記憶の何処かでオマージュを
先日「僕ら、バラバラ」という曲をリリースして以来、YMOマニアの何人かの方から「途中のシンセのメロは、坂本龍一さんの『Living in the dark』のオマージュですよね?」と言う指摘があった。正直、全く意識していなかったので、ハッとした。
0:27くらいから流れるシンセのメロディが、それ。
実はこの曲の原型が生まれたのは2012年に遡る。こんな変遷を辿った。
元々は、クラムボンのドラムの大ちゃんとツアーを回っている最中に書き下ろした曲。例の部分は、シンセではなくスキャットの歌メロだった。メロディ自体、最終形と少し違う。そして「ボクラバラバラ〜」のパートはまだなかった。
結局ライブ以外では発表されず、6年が経った。これが第二形態。
例のメロディは固まっているが、サウンドもアレンジも全然違う。ここから登場した「ボクラバラバラ〜」のリフレインは、このバージョンではまだサビ扱いではなかった。新たにサビのメロディを思いついたものの歌詞が浮かばず、高橋久美子ちゃんにサビ部分だけ作詞をお願いして作ったデモ。30周年記念アルバム「City Folklore」制作時期だったが、アルバムの候補曲からは漏れた。
その後2020年、サンプリングをコラージュしてできたトラック(インスト、メロディのない状態)に、この曲のメロディと歌詞の一部を抽出して載せることを思いつき、曲が突然変異した。スキャットしていたメロディはシンセで弾くことにして、音源はYMOが多用していたProphet-5というシンセのエミュレーター(ソフトウェアに置き換えたもの)を使った。
こうして出来上がったのが、「僕ら、バラバラ」の第三形態、現在形。
もしかしたら、また変わるかもしれない。いや、どうかな。
では、坂本さんの「Living in the dark」を聴こう。
似ているのか?どうなのか?
2012年に曲の原型を作って以来、最近まで「Living in the dark」のことはまったく意識に上っていなかった。少なくとも、最初の2バージョンを作っている時頭の中で鳴っていたイメージには、YMOの幻影はまったくなかった。
ところが、その旋律をシンセで弾き直した瞬間に、メロディが記憶の片隅に残る音色と新しいイメージを結んで、坂本さんの曲の影響が浮かび上がった…まとめると、そういうことになるのだろうか。
今回のアルバム「Modern Vintage Future」のキャッチコピーには、「YMOへのオマージュにあふれている」という形容が踊っている。他にもアルバムの中には、そんな無意識下のYMOからの影響、意図せずこぼれてしまったオマージュがたくさんある。今、色んな方から感想を聴いて、自分の潜在意識に横たわっていたイメージの断片を拾っているところ。
40代以上の方なら、ある日、それまで気づかなかった外見やちょっとした癖などが自分の親に似てきていることにふと気づいて、「遺伝子って凄い(怖い)」と感じたことがあるはず。
今回の一件を分析していて、なんだかそんなことを連想したのです。