日本語に訳すうえで大事なことは日本語の文章を洗練すること
英語の文章を日本語に訳すうえで大事なことはなんでしょうか。もちろん英語の知識は大事です。その一方で日本語の文章を洗練することも大事です。
筆者は2年前に、MathML3の付録B"Media Types Registrations"(日本語訳:メディアタイプの登録)を和訳しました。近年、MathML4の策定作業が進む中で、2022年7月にこの付録BはW3C部会のメモという形で切り離され、"MathML Media-type Declarations"(日本語訳:MathMLメディアタイプ宣言)という独立した文書になりました。
この"MathML Media-type Declarations"を和訳する中で、より分かりやすい日本語の文章となるように、従前の"Media Types Registrations"の和訳から洗練させた部分があります。今回はその部分を2箇所紹介したいと考えています。なお、基本的にはMathML3の付録とW3C部会のメモで原文が同じ部分を取り上げます。ただし、元々はMathML仕様書の一部だった文章がメモという形で独立したことから、仕様書の時点では"This specification"だった部分が、メモの時点では"The MathML specification"になっている部分もあります。
まず、1箇所目です。
"one of these two vocabularies"は、古い訳では「それら2つの種類のデータのうち1つ」としていましたが、新しい訳では「それら2種類のデータのうち1種類のみ」としています。これは、「2つの種類」より「2種類」の方が自然な言い方と思われるため、変更しています。また、"may"は、古い訳では「するかもしれません」と訳していましたが、この文章の中ではRFC2119(日本語訳)に準じていると見なす方が適切と思われたため、新しい訳では「してもよいです」に変更しています。
続いて2箇所目です。
まず、原文は1文で構成されていたことから、古い訳では1文に訳しましたが、新しい訳では2文に分けています。これは、2文に分けた方が、長過ぎず意味を受け取りやすい日本語の文章となるからです。また、合わせて語句の順番を見直すことでより分かりやすい文章にしています。
次に、"both in the MathML namespace and in other namespaces"を、古い訳では「MathML名前空間でも他の名前空間でも両方で」と訳していましたが、「でも」が続いたりするのが読みにくいと感じることから、新しい訳では「MathML名前空間および他の名前空間の両方で」に変更しています。
他にも"behavior"の訳を「ふるまい」から「挙動」に変えています。
このように、日本語の文章を洗練することは、読みやすい日本語訳を書くためにとても大事なことです。
なお、文章の感じ方には個人差があるので、今回述べたことの中には、筆者の私見な部分もあるかと思います。
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