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機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-
東宝は本当、当たると思ったコンテンツを他社から奪い取るのが好きだ。特にアニメに関してはその傾向が顕著だ。
スタジオジブリ、細田守、新海誠、超平和バスターズ、山田尚子。いずれもブレイクした時点では他社の配給作品だった。ジブリなんかは一度、東映から奪ったのに当たらないからとすぐに手放しておきながら、その後、東映配給でブレイクすると、また奪い返したりしている。
その東宝の“強奪”歴に今度はガンダムが加わることになった。エンドロールを見ると松竹の名前も入っていることから、途中まではこれまでのように松竹の配給で公開しようと計画していたが、東宝が好条件を出したので鞍替えしたのではないかと思ってしまう…。
東宝がガンダムを“強奪”した理由は明白だ。長らく、ガンダム映画はファーストガンダムの総集編映画完結編である1982年公開の「めぐりあい宇宙」を上回るヒット作がなかったが、2021年公開の「閃光のハサウェイ」がこれにせまる興収22億円、2022年公開の「ククルス・ドアンの島」が11億円と大健闘。2024年公開の「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」は53億円を記録し、遂にガンダム映画最大のヒット作となってしまった。というか、「めぐりあい宇宙」の倍以上の成績をあげてしまった。
そりゃ、東宝としてはガンダム映画を配給したいと思うよね。
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ちなみに、本作はテレビシリーズとして放送予定の作品を編集して先行上映する、いわゆるイベント上映作品だが、ファーストガンダム以降しばらく続いたテレビ朝日系列でも、ここ最近のTBS系列でもなく、日テレで放送されるとのことだ。
コナンやルパン、アンパンマンなど長寿作品を除くと一時期はテレビアニメに弱い、特に深夜アニメに弱いイメージがあった日テレだが、最近は「葬送のフリーレン」や「薬屋のひとりごと」といった人気作を生み出しているので、その流れで、こちらも東宝同様に人気コンテンツの“強奪”にかかったというところなのだろうか。
この先行上映作品は大きくわけて2つのパートにわかれている。前半が「Beginning」パートだが、こちらには事前に告知されていたキャラたちは出てこない。出てくるのはシャアをはじめとするファーストガンダムのキャラたちだ。「ジークアクス」でなく、別のガンダム作品の上映スクリーンに入ってしまったのではと思ってしまった。
しかも、展開されているストーリーの様子が何かおかしい。どうやら、ファーストガンダムのパラレルワールド的な話のようだ。
本作は庵野秀明率いるスタジオカラーが制作を手掛けている。庵野は自作「エヴァンゲリオン」で何度もパラレルワールド的な展開を行ったのみならず、「ゴジラ」や「ウルトラマン」、「仮面ライダー」といった特撮作品をリメイクやリブートとは異なる視点で語る、いわゆる「シン」シリーズを発表している。
そうした「エヴァ」や「シン」シリーズでやったことを「ガンダム」に持ち込んだのが本作といったところだろうか。
でも、シャアは出てくるがアムロは出てこない。そして、シャアがガンダムに乗っている。しかも、赤いガンダムに。
そのシャアと赤いガンダムが行方不明になったところで前半は終わり、後半の本題である「ジークアクス」のパートに突入する。
赤いガンダムを巡る話らしい。だから、その前振りとして赤いガンダムに乗り、ガンダムと一緒に行方不明になったシャアの話を長々と描いたのだろう。
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本作と同じく、女性が主人公で、青春ものの要素があり、ガンダムを使った競技が行われている世界を舞台にした作品と言えば「水星の魔女」が記憶に新しく、本作の設定を聞いた時はまた、同じことをやっているよと思ってしまった。
同作も第1話の前に世界観を説明するために主人公の親世代を描いたPROLOGUEが作られていたので、それと同じような構造という感じだろうか。
まぁ、混乱するよね…。
でも、「ガンダム」っぽくない音楽、特に歌モノの使い方は良かった。「ハサウェイ」や「水星の魔女」、「FREEDOM」といった最近の「ガンダム」にハマっている若い世代には受け入れられるのではないかと思う。
まぁ、日本語の文字がガンガン出てきて、東京っぽい雰囲気の街並みが映し出されるのは、何か違うアニメを見ているようだったが…。
ところで、エンドロール後にテレビ放送決定の特報でも流れるのかと思っていたが、そんなものはなかった。一体、いつテレビ版は放送されるのだろうか?
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