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アート・リンゼイとノイズとロックとアートと
アート・リンゼイと、インプロでセッションした。来日公演のプレイベントに呼ばれて、トークと、短いライブ。
アートとは、今年の3月にリオ・デ・ジャネイロで初めて会った。僕のソロアルバム「TRIO」のレコーディング中に、スタジオに遊びに来てくれたのだ。眉間にしわ寄せた神経質な人なんじゃないかという先入観はまったく的はずれで、フランクでユーモアのある人柄。嬉しかった。
ちなみに「TRIO」のプロデューサーのモレーノ・ヴェローゾは20年ほど前に、アートのツアーメンバーとして初めて日本に来たのだそうだ。その時見知らぬ人にいろいろ親切にしてもらって日本が大好きになり、ひらがなの読み方を勉強した、とのこと。(撮影:中原仁さん)
以前ここにも書いたとおり、ソロデビュー前の僕はギタリストを目指していた。そして「特殊ギタリスト」が好きだった。エイドリアン・ブリュー、フレッド・フリス、アート・リンゼイ。
幸宏さんに出会う直前に、すこしだけノイズバンドをやっていたことがある。いつも完全インプロだった。お客さんには割りと、受けてた(笑)
結局その後僕はポップシンガーに「転身」し、そっち(ノイズ)のボキャブラリーは歳月と共に封印されていった。録音された音源だと、かろうじて「I.O.N.」のソロにその痕跡を留めるのみ。あの曲はくだんのオーディションに応募した曲でもあり、高野寛のノイズ(ロック)とポップの分岐点でもあった。今思えば。
あれから27年。アートとインプロセッションする日が来るなんて。
僕はテイ・トウワ君から託されたテイ君の20周年記念アルバムをアートに渡した。ポストイットに「To Arto sensei」とメモ書きしてあった。
確かに、アートは(坂本教授とは違った意味で)先生っぽい。モレーノも、カシンも、テイ君も、小山田君も、僕も、アート先生の生徒なのかもしれない。
今日はチューニングの話、ハーモニーとリズムについて、など、いろいろ興味深い音楽観も聴かせてもらった。リハーサルを軽くしたとき、アートが歌った曲のキーがDだったのは覚えておいた。本番で、アカペラで歌い出したアートの歌のキーはリハと同じDだった。きっと、僕と同じく(絶対音感ではなくとも)音記憶ができるタイプなんだと思う。
英語はうまく話せないし会うのはまだ3回めだけど、20分のセッションでそれまで交わした言葉よりもずっと多くのやりとりをした気持ち。セッションが進むにつれて、段々と四半世紀前の感覚が蘇ってきた。アートも軽く汗ばんで、顔が上気していた。
フリーキーに絡まるエネルギー。調和と破綻のノイズ。僕にとってのロックは、こういうものだったかもしれない。昔と決定的に違うのは、最後まで冷静にプレイできたところ。
アート先生、僕は大事なものを思い出しました。今夜はありがとうございます。
……なんて言ったら、絶対とぼける。そういう人
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