「腎不全」との付き合い方─13歳の柴犬の場合
前回は、我が家の柴犬どんべえの持病の一つである「緑内障」について書きましたが、今回は「腎不全」について書いていきたいと思います。
noteを始めてからずっと病気の話ばかりで恐縮ですが、もうすぐ14歳になるシニア犬なので、まずはどんな健康状態なのかをお知らせしておいた方が良いかと思いまして。お付き合いいただけましたら幸いです。
● 「腎不全」の発覚
どんべえの「腎不全」が発覚したのは1年前。2019年の4月でした。毎年の健康診断で血液検査を行なっているのですが、その時は「尿素窒素(BUN)」の数値が23.2 、「クレアチニン(Cre)」の数値が1.6と出ました。イヌの正常値はそれぞれ「9.2 - 29.2」、「0.40 - 1.4」とされているので、尿素窒素の数値が若干上昇気味、クレアチニンの数値は正常値より高いということになります。
【尿素、尿素窒素】
尿素とは、蛋白質が体の中で分解されたあとの最終産物。尿素窒素とは、尿素の中に含まれる窒素分。尿素は肝臓でアンモニアから合成され、血液によって腎臓に運ばれ、糸球体で濾過されて尿中に排泄される。
─『QLife』より引用
腎機能が悪くなると尿素を尿中へ排泄できなくなり、血液中の尿素窒素の値が上昇します。
【クレアチニン】
尿素窒素と同様、体内の蛋白質が分解されたあとの最終産物。筋肉内でクレアチンという物質からつくられて血液中に出現し、腎臓から尿中へ排泄される。
─『QLife』より引用
腎臓の排泄能力の指標として、尿素窒素の数値より有効で、クレアチニンの上昇は、腎機能が低下した状態をよりよく反映しています。また、筋肉量の多い犬もクレアチニンが上昇する傾向にあるとのこと。
かかりつけの獣医(「A病院」)からの勧めで再検査をしたところ、翌週の検査結果は「BUN」が27.5、「Cre」が1.9と更に上がっていました。これは腎不全の疑いが濃厚で、「すぐに食事制限をした方がいい」と言われ、その日のうちに病院から「腎臓サポート用の餌」をもらって帰ってきました。
● 「腎不全」とは
ここで「腎不全」とは何か、自分の確認のためにも『もっともくわしいイヌの病気百科(改訂新版)』から該当事項を引いておきます。
【腎不全とは】
何らかの原因で、血液をろ過して尿をつくるネフロンが少しずつ壊れていき、腎臓がはたらかなくなります。慢性の腎不全ははっきりした症状が出るまでに時間がかかり、症状が出たときには治療が難しいことがあります。
─『もっともくわしいイヌの病気百科(改訂新版)』より引用
〈症状〉
慢性腎不全では、病気の進行時期によって症状が大きく異なります。食欲はおおむね不振となりますが、症状が落ち着いている時と悪化している時ではその程度に差があります。一般には食欲が落ちてやせることの方が多いようです。
尿の量は、全身の臓器に異常が見られる尿毒症などを起こさないかぎりは減少しません。むしろ一時的に比重の低いうすい尿がたくさん出ることがあります。ただしイヌの病気には多尿のものが多く、尿の量が多くても腎不全とは限りません。
(中略)
嘔吐や下痢などの消化器症状がつねにあるわけではありませんが、寝起き時に嘔吐が見られたり、あまりはげしくない下痢がつづいて見られることがあります。貧血はほぼ100パーセントに見られます。
慢性腎不全でも、最終的には腎臓の機能をほとんど失い、高窒素血症を起こし、尿毒症になります。
─『もっともくわしいイヌの病気百科(改訂新版)』より引用
とまあ、これを読むだけでも厄介な病気であることは分かります。治療法は「皮下輸液」、「心臓の薬の投与」、「食事療法」、「たんぱく同化ホルモンの投与」などがありますが、腎不全になった腎臓が再び元に戻ることはないそうです。
残された腎臓をこれ以上悪くさせないように配慮しなくてはなりません。それには、イヌの体にストレスが加わらないように注意することが大切です。
─『もっともくわしいイヌの病気百科(改訂新版)』より引用
以前のnote『「手作り犬ごはん」のすすめ』でも紹介しましたが、どんべえには生後7ヶ月から欠かさず「手作りごはん」を与えています。これまでずっと健康診断の結果も良好で、年齢の割には毛艶も良く、食欲旺盛、以前よりは体力がなくなったものの、相変わらず散歩が大好きな状態をキープしているのは、ひとえに「手作りごはん」のおかげだと思っています。
なので、ここにきていきなり「腎臓サポート用の餌」を与えることには、正直かなりの抵抗がありました。「A病院」の獣医から「すぐに食事を変えなきゃダメです」「そのままにしておいたら苦しんで死にますよ?」などと脅されたのもあって(もちろん「脅した」つもりは獣医になかったとは思いますが)、1週間くらいは「腎臓サポート用の餌」を与えていたのですが、「本当にこれでいいのだろうか?」という気持ちがだんだん強くなってきました。
● 「病気の犬」として扱うか、現状維持か
まず当時のどんべえに、症状らしきものがほとんど見られなかったんですよね。相変わらず食欲旺盛だし、嘔吐や下痢もほとんどない。貧血を起こしている様子も全くない。それなのに、彼がもっとも楽しみにしている食事タイムを奪ってまで、いきなり「病気の犬」扱いしていいのだろうかという疑問が拭いきれなかった。
悩んだ末、実家が獣医をされている友人に相談することに。「BUN」の値と「Cre」の値を知らせると、友人はすぐご実家に連絡してくれて、「うちの母も『私だったらいつも通りかな!』って言っていましたよ」と知らせてくれました。
もちろん、先の本によれば「慢性の腎不全ははっきりした症状が出るまでに時間がかかり、症状が出たときには治療が難しい」とのことだから、そうなる前に「食事制限」などした方が良いとする「A病院」の所見は至極当然です。とはいえ、まだ若い犬ならともかく13歳を迎えるどんべえの、数少ない楽しみをこの先ずっと奪ってしまうのは、それ自体がストレスになってしまうのではないかという思いもありました。
それで、とりあえず「手作りごはん」はそのままに、食後の牛乳とヨーグルト(大好物なので、毎晩ほんの少量与えていました)を控えることに。それで様子を見ながら、2ヶ月後に今度は別の病院(「B病院」)で血液検査&診断をしてもらうことにしました。そこでも数値はさほど変わらず、外部機関の検査にも出してもらった結果、やはり「初期の腎不全」と診断されました。
ただ食事に関してB病院からは、A病院とは全く違う所見をもらいました。
「手作りならそのままの方が良いでしょう。水分摂取が大切で、手作りならたくさん摂れるので問題ないです。たんぱく質の量だけ気をつけながらキープしてください。肝臓の数値は良好なので、脂肪分を摂ってエネルギー量が変わらないようにしてあげるといいと思います」とのこと。「Creの値に比べてBUNの値がさほど悪くないのは、手作りご飯のおかげですね。きっと予防にもなっているのだと思います」とまで言ってもらいました。
● セカンド・オピニオンの大切さ
「A病院」と「B病院」どちらの所見を信じるか。これはもう、飼い主の飼育方針によるのかなと思います。「腎不全」が発覚した時点で徹底的に治療する選択肢も、寿命だしなるべくストレスがかからないよう現状キープする選択肢も、どちらも間違っているわけじゃない。ただ、セカンド・オピニオンを用意して、こちらの飼育方針と相性の良い意見を選択していくことは、飼い主のストレスをかなり軽減してくれます。それを今回のことで痛感しました。
ちなみにB病院からは、「3ヶ月から6ヶ月に一度、数値を見て症状が進むようであれば、内服薬の選択もあるかもしれません」と言われ、その後は定期的に血液検査をしてきました。その経過は以下の通りです。
〈2019年〉
4月22日 BUN 23.2、Cre 1.6
4月27日 BUN 27.5、 Cre 1.9
9月22日 BUN 18.8、 Cre 2.46
10月19日 BUN 28.9、Cre 2.48
〈2020年〉
2月9日 BUN 31.5、 Cre 3.07
5月8日 BUN 39.4、Cre 3.47
今年2月9日の検査結果を受けて、1日1回2種類のサプリ(「ペットチニック」と「プロネフラ」)をそれぞれ1.0mlずつ投与し現在に至ります。「脂肪分を摂るように」とのことだったので、「手作りごはん」には毎回「アマニ油」を垂らし、白米はタンパク質量の低い「LGCソフト」に替えました。
● 数値だけでは判断できない
数値だけ見ると、昨年発覚した時と比較してかなり上昇しているのが分かると思います。でも、本人は今も至って元気なんですよね……。相変わらず食欲旺盛、大便の状態も良いし、毎日散歩を楽しみにしています。だいぶ暑くなってきたので、あまり長くは歩けないけど、それでも一度外に出ると、なかなか家に帰りたがりません。もちろん、もうすぐ14歳なので、若い頃と比べたらだいぶ落ち着いてはいますが、それにしても数値で見る腎臓の様子と、普段目にしている元気などんべえの様子のギャップがあまりにも大きくて、なんだか不気味なくらいです。
いつか、いきなりガクッと調子が悪くなったり、食欲不振になったりするのでしょうか。それを考えると恐怖でしかないのですが、でも今、彼がこんなに元気でいるなら、元気でいられるうちに、好きなことをさせてあげたいです。
きっと、人によっては我が家の飼育方針をよく思わないかも知れません。実際のところ「A病院」の獣医からは、「私の犬だったら今すぐ皮下輸液しますけどね!」と、5月の血液検査の際に言われてしまいました(その言い方も、正直どうかと思っていますが)。でも、やっぱり数値だけでは判断しきれない部分ってあると思うんです。14年間一緒に過ごしてきた上で、彼にとって今どうしてあげるのが「幸せ」なのか、それは飼い主が全責任を背負った上で判断すべきことではないかと。そして、今はっきりと言えるのは、昨年4月に「腎不全」と分かった時点で、食事療法に切り替えるなど「病気の犬扱い」してこなくて、本当に良かったということです。
以上、どんべえの「腎不全」が発覚してから現在までの経緯です。
今後も何かあったらここに記していきたいと思います。現在「腎不全」を抱えた犬と暮らしている方の、少しでもお役に立てたら嬉しいです。何かご質問などあればお気軽にお問い合わせください。
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