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秋のペドロ・アルモドバル祭り

2021年度のアカデミー賞で2部門にノミネートされていたペドロ・アルモドバル監督の最新作「パラレル・マザーズ」がやっと日本公開された。本国スペインでの公開から1年2ヵ月も待たされてしまった。

まぁ、長編としては前作に当たる「ペイン・アンド・グローリー」も2019年度アカデミー賞で2部門にノミネートされながら、日本公開は1年3ヵ月も待たされたんだけれどね。

そして、アルモドバル監督初の英語作品である短編「ヒューマン・ボイス」も同時公開されることになった。こちらは、本国での公開から実に2年1ヵ月も待たされてしまった。

ちなみに、同時上映ではなく同時公開というのはやり方がせこいよねって思う。いくら、入場料金は通常より安くしているとしても、2年前の作品なんだから、せめて、同じ日に同じ劇場で見た人はさらに割引料金にしてもいいのではないかと思う。

というか、1999年度のアカデミー外国語映画賞(現在の国際長編映画賞)を受賞した「オール・アバウト・マイ・マザー」ですら、日本公開は本国の丸1年後だったのだから、ミニシアター系作品のヒットが相次いでいた時代だろうと、洋画を見る人が減ってしまった現在だろうと、アルモドバル監督作品を見たがる映画ファンというのは日本には少ないってことなんだろうね。

やっぱり、ゲイのイメージが強いから、アルモドバル好き=LGBTQみたいに思われてしまうせいなのかな?

そう思われるのがイヤだから見に行かない人が多い。だから、日本では売れないと思われ、なかなか日本公開が決まらないみたいな感じなのかな?

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ということで、まずは短編「ヒューマン・ボイス」を鑑賞。

主演のティルダ・スウィントンもアルモドバル監督同様、変わった人という印象が強いので、このコラボレーションはどんな感じなんだろうと思って鑑賞に臨んだが、想像以上にぶっ飛んだ作品だった。

ジャン・コクトーの戯曲を翻案したこの作品は、主人公が女優で彼女の住む家がまるで舞台のセットのようになっているというメタ構造にもなっていて、まるで、ティルダ・スウィントンの一人芝居の舞台を見ているようだ(他にもちょこっと映るキャラはいるが)。というか、主人公と電話で会話する元恋人については顔が見えないどころか、声も聞こえないので、そうした作りは完全に演劇的だと思う。

ティルダ・スウィントンのような演技派でなおかつ、個性的な女優だからこそ成立した企画だと思う。

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そして、続けて、長編最新作「パラレル・マザーズ」を鑑賞。

ペネロペ・クルス演じるシングルマザーになる主人公がフォトグラファー、彼女と関係を深める若きシングルマザーの母親が女優と、こちらもエンタメ・クリエイティブ界を描いた作品となっている。

というか、これまでにも「ペイン・アンド・グローリー」や「抱擁のかけら」という映画監督の話や、ポルノ女優がヒロインの「アタメ」とか、メイクアップアーティストの話の「キカ」など、エンタメやアートに関係する映画を多く作っている。

アルモドバル監督は自ら脚本も書いているけれど、自作に自分の分身を登場させるタイプなんだろうね。

そして、シングルマザーが抱える問題を描いたり、LGBTQ的な描写があるので、最近のポリコレ至上主義の欧米エンタメ賞で評価されるのは納得なんだけれど、LGBTQ描写はほとんど日本のアニメの百合に近いような気もする。

誰が見ても主人公に気があるのに、恋愛対象にされていない女性雇用主とか、元カレと再接近する主人公に嫉妬する若いシングルマザーの描かれ方なんて百合だよね。

そして、何よりも感心したのがストーリー展開だ。多少、強引なところやご都合主義なところもあるので、優れた脚本とは言えないが、スペイン内戦の被害者の遺骨収集と、2人のシングルマザーが巻き込まれた新生児取り違え“事件”、この2つの要素がDNA鑑定で身元を明らかにするという共通点で並列して描かれていて、普通は全く関係ないと思われる2つのテーマが融合していることに感心してしまった。

それにしてもアルモドバル監督はペネロペ・クルスを起用するのが好きだよね。ゲスト出演も含めると今回が7度目のコラボだからね。
本作には出ていないが、アントニオ・バンデラスとペネロペは監督の分身みたいな存在なんだろうね。勝手な推測だけれど、監督の男の部分をアントニオ・バンデラス、女の部分をペネロペ・クルスに投影しているみたいな感じなのかな?

それにしても、ペネロペは可愛いな。
48歳には見えない…。作中では40歳間近という設定だったけれど、アラフォーにも見えない。アラサーでも通じる気がするな。欧米人でここまで若く見える人は珍しいよね。

《追記》
そういえば、キャノンボール・アダレイの“枯葉”が使われていて驚いた。

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