『女』でいることの怖さ、悔しさ
バイトを終電であがった。
電車に乗った私は、疲れた顔をした人たちに溶け込んで考え事をしていた。
気がついたら降りるはずの駅の次の駅だった。
タクシーを呼べるほどの手持ちのお金はなかった。
やむを得ない、歩いて帰るか。
全く知らない街。
広い空。
まぁたまにはこんな日があっていいか。
しばらく経つと、家のない田舎道になっていた。
暗い。
怖い。
早く家の灯りが見えないか。
なんでスカートなんて履いたんだ。
トラックとすれ違った。
あのトラックが引き返して追ってきたらどうしよう。
携帯の充電は1%だった。
今ここで連れ去られたり襲われたりしたら
自慢の大声も、きっと誰にも届かない。
走った。
街灯のない一本道を走り続けた。
怖い
怖い
怖い
きっと短い時間だっただろう。
ただ、すごく長い道だった。
怖い
悔しい
怖い
やっと家の灯りが見えた。
よかった、息をついた。
ヒールのあるブーツの紐は解けていた。
左手に持っていったビニール袋は片方の取手が千切れていた。
パトカーのサイレンが遠くで聞こえる。
悔しい。
私が男だったら、もっと強かったら、こんな思いをせずに済んだのだろうか。
暗い道を1人で歩く時はわざとガニ股で歩く。
上着のボタンは上から下まで閉めて歩く。
髪の毛をボサボサにして俯いて歩く。
夜道で人とすれ違った時は何度も後ろを振り返る。
もしも相手がこっちを見ていたら、追ってきたら、すぐ逃げられるように。
悔しい。
女だから、男だから、そんなことを言いたいんじゃない。
悔しい。
弱い自分が。
悔しい。
悔しい。
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