旅先で愛猫そっくりのピアスを見つけ、泣きそうになった
ウドゥタマ!(アカ語で「こんにちは」の意)
たかむらです。
私は旅行をしたとき、自分へのお土産にピアスを買って帰る。
それ以外のときにピアスを買うことはない。
300円ショップでピアスを買っていたときもあったが、どうも扱いが雑になってしまう。失くしてもいいや、また買い直そう、と思ってしまうのだ。
旅先で買うピアスは違う。お土産屋さんやクラフトショップで売っているピアスは、少なくとも2,000円以上はする。決して安くはない買い物だから、選ぶのが慎重になる。慎重に選んだものは、大切に扱う。
そしてお金の価値以上に、旅の思い出やその地域の色が残る気がしてとてもいい。
身につける度に「これはどこで買って、そこでこんなものを食べて、誰々と話して、」と思い出せる。
思い出は、思い出してまた記憶にこすりつける作業が楽しい。ピアスはその思い出す過程でフックになってくれる。
先日お迎えしたピアスは、宇都宮で買った。
まだ他のお店に行くかもしれないのに、旅行初日に買った。一目惚れだった。
そのピアスは真鍮でできていて、少し鈍い金色をしている。猫と梯子の2つのパーツがあって、猫が梯子を降りているように見える。
商品名は「逃走」。
名前も含めてお気に入りだ。
なぜなら愛猫は梯子を使う子だったし、2回も脱走したことがあるからだ。
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我が家に初めてやってきた猫は、アビシニアンの女の子だった。ジブリのナウシカに出てくるキツネリス、主人公の肩の上にいる小動物に似ていることから、同じ名前の「テト」と名付けられた。
ちょっとプライドが高かったけど、優しい子だった。日向ぼっこが大好きだった。
実家のベッドはロフトベッドのようになっていて、ベッドの下に揃いの本棚やタンスが収まっていた。ベッドに上がるための梯子もついていた。梯子は4段くらい、1メートルほど。
テトはこの梯子を使ってベッドに上がっていた。
前足と後ろ足を左右交互に動かして器用に上がっていく。たたたっと駆け上がるようなことはせず、一段、また一段と上がっていく様は、人間とあまり変わらないのだった。私からしてみると、ベッドの横にある机から飛び乗ったほうが楽ではないか?(実際、後輩猫の方はそうしていた)と思うのだが、テトは好んで梯子を使っていた。
テトの姿が見えないときは、大抵私の部屋のベッドにいる。運がいいと梯子から上がっていく姿を見れる。そんな日常だった。
2度の脱走は私の部屋からだった。
網戸に後付けしたストッパーを私がかけ忘れ、テトが網戸を開けて出ていってしまったのだった。テトは網戸とか引き戸とかを自分で開けられる、賢い子だった。
(また後輩猫の話で恐縮だが、後輩猫は引き戸の構造をよく分かっていないみたいで、どうにか隙間をこじ開けて無理矢理に頭をねじ込む、というストロングスタイルだ)
1度目の脱走は兄が発見した。同じフロアの違うお宅の室外機の下にうずくまっていたらしい。
2度目は母が発見した。実家は当時マンションの7階だったのだが、なんと1階まで下りていてゴミ置き場の近くにいたらしい。家族総出で探し回り、ふと下を覗いたらテトがいたらしいので、事故に遭わず無事見つかって本当に良かったと思う。
そんなこんなで2度脱走し、梯子使いだったテトは、もう亡くなって3年が経つ。
3年も経つと、大好きな子でも思い出す回数が少なくなってしまう。愛が減ったわけではないが、いないことが日常になってしまった。
そんなときに真鍮の「逃走」ピアスを見かけて、思い出がどどどっと押し寄せてきた。お店にいるのに泣いてしまいそうだった。
「逃走」ピアスを買わない選択肢は無かった。
「逃走」ピアスをつけると、テトが側にいるように感じる。
いまも昔もテトが側にいてくれる。ピアス一つ一つに、楽しかった思い出が残っている。