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「みんな違ってみんないい」を紹介します。

わたしと小鳥と鈴と 〜金子みすず〜

わたしが両手をひろげても、 お空はちっとも飛べないが、 飛べる小鳥はわたしのように、 地面(じべた)をはやくは走れない。

わたしがからだをゆすっても、 きれいな音は出ないけど、 あの鳴る鈴はわたしのように、 たくさんなうたは知らないよ。
鈴と、小鳥と、それからわたし、 みんなちがって、みんないい。

この詩は、大正時代末期から昭和時代初期にかけて活躍した金子みすずさんの詩です。金子みすずさんは、享年26歳。

みんな違って、みんないい その先へ

「わたしと小鳥と鈴と」――金子みすずのこの詩を初めて読んだとき、胸の奥がじんわりと温かくなった。「人と比べなくてもいい」というやさしいメッセージは、私たちをふっと肩の力が抜けるような安堵へと導いてくれる。

でも、私は思う。ただ「みんな違って、みんないい」と言うだけで、本当に人は分かり合えるのだろうか?

違いを認めることは大切だ。誰もがそれぞれの色を持ち、それぞれのリズムで生きている。空を舞う小鳥、鈴の澄んだ音、そして地上を駆ける私たち。そのどれもが美しい。しかし、「違う」ということだけに目を向けていると、やがては互いの距離が遠ざかってしまう気がする。

人と人が本当に寄り添うためには、「違い」だけでなく「共通点」を見つけることも、同じくらい大切なのではないだろうか。

たとえば、家族のあり方ひとつをとっても、「家で食べよう」という人と、「外で食べよう」という人がいる。単なる好みの違いに見えるけれど、もしかしたら、そのどちらにも「大切な人と過ごす時間を愛したい」という共通の想いがあるかもしれない。違う形をしているからこそ気づかないだけで、実は同じ願いがそこに宿っている。

私たちはそれぞれ違う世界を生きている。でも、その世界のどこかで、同じ夕焼けを見上げている日がある。遠い場所にいる友人と、ふとした瞬間に同じ言葉を思い出すことがある。孤独だと感じる夜、誰かもまた静かにため息をついているかもしれない。そう思うと、不思議と心が温かくなる。

違いを受け入れ、尊重しながらも、同じ空の下にいるということを忘れない。そこに気づいたとき、「みんな違って、みんないい」は、「みんな違うけれど、つながっている」へと変わる。

人は違う。それでも、つながれる。

この世界に、私たちの心の糸を結ぶ、小さな共通点を見つけ続けていきたい。



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