歪んでいるのは写真なのか、
【VOCA展2020 現代美術の展望─新しい平面の作家たち─】
「VOCA賞」(グランプリ)
アーティストデュオNerhol(田中義久さん・飯田竜太さん)の作品「Remove」
推薦者は横須賀美術館学芸主査の工藤香澄さん。
・
この作品を見たときに、その手法に既視感があった。
プリントを何枚も重ね、それを彫り込んでいくことで
等圧線が現れるが如く、作品表面に表情が生まれる。
どこかで観たはずだった。
でも、その場ではわからなかった。
・
それが写真を整理していてわかった。
CADAN展で、Yutaka Kikutake Galleryのチョイスで
掲示されていた作品だった。
・
こちらの作品は風景がモチーフになっている。
彫られたプリントたちの上には、風が吹き、
大地の匂いを沸き立たせられ、草が波打っているようだった。
鳥たちは風に翻弄されながらも空を舞っている。
・
翻ってVOCAでグランプリを取った作品。
これは1969年のアメリカで実施された
宇宙飛行士のテストプログラムの中の一場面だそうだ。
平面は立体へと向かい、それゆえ見るものに歪みを与える。
それは、宇宙というフロンティアに素直な夢をもっていた時代を
いまや素直に見ることのできないわれわれの目線なのか。
皮肉な投げかけなのか。
・
CADAN展を横目に
寺田倉庫で蓮沼執太氏が大阪万博50周年記念の作品を発表していた。
1970年大阪万博のスローガンは「人類の進歩と調和」である。
・
Nerholの作品のタイトルは「Remove」だ。
「削除」「取り除く」。彼らは何を除外しようとしたのか。
いや、「足踏み」という意味もあるらしい。
・
私たちは一様に進歩していく未来など、もはや信じることはできない。
そもそも進歩とは何か。
そんな思いがあの歪みに込められているようにも思えた。
・
#art #voca #voca2020 #grand -prix #nerhol #tanaka_yoshihisa #iida_ryuta
サポートしていただけたら、小品を購入することで若手作家をサポートしていきたいと思います。よろしくお願いします。