人気のサーモンも値上がり 国産にも商機
世の中の様々な値段がどのように決まっているのかを解き明かす「値段の方程式」。きょうのテーマは 「人気のサーモンも値上がり 国産にも商機」です。すしネタとして人気のサーモン。 マルハニチロの 「回転ずしに関する消費者実態調査2024」で最もよく食べるネタとして「サーモン」が50%を占め13年連続で1位になりました。 2位「マグロの赤身」や3位「ハマチ・ブリ」を引き離し回転ずしでは「不動の人気No.1」と言えます。このサーモンが値上がりしています。比較的、低価格の回転ずし店も1皿100円のサーモンがほぼ消えています。
ノルウェー産は3年前の2倍に
サーモンの国内市場は推計7万トン。そのうち北欧や南米からの輸入品が85%を占めると言われています。ほとんどが養殖ものです。ノルウェーから空輸するチルド品の5月の輸出単価は1キロ1750円。3年前に比べ2倍になっています。
東京近郊で80店舗以上を展開する「銚子丸」ではロシアのウクライナ侵攻があった2022年3月以降、北欧産の「オーロラサーモン」を段階的に値上げしてきました。 侵攻前は1皿270円(税抜)でしたが、 現在は1皿400円。 値上げ幅は48%になっています。都内にある店舗を訪れました。
航空運賃の上昇響く
担当者によるとサーモンの値上がりの理由で一番大きいのが航空運賃の上昇です。銚子丸は産地ノルウェーから日本まで空輸しています。ウクライナ侵攻以降、ロシア上空を飛行機が飛べなくなり迂回して運ぶようになりました。36時間だったノルウェーから日本までの輸送時間は48時間に。輸送距離が長くなったので飛行機は余計な燃料費がかかります。さらに燃料を余計に積む分、貨物スペースが減り、これまた運賃の値上げ要因になります。ダブルパンチで輸送費が上昇しました。世界的なすし人気や養殖コストの上昇も加わり、サーモン価格を押し上げています。
値上げしてもサーモンの人気は衰えません。「オーロラサーモン」の名がつく商品は4種類から、現在は8種類になっています。 トッピングや炙りなど炙りなどいろんな楽しみ方で食べてもらえるように工夫しているそうで、「値上げ前と後で、販売数量は大きく変わらない」(下公祐二広報課長)。
国産の存在感高まる
輸入品の高騰を受けて回転ずし店や鮮魚店で、国産品が存在感を増しています。5月中旬、青森県で「青森サーモン」の水揚げが最盛期を迎えました。養殖大手の日本サーモンファームが津軽海峡に北欧式の最新設備を導入して育てるブランド魚です。都内鮮魚店では100グラム498円とノルウェー産(100グラム798円)より4割安い価格で販売されています。青森サーモンは日が昇る前から作業を開始して3日以内に店頭に並びます。価格と鮮度の良さの両面で小売店から評価され、今年の出荷量は前の年と比べて7割増の2700トンを見込みます。
きょうの方程式です。
「サーモンの世界的な需要増×コストの上昇=国産に割安感」
今後も国産の需要は高まっていきそうです。日本でサーモンを養殖しているのは約130カ所あります。今年に入りビジネスとして成長の勢いが増しています。とくに海で育つ魚を陸地の設備で育てる「陸上養殖」がサーモンと相性が良く脚光を浴びています。
ただ、国産にも課題はあります。エサの値上がりです。 養殖コストの多くを占めるエサ(魚粉)は南米などから輸入しており、円安で値上がりしています。稚魚の確保も課題。ブランド魚「オリーブサーモン」を売り出し中の香川県が官民連携を強化しており稚魚の約半数が地元産になる見通しです。日本は魚を食べる量が減ったとはいえ、世界的にみれば水産物の消費大国です。安定した輸入量の確保に加え、養殖技術にも一段と磨きをかけたいところですね。