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バッドボーイズ RIDE OR DIE

本作は2022年3月のアカデミー賞授賞式で起きた“ビンタ騒動”以降初めて日本で劇場公開されるウィル・スミス主演映画だ。もっとも、この間に出演したのは米国では配信メインで限定的に劇場公開され、日本では配信オンリーだった「自由への道」しかなかったが…。
同作を除くと2年半ぶりの新作ということになるが、騒動直後、米国では彼へのバッシングが相次いでいたことを考えると、そんなに干されてはいなかったなというのを実感する。騒動発生当時のバッシングが行き過ぎだとハリウッド関係者も思ったのだろうか?

日本では、騒動発生時、ウィル・スミスの妻、ジェイダ・ピンケット・スミスの髪型をバカにしたクリス・ロックの方が悪いという考えの者が多かった。
圧倒的多数は、喧嘩を売ってきたクリス・ロックが原因なのは大前提だけれど暴力を振るってしまったウィル・スミスもよろしくないという喧嘩両成敗的な考えだったのでは?
また、ウィル・スミスに批判的な人も彼とジェイダが別居状態なのに、何を今更、妻を守るアピールしてんだよ?という感情が背景にあるだけで、授賞式の最中に起こった騒動だけに関して言えばクリス・ロックの方が悪いという考えが中心だ。

でも、欧米ではそうではない。相手に問題があっても先に暴力を振るった方が100%悪いというのが欧米流の考え方だ。
だから、わざと相手に暴れさせて、その何倍にもして復讐するという手段が戦争の際に使われる。真珠湾攻撃、米同時多発テロ、最近ではウクライナ侵攻やガザ情勢もそうだ。

どう考えても、片方だけが正義ではない。というか両方とも問題がある。でも、片方に先にひと暴れさせて、それをきっかけに、お前らの方が先に手を出したからこちらは正当防衛だと主張して、何倍もの仕返しをするのが欧米流だ。

ウィル・スミスはその戦略にはめられてしまったとしか言えないと思う。



そして、本作はウィル・スミス叩きに加担したコンプライアンスにうるさいポリコレ勢が酷評しそうなほど、オールド・テイスト、厳密に言うと本シリーズの1作目が公開され、ウィル・スミスが映画俳優として認知された1990年代の映画のような雰囲気を味わえる作品となっていた。

刑事が金を払う前に店の商品を食べてしまうとか、刑事の身内に犯罪者がいるのに普通に刑事が活動できているとか、名誉白人である証拠として黒人がカントリーの大御所リーバ・マッキンタイアの楽曲を歌うなんて、ここ10年くらいの米国映画では許されない展開だろう。
まぁ、ウィル・スミスはビンタ騒動の影響でアカデミー賞授賞式から出禁になっている=しばらくは彼がアカデミー賞にノミネートされることはないし、おそらくは演技部門だけでなく主演映画自体もアカデミー賞に無視されるだろうから、賞レースを意識してポリコレに気を使った映画を作る必要がないというのが開き直れた理由だろうと思う。

娯楽映画なんて、こんなもんでいいんだよね。久々に復活した「あぶない刑事」がバブル世代向けのものなら、この「バッドボーイズ」は団塊ジュニア・氷河期世代向けってところだろうか(日本での話だけれどね)。

ところで、ブラック・アイド・ピーズによる主題歌をやたらと聞き覚えのある感じだなと思いながら聞いていたが、後で検索して分かった。ジェネシス“トゥナイト、トゥナイト、トゥナイト”をサンプリングしていたのか…。

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