは辞める選択肢もあるかもしれないけれども、辞めた後にはどんなことが待っているのかなどと考えてしまうとアクション起こせない。

つまり学校にいるような時代においては、その世界が全てなわけなんです。

後に振り返ってみると、すごく狭い世界にいたと思えても、その時の自分にとってはそれが全てだったというような経験は、幼い頃から学生時代においては、多くの方がこれに近い経験をされているのではないかなと思います。

こういった状況から、成人し、大人になって、次に所属するのは会社の職場だったりするわけです。

それ以外も例えば、ご近所付き合いであったり、ママ友、ジム活というようなコミュニティもありますよね。

自分が好き好んでそこにいる、好き好んでではなくそこにいる、色々な形でそこにいなくてはいけないというような人間関係に身を置いて、そこが自分にとっての世界の全てなんだというような感覚で生きなくてはいけないような状況が少なからずあると思います。

その一つ一つというのは、閉ざされた非常に狭い世界であるのは確かですが、一回そこに私たち自身が自分の身を置いてしまうと、自分のその目に見える状況がその時の全てであるように思えるのは間違いないことだと思います。

ほとんど全てのように思えてしまった時に、私たちがフォーカスしているその先、視野というものは、どんどん狭まってしまい、その辛い状況に自分の身を置いておかなくてはいけないという固定概念に犯されてしまったような状況が起こり得ると思います。

そんな狭い世界で例えばいじめ、仲間はずれ、無視、批判、傷つけられたりなど様々なことを経験することがあると思います。

そういった時、私たちってすごく傷つくわけです。

そういった経験は、もちろん無いことが望ましいわけですが、全くいつの時代も自分自身がそういった対象にならずに済むという人生の方がおそらく少ないのではないかと思います。

そう考えると、自分の生きる意味を見失ってしまったように感じる事も、もしかするとあるのではないかと思います。

そういったケースの一つが、今回くださったこのメッセージに含まれている、幼いころに男性から怖い経験をしたことで、何かしらその先のアクションに進むことができずにいたという自分。

その自分が、このレターをくださった方の場合は、お子さんが今同じような年齢になり、と書いてくださっていますので、きっと結婚して子供を産むという経験もできた方なんだろうなと想像すると、この方はきっとそのご自身が経験された辛い記憶というものを乗り越えて今に至っておられる方なんだろうと思います。


その世界が全てに思えてしまう


この狭い世界にいる時、私たちは、その世界が全てだと思い込みがちです。

でもそれは、私たちにとって閉ざされた目線の先しかない状況だからそのように見えるわけで、それは真実の姿ではないということです。

限定された非常に小さな狭い空間の中にいるという状況の外には、それ以外の可能性にあふれた世界があるというのは確かなことです。

しかし、この小さな狭い限られた空間の中で、もう身動きが取れなくなってしまっているような方もおられるかもしれません。

そういった方には、そういった世界からは逃げてしまっていいんだということを、ぜひ大きな声で伝えたいです。

学校を転校するとかはもちろん、部活を辞めることも後から考えてみれば全然できることだったと思うこともあると思います。

しかしその時の自分にとっては、ものすごく大きな決断で、きっと無理だと思ってしまうことではないかなと感じます。

けれども、そうではないと思います。

当然のように、その狭い空間の中にいると、逃げてしまうということの先にはもっともっと恐ろしいことが待っているのではないか、そのような気持ちになることだってあると思います。

でも、そんなことはありません。

そんなことはないと考えていいのではないかと。

例えば、学校に行かなくなる、部活に行かなくなるなどはあっても良いのではないかと思います。

行かなくなった先に、その先の未来すら、自分にはもうやって来ないのではないかというような気持ちになる事もあると思います。

でも広い世界に飛び出してみると、たった一人の自分というものが、いかに狭い空間の中に自分自身を閉じ込めようとしていたのか、そんなことに気がついたりするのではないかなと思います。

私自身は小学校も中学校も、そして企業や大学においても転校などをすることなく過ごしてこれました。

けれどもそれは、おそらく私自身があまり気にしないタイプだったということもありますし、気にしないように努めてきて今があるとも言えるのかもしれません。

幸せな人生だと今でも思っていますが、私みたいに過ごしていけるような人ばかりではないと思います。

いま自分がいるその狭い空間、小さな世界というものがもしかすると、理不尽な世界である可能性というものを、自分で否定しないでください。


その世界から飛び出してみる


ご自身の意思で広い世界に飛び出す、その狭い空間から逃げ出す、こういったことをぜひ自分なりの選択肢として持っておいていただけるといいなと思います。

恐怖心や、この先に対する不安などもあると思います。

しかし、当時は本当に狭い空間の中にいたということを後から気づける時が来るのではないかと思えるようなシーンが社会にはたくさんあるように感じます。

決してそれは逃げではありません。

自分なりの自分を守る方法です。

そしてその選択肢や選択が、これからの自分、その先の自分の人生にとってプラスの選択だったと思える日がきっと来るのではないかと考えています。

これは私がいま毎日幸せに過ごしているから思うことではありません。

今までの人生において自分で傷つかないように、もしくは気がつかないようにしながら過ごしてきたことはたくさんあります。

しかしそんな中でいま自分が非常に穏やかで平穏な毎日を過ごすことができているので、過ごせていない誰かに伝えたいなという気持ちで今日はこんなお話をさせていただきました。


まとめ


小さな世界、閉ざされた空間、こういったところから逃げる勇気、飛び出す自分なりの決断というものを必要としている人が世の中にいます。

もしご自身がもしかしたらそういう自分なのかもって思われる方は、是非その選択を考えてみてください。

そんな選択肢が世の中にはあるんだということを頭の片隅に置いておいてください。

そうするときっと、思い詰めてしまうことも、もしかすると自分が悪いのではないかと責めてしまうことも減るのではないかなと思ったりもします。

たくさんの本や、いろんな人の考え方に触れて、自分自身の想いだったり思考回路が、もしかすると狭い世界でぐるぐる回っているだけかもしれない、そんなことを振り返る機会にしていただけたら幸いです。



皆さんからの温かいサポートはすべて「保護ねこ活動の支援」に使わせて頂きます。 いつもご声援有難うございます。