カメレオン・ポップ(2011)にまつわる 100の事柄
【その1】
アルバム『Kameleon pop』は2011年4月20日発売。
13曲収録。
【その2】
先行配信されたiTunesのシングル3曲目『夜の海を走って月を見た』のセルフカバーはアルバム未収録。
http://fb.me/wRU6rmRZ
【その3】
このアルバムで目指したのは、J-POPリスナーにも届く歌詞&メロディと、洋楽リスナーも満足させるサウンドの両立。
【その4】
何故カメレオン? → ポップス・ロック・エレクトロニカ・フォーク... ジャンルを飛び越え、いろんな色で描かれているから。
【その5】
何故カメレオン?→SSW・ギタリスト・ベーシスト・プロデューサー・エンジニア、一人何役もこなしているから。
ブックレットには自分で撮った写真も散りばめられている。
【その6】
『Kameleon pop』と前作『Rainbow Magic』は同時期に作っていた曲も多く、二卵性双生児のようなアルバム。ジャケットもそんな感じ。
Kameleon Pop (2011)
Rainbow Magic (2009)
【その7】
レコーディングはほぼ、僕と参加メンバーのプライベートスタジオで敢行。そしてアルバム全曲を自分でミックスしたのは初めて。
【その8】
ゲストミュージシャンはGANGA ZUMBAのドラム・宮川君、ナタリーワイズの斉藤君、宮内優里君、そしてブラジルの親友カシン、ドメニコ、モレーノ。
【その9】
アルバムにはYMO『君に、胸キュン』カヴァーとトッド・ラングレン『I saw the light』の日本語訳詞によるカヴァーも収録。
【その10】
アルバムのマスタリングエンジニア・小池光夫さんはYMOのレコーディングエンジニアだった方。「『胸キュン』には元々『伊太利亜の〜』の前に『さざなみの〜』と同じBメロがあったが、曲が長すぎたためテープ編集でカットした」という秘話を教えてくださった。
【その11】
実はトッド・ラングレン『I saw the light』をカヴァーするのは生涯二度目。20歳の頃カセットMTRで完全コピーしたことがある。
【その12】
『I saw the light』、原曲を知りすぎているだけにアレンジは悩みに悩み、3回まったく違うアレンジでやり直してようやく完成した。途中、高橋幸宏さんのバージョンも参考にしたり。
【その13】
高野寛もギターで参加しているテイ・トウワ『SUNNY』、たまたま『Kameleon pop』とジャケットが似ている。
【その14】
面識はないが、ビースティ・ボーイズの『Hot Sauce Committee Part Two』もジャケが似てる。
【その15】
CDのブックレットには世界中で撮りためた風景の写真が散りばめられている。
【その16】
「On the timeline」は2009年にpupaのために書いた曲がベースになっている。全然違うアレンジで「状況は混沌 混乱の様相 On the timeline」で始まるシリアスな歌詞が乗っていた。
【その17】
「On the timeline」ver.1のデモを聴き終えた幸宏さんの、曲へのコメント・感想はまったくなかった。その瞬間思わず「だめだこりゃ」と心のなかでつぶやいたことは、pupaのメンバーには内緒にしておきたい。
【その18】
ツイッターのやりとりから刺激を受けて選曲や歌詞が決まった曲もあるので、CDの「SPECIAL THANKS」には「twitter followers」とクレジットを入れた。
【その19】
「Time Drop」は「はなまるマーケット」のエンディングテーマとしてオンエアされた。(2011.4〜6月)
【その20】
「ありえないことなんてどこにもない」というフレーズが思い浮かんだ時「Time Drop」の詞のコンセプトが定まった。
【その21】
録音に使ったギターはハミングバード、オメガ、ストラト、335、サイケデリズムのシンライン、ムスタング、ダンエレクトロなど。
【その22】
録音に使ったエレキベースはヤマハSB、プレベ、アリアサイレントベースの3本。ヤマハのベースはカシンに勧められてオークションで探した。
【その23】
「雪どけ」の歌詞、最後のフレーズは作曲中にもらったツイッターの返信からヒントを得た。
【その24】
「雪どけ」の間奏は最初ギターソロだったが、権藤知彦君にアレンジを任せたらフリューゲルホーンのソロが勝手に録音されていたので、そっちを採用した。
【その25】
フォーク・クルセダーズや加藤和彦さんの初期のアルバムを聞いている時に寓話風の歌詞を書こうと思い立ち、「kurOFUne」のアイデアに結びついた。
【その26】
「kurOFUne」でスピーチしている外国人の声は、MACのテキスト読み上げ機能を使ったもの。ではCDブックレットにクレジットされている名前「John Titar」とは?… https://ja.wikipedia.org/wiki/ジョン・タイター
【その27】
「Skylove」と「壊れそうな世界の中で」はカシン、モレーノ、ドメニコとのセッションによるブラジル・リオでの録音。
【その28】
2008年にGANGA ZUMBAのレコーディングでリオを訪れたとき、カシンに誘われて遊びのつもりでスタジオに行き初めて一緒に録った音源を使った。
【その29】
遊びにいくつもりだったのでギターも借りて、歌詞も譜面もなく、その日に覚えていた新曲を思い出して録った。
【その30】
海外のミュージシャンはとにかく曲を覚えるのが早い。カシンたちも、譜面もないのに3回くらい合わせたらもう曲は形になっていた。
【その31】
歌詞の大意だけはみんなに説明した。「Skylove」の合言葉は「Zero Gravity Sound」。
【その32】
「壊れそうな世界の中で」はダムに沈む村がテーマ。八ッ場ダムのニュースよりずっと前に書き上げていた。
【その33】
「Magic Days」にはリズム&プログラミングで宮内優里君が参加。レコーディングはすべてネット上のデータのやり取りで。
【その34】
ちなみに僕は長年Digital Performerを愛用。宮内優里君はLIVE。各トラックのアタマを揃えて一本のファイルで書きだす方式でやりとりしていた。原始的だが一番確実な方法。
【その35】
プロジェクトのサンプルレートはいまだに試行錯誤中。今回は曲によって96kと48kのものが混在。僕にとってはどちらも一長一短。
【その36】
今まで「君に胸キュン」以外にカヴァーしたことのあるYMOの曲は「CUE」「LOTUS LOVE」「中国女」。
【その37】
「胸キュン」の「キュン!」はMACのテキスト読み上げ機能による男女3名混声部隊。
【その38】
「Magic Days」はタム君(ウイスット・ポンニミット)の漫画「ブランコ」のテーマと共鳴しながら作った。
【その39】
ある日、見事な夕焼けの舗道を歩いていると、少し前を歩く母子の会話が聞こえた。「オーロラの夕焼けだね」と、小学生の男の子。そこから「GLOW」の歌詞が生まれた。
【その40】
「十字路に降る雪」の「十字路」は、渋谷ハチ公前のスクランブル交差点のイメージ。
【その41】
久しぶりに東京に雪が降った2011年2月9日、「十字路に降る雪」のミックスをしていた。
【その42】
「十字路に降る雪」を作ったのはもう7年くらい前。歌いこなせなくて、ずっと録音をためらっていた。
【その43】
小坂忠さんと何度か「十字路に降る雪」をステージで共演したことがある。
【その44】
「十字路に降る雪」のコーラスは16回重ねた。
【その45】
最近ライブでは「Time Drop」の詞を「暗闇の中でせめぎあう光」から「暗闇の中にあふれだす光」に変えて歌っている。
【その46】
「君住む街へ」のギターは、J.T.とキャロル・キングのライブを観に行った後にJT奏法を研究したたまもの。
【その47】
「君住む街へ」の歌詞は、ツアーに出かける時の風景や心情をそのまんま歌っている。
【その48】
「kurOFUne」のタイトルの中には「UFO」の文字が隠されている。
【その49】
「Don't think twice」はまず一本のマイクでギターと歌の弾き語りを録ってから、どんどん音を重ねた。
【その50】
「Don't think twice」はタイトルにちなんで、二回以上試してうまくいかないアイデアは却下した。
【その51】
「Don't think twice」は、高野寛録音史上初のモノラルミックス。
【その52】
アルバムジャケットは今や、実物を目にするよりも縮小画像を目にする機会が圧倒的に多い。だから、アイコンとしてのデザインも意識した。
【その53】
最初の仮アルバムタイトルは「Made in TOKYO」。
【その54】
次に考えたのは「Original soundtrack for modern times」。
【その55】
だから、7月のライブのタイトルは~H.T. modern times review~。
【その56】
「Kameleon pop」というタイトルは、実は2001年頃思いついていた。
【その57】
「Ameba Rock」という仮タイトル候補もあった。
【その58】
自分にとってのpopとは、聞いただけで耳に残る詞とメロディ。
【その59】
「Rainbow Magic」収録の「今日の僕は」にも「壊れそうな世界で」という歌詞がある。
【その60】
iTSだけ、インストのボーナストラック「Trance ASIA express」有り。 http://bit.ly/eGj6VS
【その61】
「Trance ASIA express」ではエレキシタールをガッツり弾いた。
【その62】
5月〜6月のアコースティックツアーでは、アルバムの大半の曲をアコギ(とパーカッション)だけで歌った。
【その63】
ツアー中に完成した「On the timeline」と「Magic Days」でのループサンプラーを使ったライブアレンジが、自分では気に入っている。
【その64】
このまえニコ生でも演奏したアコギと宮川君のエレドラによる「Skylove」のライブアレンジもとてもいい。
【その65】
ゲストミュージシャンのパート以外は基本、DigitalPerformerとMacBookProでアルバムを作った。
【その66】
pupaをMAC本体のスピーカーで聞いていて、グリッチノイズは再生環境が悪くてもハイファイに聞こえる事に気づいた。「Kameleon pop」の何曲かのアレンジにはその影響がある。
【その67】
自分の中にはトッド・ラングレンのスタジオのアナログ録音の印象がとても強く残っていて、それを追っていた部分もある。
【その68】
つまり、ハイファイではないけれど音楽的に言いたいことがはっきりしている、ミュージシャンによるミックス。
【その69】
UAD-2のプラグインがなければ、あのクオリティで自分でミックスすることは不可能だったと思う。
【その70】
多用したのはPrecision limitter、Studer A-800、SSL buss-comp、1176、Pultec EQなど。
【その71】
シンセはソフトシンセしか使わなかった。
【その72】
使ったソフトシンセはUltra analog、BATTERY3、DP付属のものなど。
【その73】
「I saw the light」は本物のウーリッツァを自分で弾いた。
【その74】
エレキギターはライン録りのみ。
【その75】
アンプシミュレーターはEleven Rack、Guitar RIG4、Adrenalinn、そしてたまにインターフェイス直で。
【その76】
ドラムの宮川剛君のスタジオで、Octapadでライン録りしたドラムが何曲かある。どの曲かは秘密。
【その77】
宮川くんが丁寧に音を作りこんだOctapadをリアルタイムで叩くと、音色はそれほどリアルじゃないのにグルーヴィなドラムになった。
【その78】
一人で録音している間は一切譜面は書かない。ベースを弾くときにコードのメモを見る程度。
【その79】
ゲストミュージシャンを呼ぶ時、説明のために初めてコード譜を書く。
【その80】
歌詞はまず鉛筆でノートに書く。鉛筆はデッサン用の4Bを愛用。
【その81】
出来上がった歌詞を歌ってみて、口に合わない場所を直してゆく。歌いながら作詞することもある。
【その82】
紙に書いた歌詞の上にマスキングテープを張って、その上からマジックで歌詞を書きなおして歌う。それを繰り返す。
【その83】
デモ音源をiTunesに並べて、仮曲順を決めながら、候補曲を絞り込んだ。
【その84】
マイクはRODE NTV、EV RE-20、Blue dragonfly。必ずBrent averillがNEVEをリビルドしたHAを通す。
【その85】
「 Kameleon Pop」はたぶん、今までで一番制作に時間をかけているアルバム。
【その86】
何ヶ月もかけて詞を選びぬき、歌を体に染み込ませ、歌が決まったらアレンジを練り、いいのが録れたらミックスを磨いていった。
【その87】
メロディをつくるのはあまり悩まない。昔から大好きで、一番得意な分野。
【その88】
自分の中にあるSSW、プロデューサー、エンジニアの3人格を切り替えながら作っていた。だから時間がかかる。
【その89】
プロデューサーの客観性をSSWの自分に発動させるために最も有効な方法:一晩寝て次の日に聞くこと。そして、車の中やリビングで聞くこと。
【その90】
自分で手がけるミックスは孤独との戦い。答えのないクイズ。レコーディングには実は完成形などないのかもしれない。
【その91】
ブックレットの「君住む街へ」前のページの写真、東京タワーの風景は六本木ヒルズのJ-WAVEのロビーから撮った。白い光はガラスに写りこんだ照明。
【その92】
CDブックレットの「君住む街へ」前のページの写真、右下の二人の男はGANGA ZUMBAのマルコス・スザーノ(From RIO)とルイス・バジェ(From Habana)。
【その93】
CDブックレットの「君住む街へ」前のページの写真、左下の裸で踊る人々はリオデジャネイロの熱帯植物園のエントランスにあった彫像。
【その94】
その植物園はトム・ジョビンが散策しながら曲のアイデアを練っていたところらしい。
【その95】
CDブックレットの「君住む街へ」前の前のページの写真、逆光の海岸の写真はリオデジャネイロ・コパカバーナ。本当に美しい場所。バリー・マニロウの歌を思い浮かべるべきではない(笑)
【その96】
CDブックレットの「十字路に降る雪」の次のページの写真、川沿いの雪降る街はポーランド・プシミシェル。
【その97】
今回のアルバムでは、作曲ではキーボードはまったく使っていない。
【その98】
ギターとウクレレと、時に鼻歌のみでメロディを考えた。よくアイデアが浮かぶのは入浴中と寝入りばな。
【その99】
だから、全曲ギター一本で歌うことが出来る。
【その100】
レコーディング中、枕元にはいつもノートがあって、寝入りばなに何か思いついたら夢遊病者のように書き留めていた。ずっと昔から変わらない、音楽に取り憑かれた男の日常。