トップガン マーヴェリック
前作は1986年12月の日本初公開時に錦糸町楽天地の映画館で見ている。今はTOHOシネマズ錦糸町の別館(とはいえ、駅から近いため、話題作の上映はこちらでされることの方が多い)になってしまったが、当時は江東劇場・キンゲキ・本所映画館・リッツ劇場という個別の名称が与えられていた。
座席指定定員入れ替え制は導入されていなかったが、ボックスオフィス(チケット売場)が全スクリーン共通だったり、客の入り具合で上映スクリーンを変えたり(2フロアーにある4スクリーンのそれぞれのキャパが異なる)、1つのスクリーンで複数の番組を上映したり(当然、この時は入れ替えになる)、売店が同じフロアーにある複数スクリーンで共通になっていたりと、結構、その後のシネコンで当たり前になっているシステムを先駆けて導入していたんだよね。
ちなみに、この時は同学年男子と一緒に見に行ったが、彼はミリオタなので戦闘機目当て、自分は洋楽好きなのでサントラ目当てでの鑑賞となった。
そういえば、ふと思い出したが、この時って、もう一人同級生男子(こちらは本当に同じクラス)も同行していたんだけれど、ミリタリーにも洋楽にもそこまで興味がない彼は同じ楽天地内で上映されていた「恋する女たち」を見るとか言い出したんだよね。彼は相楽ハル子のファンだったからね。
そして、「恋する女たち」はアニメ映画は「タッチ2 さよならの贈り物」との2本立て上映だったので、待ち合わせ時間を調整するため、自分とミリオタは「トップガン」を2回見ることにした。
まぁ、この頃は座席指定定員入れ替え制なんて、一部大劇場で採用されていた指定席を除けばなかったから、1本立ての作品は基本は2回見るのがデフォルトだったけれどね。
さらにもう一つ思い出したが、トップガン上映スクリーンの隣のスクリーンでは同じくトム・クルーズ出演作である「ハスラー2 」が上映されていて、楽天地のこのフロアーはトム・クルーズに占拠されていたんだよね。
「トップガン」は全米公開が5月なのに日本公開は12月まで待たされたけれど、「ハスラー2 」は米国での公開からたった2ヵ月で、しかも、「トップガン」の日本公開の翌週に公開されていたんだよね。どちらもサントラが話題となり、映画絡みのブーム(前者はMA-1、後者はビリヤード)を生み出したという共通点があるのに、この違いはなんだったんだろうか…。
「ハスラー2 」は「ハスラー」の25年ぶりの続編だけれど、本作「トップガン マーヴェリック」は「トップガン」の36年ぶりの続編なんだよね…。
まぁ、何度も公開延期されたけれどね。最初は2019年公開予定だったわけだし(だから最初の延期はコロナは関係ない)。その後、コロナの影響で何度も延期されてしまい、結局、当初の公開予定より3年遅れだからね。
自分は「ハスラー」1作目の時は生まれていないけれど、「ハスラー」と「ハスラー2 」の間の25年の方が長く感じた人が多いんじゃないかな。
1960年代と80年代は全く違う世界だけれど、80年代と2020年代って、そんなには変わっていないよね。勿論、今はフィジカルの音楽ソフトがオワコンになっているとか、スマホという利器があるといった違いはあるけれどね。
「ハスラー2 」公開時のポール・ニューマンは61歳。本作公開時のトム・クルーズは59歳。年齢的にはそんなに変わらないのに、今のトムには大御所感ってないんだよね。
作品の内容だって、「ハスラー2 」はポール・ニューマンが若手のトム・クルーズに引き継ぐみたいな内容だったからね。
でも、本作ではトムは指導役ではあるけれど、現役感に溢れているしね。というか、結局、最後は若手と一緒に現場で活躍しているからね…。
やっぱり、90年代以降、世界的な傾向として人間の見た目も体力も若くなったよねって思う。
「トップガン」を劇場初公開時に見た印象は音楽は最高!戦闘機のバトルもカッコいい!でも、話はつまらないよねというものだった。
ところが、1989年にテレビ初放送となった時に見たら、かなり面白いんだよね!放送時にリアルタイムで見た上、翌日だったかその次だったかの日に録画したものをまた見てしまったくらいだしね。
初公開当時、音楽がガンガンに鳴り響き、まるでミュージック・ビデオのような編集がされていたことから、批評家はMTV映画と揶揄していたけれど、この時、自分はその批判は間違いではなく、テレビモニターで見るのに適した映画なんだなというのを実感した。高校生でもそう思ったくらいだった。
その後、テレビでの再放送時に部分的に見たりということはあったけれど、きちんと全編通して見たのは、2005年のリバイバル上映の時だった。
そして、この時も初公開時と同様に、音楽が鳴っているシーンと戦闘機のバトルは面白いけれど、全体としてはたるい映画だよねという印象を持ち、やはり、テレビ向きの作品なんだというのを改めて実感したほどだった。
それから全編を通して見たことは1度もないままに17年ほどの歳月が過ぎ、ついに続編を見る日がやって来た。
まぁ、特別新しいことをやっているわけでもないし、ぶっちゃけて言ってしまえば、いわゆる、オッサンホイホイと呼ばれるタイプの映画だ。
古いやり方を捨てられないオッサンが昔ながらのやり方で、若手を圧倒するという話はオッサンは大好きだしね。
基本的なストーリーだって前作とそんなに変わっていない。主人公の立ち位置が変わったくらいだ。といっても、最終的には現場で大活躍するのだから、ほとんど変わらないと言っていいのかもしれない。
そういえば、本作を見ていて、一体、主人公たちが戦っている敵って誰なんだと思った。
ウランとかならず者国家という言葉が出てきたから、イランとか北朝鮮あたりなのかな?でも、雪山も出てきたからイランではないのかな?でも、峡谷みたいな風景はイランどころか北朝鮮でもないしね?
風景とか軍事力とかを考えるとロシアが妥当なのか?公開が何度も延期されてしまい、たまたまロシアがウクライナに侵攻しているタイミングになったけれど、前作に続いてロシア(当時はソ連)が悪役なのかなと思ったりもした。
そして、確認のために改めて前作のストーリーをWikiなどで読んでみたところ、驚愕の事実が発覚した。
前作の敵もはっきりとどこの国とは明言されていなかったのだ。
冷戦真っ只中に公開され、作中でも冷戦下の緊張感が描かれていたから、てっきり、敵はソ連だと思い込んでいたが、そうではなかったということか。最後に見たのは17年ほど前だし、忘れてしまっていたということか。
余談だけれど、今回の作戦だがいつまで経っても決行まで3週間と言っていたのに、急に差し迫った話になっていたのはご都合主義もいいところだよね。
オッサンホイホイの話に戻ろう。
前作をリアルタイムで見ている人にとってたまらないポイントはいくつもあるが、現実世界でも大病を患っているヴァル・キルマーが、同様に大病を患っているアイスマン役で再登場しているのは感慨深いものがあるよね。
あと、前作ではビーチバレーのシーンがあったが(この場面を機にビーチバレーというスポーツを知った日本人がほとんどだと思う)、今回はビーチアメフトになっていたのには笑ってしまった。
そういう微妙な変化も面白い!
ただ、敵地に潜入して敵機を奪うという終盤の展開はほとんど、「ミッション:インポッシブル」だったよね。まぁ、オッサンホイホイ要素だけでなく、若い映画ファンもひきつけないといけないから、若者にも人気がある「ミッション:インポ」的な展開も必要だと判断したんだろうね。
それにしても、トム・クルーズって2000年代後半以降、アクション・スターになってしまったよね…。
2000年代前半までは賞レースを賑わせるような作品にも出ていたのにね。
オッサンホイホイ要素満載ではあるけれど、サントラに関しては物足りないと言わざるを得ないかなとは思った。
前作からは、ベルリン“愛は吐息のように”が全米ナンバー1ヒット(メンバーが受賞対象ではないがアカデミー歌曲賞も受賞)となったほか、ケニー・ロギンス“デンジャー・ゾーン”が最高位2位。もう1曲のケニー・ロギンス曲“真昼のゲーム”が60位。本編では小音量でチラッと使われただけのラヴァーボーイ“ヘヴン・イン・ユア・アイズ”ですら12位とヒット。
さらに、全米チャート入りしていない曲でもチープ・トリック“マイティ・ウイング”やマイアミ・サウンド・マシーン“ホット・サマー・ナイト”は日本でもシングルカットされた。
チープ・トリックは一時期低迷していたが、この“マイティ・ウイング”、そして、1987年にロビン・ザンダーのソロ曲として「オーバー・ザ・トップ」のサントラに提供された“イン・ディス・カントリー”で注目度が増し、1988年にはチープ・トリック初の(そして現時点では唯一の)全米ナンバー1ヒットとなった“永遠の愛の炎”が生まれている。
また、インスト曲“賛美の世界”はグラミー賞ポップ・インスト賞を受賞した。
それから、1964年にリリースされた“ふられた気持”が使われたことでライチャス・ブラザースが再評価された。
メンバーのビル・メドレーは1987年には「ダーティ・ダンシング」の主題歌でジェニファー・ウォーンズとのデュエット曲“タイム・オヴ・マイ・ライフ”(ofをオヴと表記するリリース当時の邦題はおかしいけれどね)が全米ナンバー1に、1988年には「ランボー3/怒りのアフガン」の主題歌“誓いのテーマ”がUKチャートでヒット。さらに、1990年にはライチャス・ブラザースとして1965年にリリースした“アンチェインド・メロディ”が「ゴースト/ニューヨークの幻」に使われてリバイバル・ヒットとなったのみならず、再録バージョンまでヒットしてしまった。
このほか、ティーナ・マリー“リード・ミー・オン”も人気曲となった。
本当、前作のサントラがミュージック・シーンに与えた影響は絶大だったと思う。日本でもサントラ盤は売れに売れたしね。
そう考えると、今回のサントラは物足りないなんだよね…。
何度も公開延期した影響で、音楽トレンドが旬でなくなり、使われる曲が変更になったりしたのだろうかと考えてしまうほど寂しいんだよね。
テーマ曲“賛美の世界”は“トップガン・アンセム”という原題カタカナ表記に変更された上で、今回も何度も使われている。
そして、かかっている時間は短いものの、“デンジャー・ゾーン”もカバーやリミックス、サンプリングではなく、ケニー・ロギンスのオリジナル・バージョンが使われている。
また、歌唱している俳優は前作とは異なるものの、今回もキャストが“火の玉ロック”をバーでピアノを弾きながら歌うシーンがある(これも流れている時間が短い)。
そのほか、オリジナル版のリアルタイム世代が喜びそうな、“レッツ・ダンス”や“ゲット・イット・オン”などの懐メロが何曲も使われている。
でも、人気アーティストによる本作オリジナルの新曲(スコアを除く)って、たったの2曲しかないんだよね。
スコアにもクレジットされているレディー・ガガによる80年代のパワー・バラッド風の“ホールド・マイ・バンド”と旬が過ぎたイメージがあるワンリパプリックの“アイ・エイント・ウォーリード”の2曲だけ。
日本で6曲がシングル・カットされた前作から比べるとショボいと思われても仕方ないよね。
まぁ、映画と音楽の融合というのは前作のメガホンをとったトニー・スコット監督の作風で、彼は既に他界していて、本作は別の監督が撮っているのだから、MTV映画っぽい作りにならないのは当然なんだけれどね。
とはいえ、全体的には想像以上に良かった。
まぁ、アナログ時代を知っている人間なら主人公に共感してしまうよね。
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