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「柏もちのシーズン」気になるあんこの話

あなたは、“こしあん”派か、それとも、“つぶあん”派かと聞く調査をすると、関東では全国平均に比べて、“こしあん”派が多いとの結果が出ることが多い。確かにスーパーやコンビニで、柏もちや草団子、おはぎといったあんこ系の和菓子を買おうとすると、“こしあん”のものはたくさん売っているのに、“つぶあん”はそんなに置かれていないことが多い。だから、関東で“こしあん”が売れているのは事実なんだと思う。

でも、それは本当に関東では“こしあん”派が多数であるということの証明になるのだろうか?

「男はつらいよ」シリーズのモデルとなった柴又・高木屋の草団子のあんこは“つぶあん”だ。
西新井大師の参道にある名物団子屋2軒は、“つぶあん”と“こしあん”が選べるが、地元民が選ぶのは“つぶあん”だ。
また、人形町や浅草では人形焼も“つぶあん”のものが人気があるし、たい焼きなんて、“つぶあん”でないものなんて、コンビニスイーツで売っているようなものを除けば、ほとんど見かけることがない。

つまり、関東民、特に東京下町の住民は“つぶあん”が大好きなんだよね。

そこで思い浮かべるのが、ラーメンや焼き鳥、おでんの味の変遷だ。

今では関東でもラーメン屋といえば、とんこつが主流になっているが、昔はしょうゆが主流であり(いわゆる中華料理店のラーメンはしょうゆというよりも中華スープに近かったが)、それをみそが追い、塩が一部で好まれるという感じになっていた。

焼き鳥も最近では、コンビニやスーパーでも塩ばかりが売られているし、居酒屋でも塩を頼む人が多いが、本来は関東はたれの文化圏だった。

おでんもそうだ。コンビニや、練り物メーカーの紀文によって恣意的に操作されているとしか思えない毎年発表される鍋ランキングによって、透き通ったつゆ(スープ)が関東でも主流になってしまった。
また、具に関しても、ネイティブな関東民ははんぺんやちくわぶを好むが、そうでない人は全く興味を持たないことから、かつては、はんぺんやちくわぶがネイティブな関東民か否かをはかる“指数”とされていた。

つまり、どんなにオシャレな格好をしていても、はんぺんやちくわぶを食べなければ、その人は田舎者だということが一発でバレるし、本人が東京生まれを主張していても、はんぺんやちくわぶを食べなければ、それは、親が両方とも地方出身者だということまで明らかになってしまうということだった。
しかし、今では、はんぺんやちくわぶを扱わないコンビニや居酒屋も増えているので、若い世代では、親が東京生まれでも、はんぺんやちくわぶに興味を持たない人が増えているのではないかと思う。

こうした、ラーメンや焼き鳥、おでんなどと同じように、あんこも地方出身の関東居住者によって、本来は関東の味ではなかったものが、関東を代表する味に上書きされてしまったのではないかと思う。

ただ、あんこの上書きのされ方は、ラーメンや焼き鳥、おでんとは少々異なるような気もする。

ラーメンや焼き鳥、おでんの場合は、非関東圏の味が関東に持ち込まれて定着したケースだが、あんこに関していえば、関東にやってきた地方出身者が、地元でも食べられていた“つぶあん”を拒否して、“こしあん”を好むようになったのではないかと思う。

その理由は推測だが、豆嫌いにあるのではないかと思う。地方出身者って、シューマイにのっているグリーンピースを食べない人も目立つし、豆嫌いの人が多いように思える。
おそらく、子どもの頃に毎日のように豆類を食べさせられていたので、関東に出てきた際に、“もう食べたくない”と思うようになったのでは?
だから、豆の原型を残している“つぶあん”に拒否反応を示し、ペースト状にされて豆の形状が残っていない“こしあん”を好むようになったのではないだろうか?

都民はおよそ半分が東京生まれでないとされている。だから、ネイティブでない都民が“こしあん”を好めば、それは、都民のおよそ半分が“こしあん”を好んでいることになる。
そして、年月が経てば経つほど、その地方から持ち込まれた味が東京の味として定着していく。
だから、東京生まれでも若い世代にとっては、生まれた時からある地方から持ち込まれた味が東京の味だと感じるようになってしまう。

そうした要素が重なり、結果として都民・関東民の多くが“こしあん”好きという調査結果になってしまっているのではないだろうか。

おそらく、関東生まれ限定とか、少なくとも親子3代以上の関東民限定とかで、尚且つ、40代以上で調査すれば、“つぶあん”派がかなり多くなると思う。

つまり、今はあんこ文化の過渡期ってことなのかな。


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