劇団バルスキッチン第18回公演 『どぎまぎメモリアル』
民族ハッピー組というのは不思議なグループだ。
このグループの所属事務所社長が関西出身ということもあってか、露骨に集金イベントや集金グッズ販売をやる運営方針には、東京生まれ東京育ちで、しかも、宵越しの金を持たないなどど揶揄される下町の人間である自分にはついていけないところもある。
そうした下世話な活動をしているのに、歌っている楽曲はシティポップをアイドル歌謡にしたようなオシャレなサウンドだったりもする(まぁ、下世話な歌詞の曲も多いし、元々は演歌をやっていたけれど)。
そして、何よりも感心するのが、個々のメンバーが個性的だということだ(ルックスも自分好みのメンバーが多い)。
オリジナル・メンバーの遠矢るいは声優としても活動しているし、最年長の小泉里紗は野球女子として知られ、野球関連の取材の仕事なんかもしたりしている。
また、おそらく一番知られているメンバーであろう望月琉叶は、ソロでは演歌歌手やグラビアアイドルとしても活動していて、演歌歌手としては日本レコード大賞新人賞にも選ばれている(最優秀新人賞は惜しくも受賞を逃してしまったが)。
そして、本稿の主人公である馬渕恭子は女優として活躍の場を広げているようで、舞台初挑戦となった本公演のほか、年内公開予定とされている映画「不倫ウイルス」では主演を務めていたりもする(この映画、見たい!)。
民族ハッピー組というのは、それぞれのメンバーがジャンルの異なるソロ活動で注目されることによって、グループ自体の注目も増していくことを狙うという作戦をとっているのだろうか?
フィル・コリンズがポップ・スターとしてヒット曲を連発したり、マイク・ラザフォードがサイド・プロジェクト、マイク・アンド・ザ・メカニックスを成功させたりしたことによって、彼等の本業であるバンド、ジェネシスの人気が高まっていったみたいな感じなのかな?
そんな今後の女優としての活動が期待される馬渕きょん出演の本公演を見た。舞台でも映画でもいいが、彼女の演技をまた見てみたいというのが率直な感想だ。
ゲーム中に出てくるアイドル役、いわば、バーチャルな役なので、アニメキャラのようないつもとは違うビジュアルで登場するが、これがかなり可愛い(アニメキャラのようなカツラをとった場面では、いつもの顔を見ることができたけれど)。
そして、演じたキャラクター自体もかなりぶっ飛んでいるが、結構、自然に演じていて、いかにもアイドルが舞台に出てみましたという感じにはなっていない。アイドル出演舞台にありがちな台詞噛みまくりということもない。
今回はそんなに出番の多い役ではなかったが、今後はもう少し出番の多い役でも舞台に立って欲しいなと思った。
作品自体の印象についても語っておこう。
タイトルからも分かるし、作中でも言及されているが、元ネタは「ときめきメモリアル」だけれど、単に「ときメモ」のパロディをやるのではなく、恋愛シミュレーションゲームをプレイすることによって、主人公が失われた記憶を取り戻すというストーリーにしていて、なおかつ、どんでん返しとかもあったりして、なかなか面白いと思った。きちんと、メモリアルの話になっているしね。深夜アニメ向きの題材だと思う。
まぁ、作中の時系列が何かおかしくないかと感じるところもあったり、どうだ伏線回収したぞみたいにアピールするような強引な展開も感じないではないが。
あと、作中で喫煙シーンがあったり(火がついていたよね?電子かな?)、下ネタが多かったり(男優がズボンをおろすシーンもあるし)、コロナ禍なのに役者が舞台上で飲み物を実際に飲むシーンがあったりというのはどうかなとは思ったけれどね。この辺は感覚がアップデートされていない小劇団って感じがした。
でも、全体としては面白い話だったし、ウルッと来るところもあった。
再公演があるとして、その時に馬渕きょんの再登板があるなら、また見たいなと思った。
《追記》
東京生まれ東京育ちだが、この年にして初めて高島平という地域に足を踏み入れた。遥か昔の自殺の名所というマイナスイメージのまま、印象が更新されていなかったが、実際に今の町並みを見てみると、よくあるネイティブ都民の少ない新興住宅地って感じかな。
そして、このご時世なのにフリーマーケットが開かれていることにも驚いた。コロナ禍になって、フリーマーケットの風景を見たの初めてだ。
まぁ、ネイティブ都民でない新興住民にはコロナは風邪論者が多いからね。
そして、本公演の会場となったバルスタジオの立地にも驚いた。
こんなさびれた入口の地下にスタジオ(小劇場)があるなんて思いもしないよね。
まぁ、そんな立地条件の小屋だから自分みたいな座高の低い人間は2列目でも結構、見えない部分があったりするんだよね…。
マッサージとか行った時にマッサージ嬢に“脚が普通の男性より長い”って言われることが多いのって単なるリップサービスじゃないんだというのをこういうので実感する。
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