ネイティヴとしてノンネイティヴと、あるいはノンネイティヴとしてネイティヴとどう向き合うべきか
皆さんは、外国語学習で挫折した経験はお有りでしょうか?(受験期や大学時代、あるいは外資系等の職場において)
最近、ドラマ『ドラゴン桜』が放送され、(元)落ちこぼれ受験生たちを応援した人、指導内容に胡散臭さを感じている人など、色々いらっしゃるかと思います。
中でも、英語に関しては、なかなか生徒役、教師役、さらには視聴者が気付けないものがあったので、私から補足説明をさせていただきます。しかし、その補足には、英語以外の外国語学習も踏まえます。
N1 漢字数 2,000 / 語彙数 10,000語
学習時間の目安 900時間~1200時間 幅広い場面で使用される日本語が理解できる。政治、経済、法律、国際問題など抽象度が高く複雑な文章を理解し、様々な分野のニュースや講義が理解できる。専門用語を使い発表・討議ができる。
N2 漢字数 1,000 / 語彙数 6,000語
学習時間の目安 600時間~800時間 日常的な場面で使われる自然に近いスピードのまとまりのある会話やニュースを理解することができる。新聞、平易な評論など論理的にやや複雑な文章を理解し、一般的な事柄について意見を述べることができる。
上記は、日本語を母語としない人が日本語を学習する際のレベルの分類(「日本語能力試験」公式HPより)です。日本人にとっては英検の級のようなものです。私の知り合いの留学生がN2だと知ったので、参考までに紹介します。
N1(外国人のための日本語では最高ランク)で求められる10,000語はこの、 各国の言語を80~90%理解するのに必要な語彙数 (「「ペラペラ」レベルに必要な語彙数は意外と少ない!〜英語・日本語・ルワンダ語他〜」 のように、「ペラペラ」と定義されることもある)と一致することがわかりました。この観点からすれば、日本語はダントツで世界一難しいといえます。実際、その研究結果も存在します(世界一難しい言葉が日本語【アメリカ合衆国国務省公式認定】)。ただ、その10,000語も、「大人が1日に使う言葉の数、知っていますか? 」によれば、
小学生レベル: 5千~2万語
中学生レベル: 2万~4万語
高校生レベル: 4万~4万5千語
大学生レベル: 4万5千~5万語
「使わないけれど知っている言葉の数」でこれだけの数あるそうなので、語彙のほんの一部に過ぎません。
英語:3,000語 は大体、大学入試共通テスト(旧センター試験)の土俵に上がれるレベルだと考えられます。『英単語ターゲット1900』で "お腹いっぱい" という日本人も多いはずです。(それでも、その下の "入門編" 的な単語集で1,200語ほど覚えているはずなので、トータルでは3,000語程度ということになります)
以前、N1の過去問を立ち読みしたことがありますが、小学校高学年~中学校初め辺りだったら日本人は誰でも解けるようになっているものだった印象です。ということは、留学生を多数抱えるクラスのリテラシーは総じて、ネイティヴでいう所の 小学生レベル に相当するものだと考えた方が良いということになるかと思われます。
また、以下はドイツ語の例です。
A1 簡単な質問は理解し回答できる
A2 日常会話には問題がない
B1 簡単な文章の読み書きができる
B2 自分の意見が明確に述べられる
C1 エッセイを書いたり、新聞や小説が読める
C2 流暢なドイツ語を話せ、慣用的表現も理解できる
上記は欧州基準によるものですが、大学時代にお世話になった小山明宏教授(経営学)曰く、ドイツ語会話で不自由を感じなくなったのは、B2の段階だったとのことです。ただ、医学留学のような高度なことをするためにはC1を求められるようです。
80〜90%理解するのに必要な語彙数は、ドイツ語の場合は5,000語程度と、少し多いようですね。日本語に比べれば半分ですが、明確なビジョンが無いと、入門編の単語ですら身につかないものです。
以上から、「語彙は中学レベルで良いから体で覚えろ」という桜木先生のアドバイスは理にかなっているといえます。確かに、余計なプライドは捨てるべきです。英検では準2級や2級でも、運用できるものを増やせば会話したり読み書きすることができるのです。実際私も外国人とは、使える単語の範囲内で話します。
また、「関連付けて覚えろ」というアドバイスもありました。これは、めいろまこと谷本真由美氏(情報通信コンサルタント)も言っていたのを確認しました。欲を言うと、それをするなら、ラテン語とドイツ語にも是非触れておきたいところです。その意味では、合唱人に高学歴が多い(実際、作曲家や演奏家の学歴は総じて高いと思っています)というのも納得できます。そこで少し、合唱に関するお話をさせていただきます。
私自身、合唱経験があり(現在も続けています)、英語以外の外国語に触れる機会が多いですが、できればもっと、合唱以外でも英語以外の外国語に触れられる機会があると良いなと感じています。例えば、獨協高校なんかはドイツ語の授業もあるそうです。実はドイツ語は、古英語の理解に役立つものです。また、カトリックの学校なんかでは、ラテン語(ラテン語は古典ですので、古文や漢文学習にも通じるものがあると、私は大学で1年間ラテン語の授業を受けて感じました)やフランス語(英語との関連性が大きく、比較的学びやすいです)の授業を行っている所も少なくありません。高校なら、男子は聖光・栄光・暁星、女子なら雙葉・白百合・カリタスあたりでしょうか。また、大学なら上智があります。そこでは、キリスト教について学ぶこともできるのがまた魅力的だと思っています。合唱をやってるとどうしても、「"宗教曲をやるならキリスト教徒でなくてはいけないか" 問題」を避けて通れません。私はたまたま親族にキリスト教徒が居て、一度だけキリスト教式の葬儀に参加したことがありますが、このような経験が有るのと無いのでは、宗教曲の感じ方には違いが出るはずです。
声楽関係は、英語も古文もちんぷんかんぷんではプロ、あるいはセミプロは務まらないと考えています。器楽のようにフィーリング中心ではなく、言語(人間の言葉)でできた歌詞が伴う音楽であるためです。となると、「青春を全て音楽に捧げてきました」だけではやっていけないと思います。文系科目をしっかりやった方が良いです。その先は、留学した者勝ち(留学しなかった者負け)となりましょう。
何語と何語はどういう関係かを知るには、世界史と地理を履修することです。誰でも教わります。逆に言えば、これらを履修していないと知ることはできません。理系や日本史組だと、この知識が無く英単語がインプットされていたり、英語以外が宇宙人の言葉のように見えてしまっているかもしれません。(参考:なぜ英語語彙に3層構造があるのか?、なぜ英語とフランス語は似ているの?)
話を元に戻します。
日本語がペラペラな外国人の日本語リテラシーは、日本語ネイティヴ基準で言えば標準レベルで小学校中学年~高学年程度、上級レベルで小学校高学年~中学生程度だと考えると良いです。言葉遣いに子どもっぽさ(俗に言う "ガキ" っぽさ)があるかもしれません。英語においては、トランプ前大統領が演説の際にわざと英語のレベルを下げて話していたといいますが、それと同じようなものといえます。
もちろん、リテラシーを高めることは大事ですが、運用の場数を踏む方が遥かに大事だと、日本語ネイティヴの私としては、日本語ノンネイティヴの人たちと接していて感じます。
またよく、「英語ができない」人たちと、「英語だけできるだけで中身が無い」人たちがマウントを取り合っているが見受けられます。これは明らかにメディアのミスリードによるものです。
結論を言えば、英語ができないことには始まらないこともあり、英語ができる人が重宝される仕事があることは確かだが、それは英語のための英語だけでは限りがあり、英語で何か科学か芸術をインプットからアウトプットまで行う経験が無ければ厳しい(英語ネイティヴ、あるいは旧英語圏植民地を中心としたアジア・アフリカの国々のエリートに持っていかれる)と考えた方が良いということになります。なぜなら、英語を第二言語にしている国は全て、科学を英語で学ぶ(土着の言語では科学を学ぶことができない)からです。科学と英語を同時に学ぶ環境があるのです。(参考:日本人も驚き。「英語ができないのは、幸福な国の証」だった)
"良い大学/大学院" に進学、あるいは "良い会社" に入社するという目標を持つのは良いですが、何のためにその "良い大学" に進学するのか、なぜその学科を受験するのか、なぜそこへ留学するのかを(就職に関しても同様)、是非とも見失わないようにして欲しいところです。大学(および大学院)とはほとんどが、科学や芸術を学ぶために行く所です。先人たちの研究を引き継ぎ、新たな研究の道を切り拓くきっかけを作る場所です。まず、試験を頑張りましょう!英文法は、ノンネイティヴに寄り添うように簡略化された歴史があります。臆せず自分のものにして行ってください!
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