見出し画像

というわけで会社をつくりましたよ

 すっかり更新の間が空いてしまった・・3月末で勤めていた出版社を辞めて、その後は好きなことだけやろうかな、まずは釣りだけ一生懸命やろう!なんてうそぶいておりましたが、おかげさまでなんだか6月くらいから急激に忙しくなってしまいまして、楽しみにしていた(自分がね)noteの更新もすっかり滞ってしまいました。ここに書くきっかけをつくってくれたと勝手に思っている岸田奈美さんがきっちり毎週更新しているのがいかに偉業か!と思い知ったのでありました。

雑誌不況であえぐ出版業界に未来はあるのか

 じつは春から会社設立の準備をすすめておりました。とはいっても従業員2名の小さな会社です。最初は編集者であるぼくの個人事務所という体裁をイメージしていて、会社名も編集長時代の僕の愛称で今もみんなからの呼び名である「こばへん」にする予定でした。「株式会社こばへん」。早々にkobahen.onlineというドメインも取得してホームページをいそいそと作っていたのですが、途中、なーんか気分がもりあがってこなかったんですよね。
 あたりまえの話ではあるのですが、編集者として本をつくっていくことを本業にしていくなら、これまで籍を置いていた総合出版社の方がなにかと都合がいいわけです。著者だってつかまえやすいし、取引条件だって個人で取次相手にやるのは分が悪い。そしてなによりなんのために版元を辞めたのか意味がない。全然プランを練っていても楽しくないわけですよ。
 先日のニュースでもあいつぐ雑誌の休廃刊が取り沙汰されていました。「出版社の業績は「赤字」が36.2%を占め、過去20年で最大となったことが分かった。減益を含めた「業績悪化」の出版社は6割を超え、長く続く出版不況」と。そんながけっぷちの業界に新参者(キャリアがあったとはいえ)が意気揚々とのぞんでも返り討ちに合うのが関の山。そこで知恵を振り絞るよりも僕はこれまでできなかったことをしたかったんだよな、とあらためて自分に問いかけたのでした。
 僕はほぼ完成に近づいていた株式会社こばへんのホームページを全部一旦白紙に戻しました。自分自身で手がけてベストセラーになった書籍や話題になった雑誌などの写真を自分のポートフォリオとして載せいていましたがそれも全部削除しました。そして、これまでに積み上げた自分のキャリアとその本質を煎じ詰めていく作業にあらためて没頭したのでした。

僕にできるのは編集の力で毎日がわくわくする「こと」を作ることだった

そして見えてきたことは僕がこれまでやってきた「編集」という仕事の本質でした。編集ってなんとなく本や雑誌を作る仕事のことみたいに思うじゃないですか。でもじつはそうでない。目的のためにあつめた素材を取捨選択、あれこれ整理整頓し、そこにアイデアをプラスして目的のための成果物を作り上げる技術なんですよ。それがたまたま僕の場合雑誌や本だった。でも、今、僕の仕事を大きな部分を占めているインスタグラムを中心としたSNSのコンテンツにもその技術は当然応用できるし、イベントや商品などあらゆるものの魅力を輝かせるためのテクニックを30年以上かけて磨いてきたのです。
さらにそのなかでも僕が得意なことは、あたりまえの日常の中に「わくわく」するような特別な価値を見つけだすこと。生活誌やアウトドア雑誌で長年培ってきた「くらしをおもしろがる」技術なのです。
あ!!とそこで閃いて会社名を最近うちにやってきた2匹の兄弟野良猫の名前「イン」と「ヤン」から名付けて「イン-ヤン」に変更することにしました。ホームページに記した言葉を引用して説明しますね
「ある日小林家のベランダに現れた白黒タキシード柄の子猫の兄弟は、野良として生まれた過酷な環境をものともせずしぶとく生き抜いていました。用心深くて慎重、なのに大胆。狡猾でしたたか、なのに愛嬌たっぷり。ときに人は野良猫を憐れみの目で見がちです。しかし生き抜くためのリスクを背負うことで彼らはだれにも邪魔されない自由を手にしているのです。といっても僕が邪魔して保護しちゃいましたけどね。つまりはすべての物事は光を当てる場所によって見える景色が違うということ、そこには無限の可能性があるということ。(中略)yin+yangの表記は英語では間に+プラスを、カタカナではイン-ヤンとマイナスが入ります。陰と陽。プラスとマイナス。裏と表。すべては無限に繋がっています。編集のちからで、せつないことは愛しさに。さみしさは強さに。悲しみは喜びに。いつものことはわくわくに。まいにちがわくわくするような「場所」「もの」「こと」をつくります」
 だけどドメインはkobahen.onlineのままです。まあ、そこはご愛嬌ということで。

yin+yang ltd.はどんなことをやっているのか

 この夏から集英社のよみタイという読み物サイトで新しい連載が始まりました。パリに暮らす文筆家でアーティストの猫沢エミさんといっしょに「真夜中のパリから夜明けの東京へ」という往復書簡で綴る、ちょっと真面目な「死生観」についてのお話です。また、新しく9月下旬からyoutubeやspotifyなどでも配信するポッドキャストがはじまったり、雑誌やラジオなど取材が入るなど、小林個人として受けている仕事がまだまだ中心ではありますが、新たにSNSマーケティングやコンサルティングのお仕事、そしてオンラインサロンの運営をいくつかやるなど、紙媒体から離れた仕事が中心になっております。特にコンサルティングに関しては出版業界とは離れた業界のお手伝いということで気合も入りまくり。さらに来年からは社会貢献事業にも関与していきます。
 とはいえ、ぼくのアイデンティティはもちろん編集者。ずっと編集者を名乗るために、信頼できるパートナー(出版社)と出版活動は続けていこうと思っていますが、数字を作るための本作りは絶対したくないなと思っています。同じ材料を使って、何度も何度も擦って擦って、擦り切れたコンテンツの使い回しみたいなことをしてると本当に出版てダメになっちゃうと思うんですよね。とはいえ結局、時間が取れなくてこれが一番後回しになっているのが現状です(笑)ああ、早く本が作りたいなあ。
 そんなこんなではじまった自分プロジェクト。経理も、発送も、あれもこれも自分でやって、これまでいかに恵まれた環境で仕事していたかをあらためて思い知りながらも、でも、すべてが楽しいんだなあこれが。幸いにもぼくは新橋の傾いた古い雑居ビルにあった小さな小さな編集プロダクションからキャリアをスタートしました。当時はお金がなかったから、ライティングはもちろん、撮影、イラスト、ロケバスまでぜーんぶ自分でやりました。今、またそんな時代に戻っている感じかな。だけど違うのはAIなど圧倒的にクリエティブの環境が整っていて、本当になんでもやる気さえあれば自分でできちゃうということ。こりゃあまじですごいよ。
 コツコツ作っていたホームページが完成したあと、特にお知らせもしていないのに、公開して数日で、問い合わせフォームから出演依頼が届いた時はなんだかとても感激したなあ。おおーーっとひとり声を上げました(笑)いざ出陣です。
ぜひ、イン-ヤンとわくわくをつくりたいと思った人はご連絡をお待ちしてます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?