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『円空 ―旅して、彫って、祈って―』鑑賞レポート@大阪あべのハルカス美術館

大阪あべのハルカス美術館の展覧会「円空 ―旅して、彫って、祈って―」が今月2日に始まった。関西での大規模な展覧会は20年ぶりで、巡回なしの単独開催である。貴重な機会を逃すわけにいかない。
 
円空は、江戸時代前期に美濃国(岐阜県)に生まれた。
幼いころに出家し、修験僧として旅をしながら仏像を彫り続け、生涯に「12万体彫る」と誓いを立てたという。5000体以上の“円空仏”が現存している。
 
荒々しく豪快に彫られているイメージがある“円空仏”だが、この展覧会では、仏像を彫り始めた32歳ぐらいのころから、最晩年の作品までの変化を辿ることができる。

第一章に展示されていたのは最初期の先品。
晩年の作風と驚くほど異なり、非常に丁寧に彫られている。
表面は滑らかに整えられていて如来の服(大衣・納衣)のひだは、細かい線で表現。この線がまるで流れるように繊細に彫られていて、
本当に薄い衣を着ているように見える。円空が彫刻家として高度な技術を持っていたことが分かる。
 
40代のころからゴツゴツした作風に変化して、さらに自然の木の形を生かした彫刻に変化する。これ以降は、題材などに変化はあるが“作風”の点では一貫している。

両面宿儺座像は写真撮影OK

この展覧会のメインビジュアルになっているのが「両面宿儺座像」だ。
漫画『呪術廻戦』がお好きな方にとってはお馴染みの「両面宿儺」は異形の悪人で、一般的には背中合わせに二つの顔を持つ姿で表現される。
しかし、円空の両面宿儺は、正面の武人の肩にもう一人の武人が乗りかかるような、まるでおんぶをしているような珍しい姿で彫られている。
さらに『日本書紀』で持っていた弓を、土地を切り開くためのオノに持ち換えた。悪人・妖怪として描かれた両面宿儺だが、地元の飛騨では悪竜を退治した英雄として語り継がれていると言う。
炎の光背を背負っていることからも分かるように、円空は『日本書紀』とは違う解釈で、神として両面宿儺を刻もうとしたのだろう。

もう1点「良いなぁ!」と思った仏像が「大黒天立像」。
大黒天、大国主命が好きだ…ということもあるのだが、まん丸いお顔の表情がとても良い。なんとも優しそうな笑顔で大黒様のイメージ通りのお顔だ。しばし、大黒天の前から動くことができなかった。
 
旅して、彫って、人々の幸せのために祈って…
優れた仏教者であるのと同時に“アーティスト”でもあった円空。

災害が続き、暗いニュースが溢れている今こそ円空の思いを感じ、
祈りを捧げたい。あべのハルカス美術館の展覧会『円空 ―旅して、彫って、祈って―』は4月7日まで開催されている。


藤川貴央(ふじかわ たかお)
大阪市旭区出身。ラジオ大阪(AM1314/FM91.9)アナウンサー。防災士。
福島テレビ在籍中に東日本大震災が発生。津波や原発事故の被災地など1000以上の現場を取材し災害報道に携わる。 2013年ラジオ大阪へ移籍し、現在はニュースワイド番組『藤川貴央のニュースでござる』(月曜~金曜 朝6時半~8時)と音楽番組『藤川貴央のDMZ』(金曜 午後9時~10時)を担当。



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