どんべえメモリアル日記④ 『理想と現実のギャップ 〜どんべえとの信頼を築くためにできること〜』
我が家にどんべえを迎え、夢にまで見た「愛犬との生活」がスタート。しかしながら、「理想と現実のギャップ」に苛まれる日々はすぐにやってきた。
とにかく最初の1年は、どんべえとの信頼関係をどうやって築き上げたらいいのか戸惑うことばかり。食餌の量や与え方、「しつけ」の方法などわからないことだらけで、時間があれば本屋や図書館へ行き「犬の飼育法」的な本を手当たり次第に読み漁り、「ああでもない、こうでもない」と試行錯誤を繰り返していた。
当時はミニチュアダックスフントやトイプードル、ミニチュアシュナウザーなど小型の洋犬が大人気で、日本犬は今ほどポピュラーではなかった。どの本を見ても、「柴犬は頑固で気難しい」「他の犬と仲良くできない」「番犬としては最適」みたいな決まり文句が踊っており、躾に失敗したらこいつも手がつけられなくなるんじゃないか? と正直不安な気持ちもあった(すまん、どんべえ)。
飼育本によれば、「犬には舐められたらアカン」と。「上下関係を重んじる生き物だから、『飼い主が一番偉い』ということを折に触れ教え込まなければならない」と。その方法として、「食事は犬より先にするべし」「じゃれてきたら、『力では敵わないんだぞ?』と時おり知らしめるべし」「常に犬より目線を上にするため、ソファの上に乗せ飼い主が床に座るようなことをしてはダメ」みたいな、今思えば「そんなのどーでもいいだろ……」ということまで我々は忠実に実行していた。
もちろん、この社会で人間と共生していくために、犬には覚えてもらわなければならないことが色々ある。例えば散歩中は必ずリードをつけること。何か非常事態が起きた時、ストレスなく行動を共にすることができるよう、「スワレ」「マテ」「コイ」のコマンドを徹底させること。無駄吠えをさせないようにしつけること。集合住宅に住んでいる場合は特に、「世の中には犬嫌いな人も大勢いる」を前提とした振る舞いが大切だ。
だけどどんべえに対し、「人間様の方が偉いんだぞ」などとことさらアピールする必要なんてあったのかな? と今になって思う。別に人間より先にフードをあげたっていいし、目線が人間より犬が上にになっていたって全然構わない。そんなこと気にしている暇があったら、もっともっと対等に遊んでやるべきだ。そう思うようになったのは、のちに石川利昭さんの著書『飼育マニュアルに吠えろ! 2000匹が教えてくれた犬の真実』に出会ったのは大きい。
ことほど左様に子犬の頃はどんべえに対し「スパルタ教育」をしていたおかげで、最初のうち彼はこちらを全く信頼していなかった。抱っこしても暴れまくって逃げようとしたり(おかげでどんべえを床に落としてしまい、一瞬マズルがペロンと捲れ上がってしまって死ぬほど焦った。すぐ元通りになったけど)、ワクチンと狂犬病予防の注射も終わり、いよいよ「散歩デビュー」をさせようとリードを付け外に出たら、めちゃくちゃ嫌がって石のように動かなくなったり。
ギャン泣きして散歩を嫌がるどんべえと、近所の公園で四苦八苦していたら高校生の集団から「見てみ、あの犬。飼い主のこと大っ嫌いじゃん! ギャハハハ」と大笑いされたこともある。あの時は本当に恥ずかしく、穴があったら入りたいほどいたたまれない気持ちになったな……。
また、生後7ヶ月以内に去勢手術をしようと病院に一晩預けたときなど、術後に迎えに行ったら全く目を合わせてくれずフードにも口をつけず、完全な「拗ねモード」に入ってしまったこともあった。しかも、ちょうどその頃だったと思うのだが、散歩中にどんべえが他の飼い犬に突然噛みつかれ、出血するほどの怪我をしてしまったのだ。こちらの油断が招いたもの。もはやこの頃の我々は、どんべえからの支持率など地に落ちたに等しかった。
こんなはずじゃなかったのにな。一体どうしたら、どんべえからの信頼を取り戻せるだろう。あいつと密なコミュニケーションをする方法は何かないだろうか。
そう考えあぐねた末に思いついたのが、「手作りご飯」だった。「これから毎日、どんべえには手作りのご飯をあげよう」と誓ったあのときから17年、トライ&エラーを繰り返しながらも毎日「手作りご飯」与え続けたことで、どんべえとの絆は間違いなく深まっていった。
さて、近況報告です。
今日は、どんべえの月命日。深大寺の共同墓地に埋葬されたどんべえに会いに行ってきました。向こうでたくさんの動物たちと楽しく暮らしているといいな。
そういえば最近、無印良品で見かけたペペロミアホープの小さな鉢入れをお迎えしました。
引っ越す前は、多摩川沿いで摘んできた野花や、駅前の花屋で購入した花を一輪挿しに飾るなどしていたのですが、新居に移ってからは野花を摘みづらくなったのもあり、「何か生きているものを祭壇に置きたいな〜)と思っていた時に、我が家の仲間に加わったペペロミアホープ。丸っこくて肉厚な葉っぱが、なんだかどんべえぽくて、どんべえの命が宿っているような気がするし、部屋の中が少し賑やかになった気がします。
僕は観葉植物を枯らす天才なんだけど、今回は細心の注意と細やかな愛情でしっかり育てるよ、どんべえ。
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