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新型コロナウイルス闘病記①「これが普通の風邪と同じだと!?」

8月14日(日)の未明、私は39.3℃の高熱に襲われた。そして、とにかく喉が痛い。喉の内側をやけどしたような痛みである。扁桃腺はパンパンに腫れ上がり、水や唾液でさえ飲み込むことができない。
誕生日を目前に控え、34歳最大の試練の幕が上がろうとしていている。

夜が明けて、大阪府が無料配布している医療用抗原定性検査 キットを使い、自分で調べることにした。
なが~い綿棒(スワブ)を鼻の穴に2cmほど入れて、ぐりぐり5回まわし、さらに5秒入れっぱなしにする。この綿棒を特殊な液に浸して検体抽出液を作り、カード状のチェッカーに数滴垂らす。

元気な時なら「化学の実験みたいで実におもしろい」と感じたかもしれないが、とてもそんな余裕はない。

結果は「陰性」。陽性なら「T」のところにも線が出る。
ふぅ。ひとまず良かった。すると扁桃炎だろうか。
日曜日の早朝、しかもお盆である。大変申し訳ないと思いながら、発熱している旨を上司(制作報道部長)に報告した。

すると上司は「とにかくあすと明後日、番組の代役を立てよう。それから、もう1回調べてみ?検査キットいくつかあるから、持って行くよ。」と、お盆休み&日曜日にも関わらず、自宅まで別のキットを届けてくれた。
もし、上司のこの行動が無かったとしたら、命に係わる事態に陥っていたかもしれない。

大阪府のサイトで紹介されている医療機関に片っ端から電話を入れても、全て「通話中」。
そりゃそうだ。かねてより医療体制のひっ迫が伝えられている上、お盆の日曜日である。こっちだってハナっから発熱外来で診てもらえると思っちゃいない。しかし、体調は悪化の一途を辿っているし、PCR検査も受けたい。
「新型コロナの検査はできないけど、それで良ければ…」と言って下さった休日診療所と、症状が出ている人専用のPCR検査を何とか別々に予約することができた。

休日診療所の先生は喉の奥をライトで照らしながら「うわぁ!これは痛いねー。血なまぐさいねー。」
「血なまぐさい」とか言うかねえ!?
解熱薬と、喉の炎症を抑える薬などを貰い、その足でPCR検査場へ。
壁に「ほかほかご飯の上に載っている梅干し」や「レモンの輪切り」の巨大な写真が掲げられている。「こんなもんで唾液出るかねえ?」とぼんやり眺めていたら、あっと言う間に試験管の底から2cmまで唾液が溜まった。反射ってすごい。
検査結果は翌日の午後10時以降だと言う。

そこまで待てない。
PCR検査の結果「陽性」でも丸一日以上、「陰性」ならお盆期間中ずっと医療から取り残されてしまうことになる。
たぶん死んでまう。
そこで、上司が届けてくれた検査キット(こちらも、もちろん厚生労働省が認可した医療用の抗原定性検査キット)を使い、夜にもう一度調べてみた。すると…

「T」のところにも線が出とるーー!「陽性」である。
「えらいこっちゃーー!」一方でほっとしている自分もいた。
これで大阪府の「若年軽症者オンライン診療スキーム」を利用して、オンラインではあるが医師の診察を受けることができる。翌朝の受付再開後に、保険証と検査結果の画像をオンライン診療ステーションへ送ると、医師が連絡をくれて薬も処方してもらえるのだ。

とにかくこの一夜を乗り切ろう。
39℃台の高熱で、寒気がして8月の熱帯夜にも関わらず毛布にくるまっていないと耐えられない。一方、解熱剤が効いている間は大量の汗をかく。
喉の激痛のため、水分補給はどうしてもおろそかになる。日本酒を飲むように水をチビチビチビチビ舐めるように飲む。とにかく「ごっくん」をしようものなら「ギャー」である。
ほとんど眠れない一夜が明けると、手足と顔が痙攣し、熱中症のような症状が出ていた。保冷剤を脇にはさみ、スポーツドリンクをやっとの思いで口に運ぶ。
「もしかして死ぬんちゃうんか」と思っていたその時、枕元の電話が鳴った。オンライン診療ステーションの医師だった。

「検査結果画像を確認しました。…(簡単な問診があって)…あなたね、れっきとした陽性です。薬を自宅に送ります。あと、よくある質問のリンクを貼っておきますからね。」
薬の到着まで2日~3日かかるということだが、医療と繋がることができた安心感は大きかった。医師からアドバイスを受けて熱中症の症状も和らいだ。そして、厚生労働省や大阪市保健所からもショートメッセージが矢継ぎ早に届く。
もしも上司が新たな検査キットを届けてくれなかったら、この日の深夜になってようやく判明するPCR検査の結果(こちらももちろん陽性だった)を待たなければならないところだった。
それまで体力と気力が持ちこたえたとは到底思えない。

かくして私はこの日、全国13万8,613人、大阪府9,541人の新型コロナウイルス陽性者の1人としてカウントされることとなった。
8月15日、終戦の日。
私と新型コロたんとの戦いは始まったばかりである。





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