空気を読みたいあなたと高村英
読むな、そんなもの(完)
ヤバい、サブタイトルで完結してしまった。
だ、大丈夫。最後まできちんと書きます。
まだ読むのを辞めないでくださいね。
人間関係で悩んだことのある人なら必ず経験したことがある、
「その場の空気を読まなきゃいけない場面」
という、苦行。
空気が読めないと言う悩みに対して
「そもそも空気は吸うものだし〜」
と言う、もう今ではすっかりと使い古されてしまい、もはやなんのアドバイスでもなくなってしまった本当の空気の意味・使い方。
そもそもあなたはなんで空気を読みたいのだろうか。
それは後述するとして、空気を読むとは一体なんだろうかと高村は思った。
と言うのも、どちらかと言えば圧倒的に空気の読めない側の人間なので「空気が読めなくて……」と相談を受けたら
「まじでわかる」
と突然口調が片言になってしまうくらいには、頷いてしまう。
でも多分、悩んでいるのは空気が読めないとこじゃないと思う。
空気を読めたがために、自分に課せられてしまった役割をこなすのが嫌なんじゃないか。
そもそもその場の空気っていうやつはどうやって発生するのだろうか。
空気なんだから、言葉をそのまま素直に読むのであれば化学式で言えば、とまでは言わないけれど、空気はいくつかの条件がそろって発生するものだ。
だとしたら、その私たちが苦しんでいる「空気を読む」の空気とはどこから発生するのだろう。
例え話として少し考えてみる。
今、「空気を読む」ということで何かしら苦痛を感じているあなたがいる。
その場には、あなたを含めた10人の人間がいる。
10人もいればすっかりと空気は出来上がる。
でもちょっと待ってほしい。
10人もいれば空気が出来上がるのは容易に想像がつくけれど、その空気の発生源はどこかは想像出来るだろうか。
吸うものじゃない空気を読んで生きていかなければいかないってことは、自然発生しているわけじゃないんですよね?
つまり、そこにいる10人で、その場の空気を作っている。
今、高村は当然のことを当然の内容で確認しているだけだ。
空気と呼ばれるそれは、時にはノリと呼ばれたり、真剣な話し合いなんだけど、と言われたり、絶対的に笑わないといけないものに変化したりする。
前述したけれど、私たちはいつの間にか、
「空気を読まなければいけないルールの中で生きている」
状態になってしまっている。
じゃあ、その空気の一番の発生源ってなんだろうか。どこだろうか。
もちろん人なのは間違いない。吸うものじゃないと言い切るのだから、読むものなのだろう。
あなたはなんの空気を必死に読んで、そんなに苦しんでいるのだろう。
あなたは空気を読んで苦しんでいるんじゃなくて、
そこにいる誰かしらの機嫌を損ねるのが嫌なのだと思う。
言い換えれば、怖いのだ。
空気を悪くして、自分一人だけ注目を浴びてしまうのが
空気を読めない言動をとれば、その場の空気が悪くなると受け取られる。
あなたはそれが怖いのだ。
どうしてそれが怖いかっていうと、空気を悪くした責任を取らなければいけないからだ
あなたを含めた10人は何かしらの空気を発生させてしまった。
あなたはその空気を読んだところ、すごく嫌な思いをしている。
けれど、その場から離れることも、何かしら意見をすることも許されないのだ。
その場の空気が壊れてしまうから、自分のせいで。
あなたは空気が読めないんじゃなくて、読んでいる。
読んだ上で、自分はその空気が嫌いなのだ。嫌だと思っている。そこまでの不快感じゃなくても、例えばあなたには他にやることがあったり、大事にしたい時間があったりする。
あなたは自分の大事なものを犠牲にしてはまで、その空気に染まりたくないだけなのだ。
でもおかしいとは思いませんか。
10人いて、そこから発生した「空気」なはずなのに、どうしてその空気に染まりたくないと思う人が現れるのだろう。
あなたは自分と同じようにこの場の空気の苦さを感じている仲間を探す。
仲間が見つかって運が良ければ味方になってもらって、
その場の空気を変えられるという奇跡
が起きる場合もあるだろう。
けれど、悲しいかな、この世はほとんどがサイレントマジョリティによって成り立っている。
つまり、その場の空気を苦々しく思っていても、それこそ空気を読んで自分の大事にしたいと思うものを犠牲にして、その苦行に耐えている。
あなたはその日、運が悪かった。
本当はそんな言葉で片付けて欲しくなんかないよね。
あなたはその場の空気が嫌だったけれど、味方が一人もいなかった。見つけられなかったし、その場の空気を壊してまで自分の大事なものを優先する勇気もなかった。
あなたは、あなたを守りたかったけれど、それが出来なかった。
そんな自分を弱いと思ったり、他の9人を嫌いになったり、自分の大事なものが傷つけられて、しかもその責任は自分の弱さだと思って、さらに傷付いたりする。
あなたはその場の空気に耐えられなくなる。
どんどん耐えられなくなって、その9人のいる場所に居たくなくなる。
もちろんそれで良いのだ。
居たくない場所に留まる必要なんてないのだから、あなたは自由にして、自分が居たい場所にいれば良い。
大きく息が吸える場所で、自分が大事に思うものを削り取られるようなことのない場所で、また空気を読んだり読まなかったりすれば良いのだから。
けれどあなたはそこで、不安になってしまう。
今、この自分を含めた10人が居る場所から離れたら、それこそ空気が悪くなってしまい、自分のことを悪く言われるのではないか。何かしらの責任を取らされるのだろうか、と。
そして次の場所でも同じことが起きてしまったら、と。
ここでもう一度、あなたに聞きたい。
あなたが読んでいるその空気、発生源はどこだろうか。
誰かしらの機嫌によって、その場の空気が発生していないだろうか。
10人いるうちに、パワーバランスが決まっていないだろうか。関係性は対等だろうか。あなたを含めたその10人は、本当に意思疎通が図れているだろうか。
その場の空気って、誰が作ったものなのだろうか。
自然発生なんてあり得ないのだ。吸うものの空気でさえそうなのだから、どこかにその空気の発生源があって、
あなたはその空気の発生源よりも弱い立場にある
それがあなたが苦しい本当の理由じゃないだろうか。
とは言え。
空気は一生、多分全世界共通で読むものだと思う。
日本だけのものじゃないと思う。
例えばお葬式でみんなが泣いているときにウェディングドレスで登場する人はいないだろう。
もうそんなの空気を読めてないどころか場違いだ。
だから日本は特に特化して空気を読む風潮が強いけれど、多分、どこの国にもそれなりに空気を読まなくちゃいけない場面はある。
そしてもしこれを読んでいる人で若い人がいたら、大人たちが絶対に教えてくれないことを今から書きます。
大人になったからって上手にその場の空気に馴染むなんて出来ない
絶対だ。
多少の慣れはあるだろうけれど、どうしたって空気を読まなくちゃいけない場面があって、それは大人になっても苦手なままだ。
多分、大抵の大人は我慢したり、苦しんで体を壊したり、誤魔化したりしながら、それでもなんとか生きている。
ネット上に溢れている空気を読む必要なんてないというキラキラした言葉やそれに付随した格言のようなものや、それらを実社会で実践して上手くいく人はそもそも、
『空気を作る側』
なのだ。
でも真実を知ったからって絶望するのはまだ早いのだ。
今、私を含めた大人たちが、そういう風潮をなくそうと必死に頑張っているところなのだ。
だからもしこれを読んでいる若い人がいるなら、大人になることを恐れないでほしい。
とは言え、空気を散々読んで、傷ついてきたあなたはすっかりと疲れている。
あなたは若い人だったりもうすっかりと大人かもしれない。
けれどそんなの関係なく、「空気を読まなければいけない呪い」に須くかかっている。
でもそれ、単純に、嫌なことを我慢してるだけだから
人は成功体験を一度でもすると、それに固執する習性がある。
それは悪いことじゃない。自信がついて、どんどん前に進んでいける。
けれど、それは時に悪いことでも作用するのだ。
自分が我慢すれば上手くいく=成功体験=自信がつく
という、あなたを何一つ幸せにしない成功体験として、あなたは同じことを繰り返してしまうのだ。
けれどこれは、そう時間がかからない内に破綻するのだ。
人は自分が幸せだと思うこと以外は全て苦行に思うものだ
性癖で苦行が好き、という人は話が違うから良いのだ。それはそれで幸せなことだから、ちょ、ちょっと黙ってて、今はその話は後でゆっくりしよう。
あなたの本音は、空気を読みたくないではないのだ。
その場の空気に染まってしまい、自分が幸せだと思えない選択をしてしまうことが辛いのだ
悲しいな。
せっかく、ここまで我慢して、自信をつけてきたのに……
でも高村は思うのだけど……
「むしろ残り9人が空気読めよ?」
ってね……
いやね、だってさ、10人いて、そのうちの1人が幸せじゃないと感じてしまうほどなら、
むしろ、空気を作った側が配慮すれば万事解決じゃね?
って思う。
そうなのだ。
あなたは空気を読めてないんじゃない。
空気を作ることが得意だけど、
空気の読めない人たちに囲まれている
だけなのだ。
空気を作る≠空気が読める
なのだ。
もちろんどちらも得意な人もいる。
そういう人に囲まれていたらみんな幸せなのだけど、そうじゃない場合がほとんどだったりする。
勝手に作り上げられた空気の中にあなたはいて、それが辛いのだ。けれどカースト制度のようにこの世は結構パワーバランスで成り立ってる。だからあなたの位置からはその空気を壊すことも、染まらないように身を守ることも難しかったりする。
じゃあどうしたらこの苦しみから解放されるんですか!
あちこちから早く早く、答えを早くという声援が聞こえます。ありがとうございます、ありがとうございます。高村英、高村英に清き一票を、と昨今ではあまり聞かなくなった選挙カーの鴬嬢ようなことを考えながら、これを書いている。
一つは、やっぱり手っ取り早いのは、その場から離れる。
リスクはあるけれど、圧倒的にあなたの大事なものは何も削られなくて済む。一番リスクが少ない気もする。
けれど、また次の場所でも同じことが起きたらどうするんですかという新しい問題も生じる。
二つ目は、あなたが空気を作る・変える側になる。
これはハイリスクだし、向き不向きがあるから、人をとても選ぶんじゃないだろうか。
パワーバランスも変えなければいけない。猿山のボスがその空気を作っているなら、謀反を起こさなければいけない。
私は好きだけどね、バンバン謀反を起こせば良いと思う。本音では。
けれど、この世は真面目で誠実で、傷つきやすい、そんな人たちの努力で成り立っていることを忘れてはいけない。
私はここにはあえて、「その空気に染まって楽しむ」なんて絶対に書かない。
それが出来たらとっくにしているだろう。
だから上記二つのことも、本当はおすすめしない。
でも一般的な自己啓発本とかにはよく書かれているんじゃないかな。知らんけど。
多分、あなたは誠実で、人の期待に答えたくて、その場の空気を悪くしたくなくて、一人ぼっちになりたくなくて、傷つきたくない人だと思う。
でももう、我慢も限界なんじゃないかな、と思う。
だからまずは我慢するのはやめてみる。
それはあなたの一番大事なものを守ることになる。
あなたの大事なもの、それはあなたの心です。
(なんか有名な城のアニメ映画のとっつぁんのラストシーンのセリフみたいになってしまった)
我慢は続けると癖になる。
もうすっかりと癖になっているそれを、勇気を出してやめてみる。
我慢することをやめるために、あなたは勇気を出してみる。
そして次に、小さな声で良いから、
「あ、もう時間だ。今日は帰るね」
と言って家に帰る。
あなたが実際にやることは二つだけだ。
我慢することをやめる勇気を持つ。
そして家に帰る。
家の空気が嫌だったら外に行けば良い。
帰る場所はどこでも良いのだ。
でももしかしたら真面目で誠実で優しいあなたは、「でも今、こんな世の中なのに、外に出るなんて」と思うかもしれない。
何も海外に行けって言ってるんじゃないのだ。安心してほしい。謀反を起こすよりずっと簡単だ。
近所を歩くだけでも良い。
その場の空気を変えれば良いだけなのだ。
それは『あなた自身の空気』を変えれば良い。
その場の空気を変えたり、空気を作った人に立ち向かう必要もない。
そして帰る家があれば良い。
それはSNSの中にあったり、LINEの中にあったり、行きつけの飲み屋だったり、バイト先かもしれない。
小さい頃に遊んだ公園かもしれないし、ゲームの中かもしれない。
学校の空気が嫌なら家に帰れば良いし、家が嫌だったら学校に行けば良い。
どっちも嫌だったら、どっちもいる時間を短くすれば良い。
職場の空気が嫌だったら、やることをやって家に帰れば良い。仕事をしているんだから、文句は言わせる必要なんてない。
飲み会も家に帰ると断れば良いのだ。
でもあなたは突然、そんなこと出来ないかもしれない。
すごく勇気がいるかもしれない。
じゃあ、その場の空気の中にいる滞在時間を短くすることから始めよう。
大人になってもどこに逃げようと、空気を読むという苦行はついて回る。それは絶対だと先述したが、これも絶対だと言い切れることだ。
みんな自分に課してるハードル、高すぎじゃないか。
あなたが誠実で優しくて真面目でその場の空気を悪くしたくないのはもうよくわかった。
でもあなたが本当に嫌なのは、その場の空気を悪くすることじゃなくて、
その場の空気を悪くしてしまうことで、自分が不利な立場に追いやられることだ
あなたは自分が安心出来る場所に帰れば良いだけ。
それは何も悪いことでもないし、その場の空気も悪くしない。
それで空気を悪くしたと怒る人がいたら、それは同じように家に帰りたい人のやっかみだ。
誰だって戦場で先陣を切るのは嫌なものだ。矢面に立たされるようなものだ。
けれどそこは別に戦場でもなんでもない。
ただなんとなく、力があるっぽい人や肩書きのある人やいじめが上手な人や人気者やモテる人が作った『だけの』空気で出来上がった砂の城だ。
それでも苦しい時は、高村のところに来ても良い。
お茶でも飲みながら、その人たちことを罵詈雑言の限りで貶して時間を過ごそう。
いつ崩れるのかわからない、砂の城の中で、あなたは必死に床を磨く必要はない。
「うーん、今日は家に帰ります。また誘ってください」
さらっとスマートに言えば良い。
あなたは十二分に空気を読んだのだから、たまには、相手に読ませれば良い。
あなたがこれ以上、空気を読んで、疲れる必要はないのだ。
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