「サヨナラCOLOR」のプロデュース / ナタリー・ワイズに加入 / 初めての映画音楽 / 9月11日 (2001②)
2001年1月26日にSUPER BUTTER DOG(以下SBD)のアルバム「grooblue」がリリースされた。2000年後半、プリプロからじっくり付き合ってアルバムトータルのサウンドプロデューサーとして関わった作品だ。
メンバーは永積タカシ(ボーカル・ギター)竹内朋康(ギター)池田貴史(キーボード・コーラス・ボーカルTOMOHIKO(ベース)沢田周一(ドラムス)の5人。後にタカシはハナレグミとしてソロデビュー、そしてキーボードの池ちゃんはレキシとしてテレビでも人気者となった。
2ndアルバム以降、SBDはずっとプロデューサーを立てずに自分たちだけで作品を作ってきたが、5枚目のアルバム制作にあたって初めて僕が制作に関わることになった。僕のポップスの感覚とバンドのブラックミュージックをベースにした音楽性の化学反応を期待されての起用だったと思う。
それまでも何度かSBDのライブは見ていたが、プロデュースのオファーをもらってあらためて渋谷AXでのライブを観に行った。演奏は申し分ない。ただ不思議だったのは、リードヴォーカリストのタカシはあまりMCをせずに、もっぱらMCやライブの盛り上げ役は池ちゃんだったこと。エコーをたっぷり効かせたマイクでMCしながら椅子の上に立って客席を煽ったり、足でキーボードを弾いたり。タカシは終始クールで、心の底に秘めたものがあるような気がした。
ちなみに池ちゃんのエンターテイナーぶりに感心した僕は、ライブ視察後ディレクターに「タカシと池ちゃんのツインボーカル体制にしたらどうですか?」と提案したが一笑に附された。その頃は池ちゃんはまだリードヴォーカルの経験はなく、タカシの圧倒的な歌唱力とは釣り合わなかったので賢明な判断だとは思うが、その後のレキシがシャカッチことタカシとデュエットしている「大奥〜ラビリンス〜」(2012)や「憲法セブンティーン」(2014)を聞くと、案外先見の明があったのかもしれないと今は思っている(笑)
僕の役割は、プリプロ(レコーディングのためのリハーサル)からスタジオに顔を出して、みんなの個性を知って引き出すこと。バンドが方向性に迷った時に決断すること。タカシが歌詞に煮詰まった時にヒントを出したり飲みにいったりすること。録音や歌入れがストレスなく進むように手順を考えたり準備すること。そしてストリングスアレンジ。言ってみれば、部活の顧問のような立ち位置だな(笑)
アルバムのレコーディングも終盤に差し掛かった頃、タカシがアコギで弾き語りした新曲のデモを持ってきた。切なく力強いミディアムバラード。名曲だと思った。当初タカシは「この曲は弾き語りのままボーナストラックでアルバムの最後に入れたい」と言っていたが、ボーナストラックに収まるような曲ではないと思ったし、弾き語りだと他のアルバムの曲とのバランスがとれない。
そこで「まずバンドでやってみようよ」と提案した。目白のリハーサルスタジオで、全員でカセットを聞いた。みんな無言のまま神妙に聴き入っていた。そして無言のまま音を出し始めた。
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