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【文楽×現代音楽】KYOTOPHONIE Borderless Music Festival 鑑賞レポート

「KYOTOPHONIE Borderless Music Festival」。
ワールドミュージック、現代音楽、クラシック、電子音楽にストリートミュージックなど様々なジャンルや国境を超え、選りすぐりのアーティストによるライブ演奏を楽しめる国際的な音楽フェスティバルだ。
6日(土)ピアニストの中野公揮さんと、人形浄瑠璃文楽座の人形遣い吉田簑紫郎さんとのコラボレーション『Out of Hands』がロームシアター京都で上演された。

現代音楽の最前線で活躍する中野公揮さん。
フランスのパリを拠点に活動し、特にダンサーとのコラボレーションで独特の舞台空間を生み出す。
吉田簑紫郎さんは「シン・文楽」のパイオニア。伝統芸能の枠を飛び出そうと様々なチャレンジを続けている。

真っ暗な舞台中央にはピアノが1台置かれている。
ろうそくを思わせるおぼろげな灯りに照らされながら、中野さんの演奏が静かに始まると、そこへ登場するのは吉田簑紫郎さんが操る小野小町だ。
演目は『関寺小町』。
絶世の美女と称され、和歌の才で名を馳せた小野小町は100歳の老女になっていた。零落したわが身を憂いながら、若き日の恋心や栄華に思いを馳せ、静かに踊り始める。
スポットライトに照らされた小野小町は顔の角度によって陰影が際立ち、より表情が豊かに見える。「過去、現在、未来」を彷徨う小野小町の魂。巧みに『鷺娘』と融合されていて、若き日の小野小町が表現されている。
「Out of Hands 手からこぼれ落ちる 」
最後に見出されるのは希望なのか闇なのか?
小野小町の魂はどこへ向かっていくのか?というストーリー。

ピアノの演奏と人形の動きだけで伝わってくる。
海外客も多かった客席からは終演後「ブラボー」の声援と惜しみない拍手が贈られた。
ピアニストを探していた簑紫郎さんが中野さんのピアノ演奏を聴き、その音楽性に惚れ込んで依頼。特に惹かれたのは音と音の「間」だ。
文楽の人形は三味線の音の「間」、太夫の語りの「間」を流れるように動く。中野さんの演奏を聴きながら、人形の動きを自然にイメージすることができたと言う。
しかし、普段は太夫の語りをきっかけに人形を動かすので、音楽だけで人形を操るのは想像以上に難しかったと苦労の準備を振り返った。
 
人形、三味線、太夫、三業一体の「文楽」だが、音楽と人形だけでも成立する。それが三味線でなくても良いというのも面白い。
また、三味線と語りだけの「素浄瑠璃」には、登場人物を想像する楽しさや、太夫と三味線の技を堪能する贅沢さがある。

今回鑑賞した中野公揮さんと吉田簑紫郎さんのコラボレーション、機会があれば是非、再演してほしい。そして世界中の人に観てもらいたいと思うステージだった。
 

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