松井 孝憲│越境学習×社会インパクト投資

グロービス経営大学院 准教授 / KIBOW社会投資ファンド プリンシパル。社会起業家…

松井 孝憲│越境学習×社会インパクト投資

グロービス経営大学院 准教授 / KIBOW社会投資ファンド プリンシパル。社会起業家向けのキャピタリストやっています(社会インパクト投資)。同時に、異業種メンバーのチームワーク研究者やってます(越境学習)。発信は個人の意見

最近の記事

日テレの”インパクト投資”について(建設的に)思うこと

(トップ画像は日本テレビWebサイトより) 先日、日テレさんが「インパクト投資」の2号案件として、株式会社GOKKOへの投資を発表しました。 この投資活動、僕も少し前より伺ってはいたのですが、それに対して明確なスタンスを出せていませんでした。というのも、「これがインパクト投資なのか?」について色々思うことがあり、モニョモニョしていたのです。 そんな中、今回のリリース直後に、桂大介さんやtalikiの中村タカさんがいち早く意見を出されていました。 (桂さんとは直接の面識

    • 社交性のない陰キャでもIVSで(それなりに)立ち回る工夫

      今回、初めて、日本最大級のスタートアップカンファレンスIVS2024へ参加してきました。 正直に言うと、直前まで「あー・・やだ・・こんなところ自分に向いていない・・」と心の中で、鬱々とつぶやいていました。 だって、怖かったんだもん。 毎年SNSの華やかな写真見て、ここに入れる気がしなかったんだもん。 ぶっちゃけ、僕には社交性がありません。 自社内のランチ交流会とかですら、上手くなじめません。 でも、スタートアップとかベンチャーに携わろうとするなら、「IVSに参加したこ

      • チームで困難を乗り越える理論と実践方法

        筑波大学の池田めぐみさんより新著『チームレジリエンス』をご恵送いただきました。本書の内容は自分の研究テーマにとっても近く、正座して拝読いたしました! 本書は、チームを脅かす様々な種類の困難を乗り越えるための考え方として「チームレジリエンス」に注目し、その実践方法を提案します。 具体的には、 ①     課題を定めて対処する ②     困難から学ぶ ③     被害を最小化する というステップをどのように実践していくのか、理論を基にしながら分かり易く解説してくれます。 特

        • IPOの「今」、「リアル」に関する学びのメモ

          先日参加したココナラスキルパートナーズ(CSP)のイベント「経営者が知っておきたいIPOのリアル」が、ものすっっごい勉強になりました。本当に心から「参加してよかった・・」と思えたし、社会インパクト投資を行うKIBOWファンドにも、ものすごい示唆深いものだったので、記憶が鮮明なうちにその所感メモをみなさんにもシェアしたいなと思います。社会起業家の方々や社会インパクト投資に関わる人の参考になれば幸いです。 ※セッションの具体的な内容はオフレコ(この内容メモは1万字超え)なので、自

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          事例研究(Gioiaメソッド)に関するマニアックな振り返りメモ

          先日、静岡県立大学 国保先生の主宰する「”職場の経営学” 研究会~職場に活かす質的研究:Gioiaメソッドの可能性 ~」に登壇させていただきました。当日は、70人以上の方々(自分の尊敬する先生方もたくさんいる!)にお越しいただき、活発な議論から僕もめっちゃ勉強になりました(脳みそが熱かった・・)。 その濃密な議論を少し振り返って、「あぁ、登壇時にここは伝えきれなかった・・」という反省や、「あ、そういうことか!」と思う発見がたくさんあったので、忘れないうちに補足&メモをしてお

          事例研究(Gioiaメソッド)に関するマニアックな振り返りメモ

          ジョブ・クラフティング:仕事を自分で「創り直す」ことから見える可能性

          東京都立大学の高尾先生、藤澤さんより『ジョブ・クラフティング――仕事の自律的再創造に向けた理論的・実践的アプローチ』をご恵送いただきました。 本書は、今、経営学において、理論的的にも実務的にも注目の高まっている「ジョブ・クラフティング」について、日本の研究者が集って執筆した書籍です。こちら、実務の方々にも示唆深い内容だと思いましたので、本書の読了後の感想をシェアします。 本書のテーマ、ジョブ・クラフティング(JC)とは、一言でいえば、個人が仕事の内容・やり方・意味づけを見

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          「幸せなキャリア」を科学的に考える:経済学・心理学・哲学のアプローチから

          これまで人事・組織コンサル、人材開発(越境学習・パラレルキャリア)とヒト系の分野に携わってきたからか、キャリアについてご相談を頂くことがしばしばあります。 また自分自身、人に比べて転職が多い経歴のため「キャリア」について考えるタイミングも多い気がしています。 そんな中、色々な学問分野を勉強するに「あ、これキャリアを考えるのに参考なる」と感じた議論にいくつか出会ったので、自分の整理も含めてまとめてみました。 取り上げるのは、経済学・心理学・哲学など、キャリアそのものを直接

          「幸せなキャリア」を科学的に考える:経済学・心理学・哲学のアプローチから

          「週休3日制」が組織に及ぼす効果とは:科学的な実証研究から分かったこと

          1. 話題の「週休3日制」で語られていないこと社員の「週休3日制」。最近いくつかの企業が先進的に取り組み始めて注目を集めています。 その背景として、ここ数年間、企業人事の領域で“働き方改革”のテーマが上る中、新しい施策として話題になっているようです。 ただ個人的には、この成り行きは、話題先行となってしまっている感が否めませんでした。 というのも、これまで「週休3日制」については、いくつかの先進事例は発信されるものの「実際、週休3日制にどんな意味があるのか」については"体

          「週休3日制」が組織に及ぼす効果とは:科学的な実証研究から分かったこと

          社会起業では、通常のビジネス以上に「丁寧な組織運営」が成功のカギになる

          先日、(社)KIBOW × BLP-Networ(※)共催のセッションがあり、自分もそこに同席させていただきました。 ※BLP-Network(BLPN):NPOや社会起業家を法務面で支援する弁護士のプロボノ団体 そのセッション中、BLPN代表の瀧口徹さんらとお話した「社会起業家の危機管理」の内容がとても勉強になりました。 少し実務的な内容ですが、社会起業に関心ある方へシェアしたいと思います。 1. 通常のビジネスと社会起業、世間の見方のちがい「年間売上5,000万~

          社会起業では、通常のビジネス以上に「丁寧な組織運営」が成功のカギになる

          社会起業家を輩出できるのは、どんな世の中か?:10万人のデータからの実証

          NPOやソーシャルベンチャーの経営を考える時、やはり外せないのは「社会起業家のリーダーシップ」です(自分のライフワークでもあります) 最近、この「リーダーシップ」について感じるのは、リーダーシップは個人単体では成立しないということです。 言い換えると、リーダーシップは、本人の資質だけでなく周囲の人々や社会との関係で生まれるモノ、と考えるようになりました。 だとすると、社会起業家のリーダーシップを考える時、彼らを取り巻く社会環境にも目を向けるべきでは?と考えられます。

          社会起業家を輩出できるのは、どんな世の中か?:10万人のデータからの実証

          リーダーシップ研究と実務の比較:「個人の資質」にリーダーシップを矮小化しないために

          最近、ちょっとリーダーシップ研究について調べて、「これ、実務にも重要だけど、結構見落としがちだな」というポイントがありました。 せっかくの研究知見が実務で活かされないのはもったいないので、「リーダーシップ研究の変遷」と「実務である状況」のギャップ、そして「両者のギャップを埋めるには」について、考えた点をまとめておきたいと思います。 1. リーダーシップ研究の変遷トレンドまず、リーダーシップ研究についてですが、これまでのリーダーシップ研究は、大別すると以下のような流れで進展

          リーダーシップ研究と実務の比較:「個人の資質」にリーダーシップを矮小化しないために

          ソーシャルイノベーションにおける知識マネジメントの役割

          これまで社会人×社会起業家の協働プロジェクトを推進する際に意識していたのは、できるだけ現場に近づいて実務を重視することでした。 ただ最近、これまでの実務を振り返ってよりブラッシュアップできるよう、理論も勉強しなきゃと感じています。 そんな中、「社会課題解決のためのイノベーションを進めるのに、組織のナレッジマネジメントがどんな役割を果たすのか」について理論的なフレームワークを提示した研究と出会いました。 「Knowledge-Based Social Innovation

          ソーシャルイノベーションにおける知識マネジメントの役割

          NPO・企業・行政のリーダーシップ比較と、今後のNPOの可能性

          少し前、「トライセクター・リーダー」に関する研究紹介をFacebookに投稿したところ、色々な方より反響・コメントいただきました(ありがとうございます<(_ _)>) なので、そこで出た議論を踏まえて、もう少し詳しく、研究内容や実務的な所感についてシェアしたいと思います。 とってもマニアックな内容ですが、セクターを越えた協働やリーダーシップについて興味ある方への参考になれば! 1.「トライセクター・リーダー」って?そもそも「トライセクター・リーダー」というコトバは、20

          NPO・企業・行政のリーダーシップ比較と、今後のNPOの可能性

          NPO経営に効くリーダーシップスタイルとは?

          「オーセンティックリーダーシップ」。昨年に『なぜ、あなたがリーダーなのか』の新版が出て注目されてました。この"価値観や信念に基づいたリーダーシップ"が、どうやらNPOやソーシャルベンチャー等のコミュニティ重視の組織運営に有効そうだと報告する調査に出会いました!ソーシャルとリーダーシップ論の結びつきが面白かったので内容シェアします! 「Managing People in Social Entrepreneurship Ventures」という研究ペーパー。ここでは146の団

          NPO経営に効くリーダーシップスタイルとは?

          企業・NPO・行政で、リーダーシップの形態は変わるのか?

          「トライセクター・リーダー」。1-2年前にHR/人事領域で頻繁に登場したコトバです。「ビジネス・ソーシャル・パブリックの3つをまたいでリーダーシップを発揮する人材が重要」というコンセプト、実は今まであんまりピンときてませんでした。というのも「3つのセクターでリーダーシップがどう違うの?」がイマイチ腹落ちしなかったのです。この視点がないまま「トライセクター」というコトバが一人歩きしてしまったので、最近あんまり言われなくなったのかなぁと感じていたんですが、先日この論点に関する2つ

          企業・NPO・行政で、リーダーシップの形態は変わるのか?

          「事例研究」には未来を創る力がある

          初めて、ビジネス書を読んで涙を流しました...『ブラックスワンの経営学:通説をくつがえした世界最優秀ケーススタディ』。経営学会の最優秀論文を基に「事例研究」の活かし方を示した本書、自分が悶々と抱え続けていた問題意識に、ストレートに回答を示してくれました! 近年、ビジネスでも「エビデンスベースド」の考え方が広がる中、統計分析や定量調査が注目を集め、調査/研究の主流となっています。僕も統計分析は大好きだし、定量調査の大切さは理解しているつもりです。 それでも、大学院で歴史研究

          「事例研究」には未来を創る力がある