瞳孔を開く目薬のおかげで、他人と同じ色を見ているかなんてわからないと気付いた話
かなーり前の話になりますが、眼科で目の検査をしなくてはならず、瞳孔を開く目薬(散瞳剤?)をして貰いました。
「瞳を開くお薬ですー。目に入る光の量を調節する瞳孔を開くので、しばらくすると眩しいと感じるかもしれません。数時間は効き目が続きます。危ないので、検査後はお隣の部屋で休んでからお帰りになってくださーい。」
と看護師さん。
なるほど、確かにしばらくすると待合室内の景色がボンワーッとして、眩しく感じてくる。
診察は滞りなく終わり、当初の案内通りしばらく別の部屋で休んでから病院の外に出ました。
すると・・・!!
ぐあああ!すんげーまぶしい!!目がぁ~目がぁ~。
全ての光という光、色という色が最大限の明るさで無理やり私の目に侵入してくる!!
なにこれ。全部がケバケバしい!
ビビット!ビビット!
まだ目薬の効き目が完全には切れていなかったみたいなんですね。
季節は夏。炎天下の真っ昼間。
病院前の道には、冬とは違って明るい色の服を着た人々。
行きかう車・バス・自転車。
おばちゃんが着ている服の赤が、めっちゃ鋭く目に染みる!
バスの車体広告の黄色が、発光しているみたいに迫ってくる!
自転車のフレームの緑が、癒し効果0で激しく攻めこんでくる!
とにかく景色の中のすべての光・色の主張がダイレクトに目に入ってくる。
中でも一番すごかったのが「白」。
白いTシャツの人は光る服を着ているようだし、
白い車は神様の乗り物かってくらい神々しいし、
白い壁のビルはなんかもう「ネバーエンディングストーリー」の”象牙の塔”のように美しい! ↓これな。
なんだこれ。この「白」は私が今まで見てきた「白」じゃない!!!!
え?でも今のこの世界(瞳孔が開いた世界)ではこれが普通の「白」?
その時ふと看護師さんの言葉を思いだしました。
『目に入る光の量を調節する瞳孔を開きます・・・』
ん?待てよ。
「今まで見てきた白じゃない」なんて思ったけど、そもそも「白」自体は何も変わっていないのか。
瞳孔の開き具合によって、私の見え方が変わっただけ。
なるほどねー。
こんな事ひとつで景色ってこんなに見え方が変わるのねー。
・・・。
んん?!待て待て。
そもそも瞳孔の開き具合(調節能力?)って、全人類みな一緒なのか?
もしかして同じ「白」でも見ている人によって「白」は違ってるってこと?
今私はたまたま、薬の作用であの白いビルの「白」が象牙の塔のような白に見えているけど、もしかしたら象牙の塔のような白が、「普通の白」として生きてきた人も居るかも知れないってこと?
うお・・・でもこれって気づけないよな。
例えば「あのビルは何色ですか?」って聞かれたら、平常の私も象牙の塔の白がデフォルトの人も、どちらも「白です。」って答えるしな。
それに「くすんだ白」とか「真っ白」とか言っても、結局基準の「白」が違う可能性がある。
えええ?!どういう事?
最悪、お互いの目ン玉を交換しなきゃ相手がどんな「白」を見ているかわからないって事?
これって、今まで気づかなかっただけで普通に起きているのでは?
私が今まで「白」だと思っていた色は、他の人が見ている「白」と同じじゃなかったかもって事だ。
ぐはあ、まじか。
うまく説明できないけど、おもしろいーーー!!
そんな事を考えながら帰宅しているうちに、瞳孔はあっという間にいつもの状態になり、「白」はいつもの「私の普通の白」になってしまいました。
(象牙の塔の白いビルは、結構汚い感じのビルだった・・・。)
その後も何度か、瞳孔を開く目薬をして貰う事はあったのですが、
あの日の「白」には会えていません。薬の種類が違うのかな?
この日の経験は結構しっかり私のなかに残っており
日頃の生活で、何か人と考えや行動が違う事があって困ったときに
「ま。色ですら、同じ景色を見ても全員が同じ色で見ているワケじゃないんだから、意見や行動が違ってて当たり前~。」
なんて都合よく思えるようになっています。